激昂の騎士
戦いの準備が始まり、結界の中に入る。
今回の戦闘フィールドは、廃墟都市となっていた。周囲を見渡せば塔のような折れた建造物と薄暗さばかりが、目についてくる。
「……っ」
自分の心臓の鼓動を感じる。緊張も高まってきた。覚悟も充分にしてきたつもり
だったが、思った通りには自分はいかない。
――改めて相手を見るとやはり、心に来るものがあるのだ。
向こうに居る黒岩田とイフットの姿がまだ、自分には現実であると信じられなかった。
「士亜、お前はどちらをやる?」
順が質問してくる。
「ーーちょっと待ってくれ。その前に一つだけ言いたい」
須賀谷はそう言い終えると、イフットの方へ向き直り、大きめの通る声で言っ
た。
「イフット。其処にいるのは……お前の意思、か?」
「……えぇ、私の意志で、私は此処にいる」
イフットはそう、頷いた。
「……そうかい」
須賀谷は腸がぐつぐつと煮え滾るのを感じつつも、表に出さずに横に向き直る。
「ーーまずは男だ。俺の人生の邪魔をしたツケは徹底的に払ってもらわなくちゃい
けない。俺の命に代えても潰す、レイピアが折れても拳が砕けても……」
そして順に向けて、告げる。
「分かった、女の方は私に任せておけ。元々あちらのチームでは男より女の方が格上だろうと思えるが、私なら問題は無い」
色々と考え込んでいると順が横から、心強い口調で話し掛けてきた。
「……あぁ」
須賀谷は応えて、鉄の剣を鞘から抜く。
「……エクステンション! セミアーマード!」
順も大会のレギュレーションでリミッターを掛けているもののアーマーを以前のようにセミアーマーの形で瞬間装着し、戦闘態勢に入った。
――試合開始のカウントダウンが始まる。
刻々と秒読みは0にへと近付いて行き、決勝戦のゴングはついに鳴る事となったーー。
カァン!
――戦闘、開始――。
「早速だが今の私は機嫌が悪いんでな……お前には倒れていて貰おうッ!」
「倒れるのはどちらか見せてあげるよ……!」
「《ツインフレアーボルト!》」
「《爆裂光槍!》」
試合が始まるが早く順とイフットが、魔法の撃ち合いを始める。
ほぼ同時に撃ち出した魔法はぶつかると巨大な煙を撒きあげ、空気を震えさせた。
――そして順が煙の中の気配を探知しようと周囲に意識を配り出した時に、もう一箇所の戦闘が始まった。
「……へへ!」
「……!」
「黒岩田……お前を目の敵にして決勝戦まで来たが何か言う事はあるかよ?」
須賀谷はこちらに向かってきた黒岩田に対し、そう言ってやる。
「そうだな……それじゃぁな、一言だけ言ってやろうかぁ? 士亜ちゃぁぁんよぉぉwww 彼女のために生きてた奴が大事な彼女寝取られちゃダメだろぉおおおお?」
すると黒岩田は長い斧を振りまわしながら、此方を煽ってきた。
「ーーーー!!!!」
ーークリティカルだ。ブチンと、こちらの頭の中で何かが切れる音がした。
「ああそうかい……、ならば、地獄に送ってやる! 貴様ァァァァァァァァッッーーーー!!!!!」
「ハッ! 大人しく死ねッ! 須賀谷ァ!」
飛び込みながら斬るが弾かれ、すぐさまにカウンターの相手の斬撃のラッシュが始まる。左腕に構えた盾との接触による激しい金属音が鳴った。
「殺す! ーー絶対、殺すッ!」
「とっとと失せろ、負け犬が!」
一発目、二発目を盾で、防ぐ。黒岩田の能力は順と比較をすれば体格が大柄なお陰でスピードは大幅に劣るが、リーチがある上に黒岩田自身のパワーが高い為、中々剣戟で上回る事が出来ない。
流石に防戦一方であり盾で攻撃を受け止める度に、腕が少しずつ痺れていくのを須賀谷は感じた。




