オーバードーズ・エクステンション
魔力が溜まる。血が燃える。
生かす必要は無い。俺の長期間の予定を全てぶち壊してくれたな。その落とし前だけは付けなければならない。
「うぉぉッ!」
踏み込んで相手のアックスをまず、素手で叩き折る。
そしてもう一撃を決めようとしたところでーー急激に身体に重みを感じた。
「ーーなっ」
脳裏に言葉が過ぎる。
ーー『ブラッドタブレット』は一粒を摂取するだけで潜在魔力がほぼ限界まで維持可能。もちろんそのツケは身体に反動といった形で出るがな。
まさか、こんなに早く副作用が!?
「ーーゲホッ!」
咳をすると、口から僅かに血が出てきた。鉄の味が、口内に染み渡る。
「ーーおいおい、こりゃ劇薬かよ。死んでしまうぞ……」
須賀谷はそう小声で呟くが、動きが悪くなったのを悟られたのか黒岩田が攻勢に出てくる。
「地獄に送ってやるよぉぉぉ? フンッ!」
「がぁぁぁ!」
ゴォッと風を切るパンチが須賀谷の鎧の上から鋭く当たり、須賀谷は顔を歪めながら吹き飛んだ。
ーーえぇい、この畜生め!
尻餅を付くが立ち上がり、慌てて迎え撃とうとする。
しかし、奴の手はさらに速かった。
「ブーメランショット!」
機械の腕に内蔵されたブーメランが飛んでくる。
ーーまずい、避けられない。
「クソッ、此処で……!」
「士亜ァァァア!」
目蓋を閉じようとした瞬間、順が須賀谷の前に入る。
「貴様などに……させるものかぁぁぁ!」
そして、ブーメランを全て拳で……弾き返した!
「っち!」
黒岩田が舌打ちをする。
だが同時に、順がその場で膝を付いた。
「順!」
「ーー駄目だ、消耗が激しい。アーマーも持たない!」
言葉が終わらないうちに、順のアーマーが解除されて私服に戻ってしまった。
「ーー本当、マジックアイテム持ち二人相手によくやるよ」
黒岩田の後ろに降り立つ、イフット。多少の怪我こそしているものの、彼女の背中には黒岩田の手のように鋼で出来た翼が顕現していた。
「あの翼は?」
「魔力を吸い取る羽根。『ドレインウィング』、だ。ただでさえこちらの酷い燃費がさらに悪化された」
順が苦々しげな顔をする。
ーー万事休すだ。
「そうなのか……!」
須賀谷もまた、自身の余力を考え焦る。
「須賀谷」
その時、順が告げてきた。
「君は、君の半身をーーどうしたい?」
「ーー取り戻したかった。でもーー」
須賀谷は、言う。
「ーー皆まで言うな。お前の捻り出した言葉は、お前の魂の塊だ」
順は言い、右腕からデバイスを外した。
「士亜。お前の人生だ。お前の力で言葉を紡げ」
「ーーあぁ」
須賀谷は順からデバイスを受け取る。
「エクステンション!」
「『insufficiency』」
デバイスからは、エラー音が出る。
だから須賀谷は、もう一度懐からブラッドタブレッドを出しーー。
「ーー五月蝿い! もう一度だ! 俺に力を貸せ! エクステンション!」
その言葉と共に、もう一錠を追加した。
……あぁ、クソ。まずいまずい!
味覚と共に心臓が汚染されていく感覚が、再度くる。ポーズを取り、デバイスを再稼動させるとーー。
『fill up』
デバイスが音声を出す。
……その刹那、自身の周囲の空間が裂けて発光を始める。
光が止まると、順とは違ったアーマーが須賀谷の身体に纏われていた。
「時間も無いーー二人まとめて掛かって来い! イフットも、そのつもりなら容赦はしない!」
須賀谷は宣言し、真正面から迎え撃つ。




