2つ目の世界へ(4)
長くなったので、2つに分けます。
「今度こそ、転生の準備を始めよう。」
「オーケー。まあ、転生って言っても、別に赤ちゃんから、やり直すわけじゃあないけどね。」
「あ、そうなの?」
「うん。転生先の世界に君の体を作って、魂を移すんだ。記憶や性格はそのまま、見た目が変わるってかんじかな。こう考えると、トリップのほうが近いかもしれないね。」
そうだったのか。ぶっちゃけ、意識がはっきりして、知識なんかも今のままで赤ちゃん生活するのかとビビっていたので安心した。だって、あれだぞ。精神年齢18歳の赤ちゃんなんて、怖いじゃないか。言葉は日本とは違うだろうし、すぐにしゃべれないとしても、中身は18歳だ。それにミルクを飲むのが恥ずかしい。その人がたとえ、私の新しい母であったとしても、おっぱい目の前に出されて、加えろ、と言われても無理だ。・・・うん。無理。恥ずかしいじゃないか。羞恥心で熱出すぞ?
あと、急に新しい家族ができても、受け入れられる自信がない。
「じゃあまず、転生する世界を決めようか。」
「・・・そんなにあるの?」
「いっぱいあるよ。僕が管理している世界だけでも数えきれないけど、ほかの神たちが管理している分も含めたら、無限にある。どんどん神々は世界を作っていくからね。それで、どんなところがいい?」
すんごい無茶振りされた。いやいや、わかんないよ?地球以外知らないし。っつーか、神様って、リーレン以外にもいたのか。
「・・・さあ、よくわからない。リーレンに任せるよ。」
リーレンなら、きっといい世界を選んでくれると思うし。
「じゃあ、イデールにしない?イデールは、僕がある神から管理を引き継いだ世界で、1番のお気に入りなんだ。この世界には魔法があるし、精霊や魔王、神獣なんかもいるよ。千笑、こうゆうの好きでしょう?それに、イデールはほかの世界より強くできているから、僕が、千笑のそばに行けるんだ。つねにってわけにはいかないけど。」
「そんな世界があるんだ。いいね、魔法!そこにしよう。決定!何より、リーレンと近くにいれるのがポイント高いね。」
「オッケー!転生先はイデールね。次は、向こうの世界での体かな。決められるのは、体の年齢だけだけど。」
そうなのか。見た目自分できめんの、めんどくさいなぁって思ってたから、よかった。でも、なんで?
「いや、ね?僕が人の容姿を決めると、なぜだかみんな同じになっちゃうんだよねぇ。好みが出るっていうか?だから、容姿はランダムにしてるんだ。パーツごとに。ってゆうか千笑、さっきから適当すぎない?新しい人生について決めてるんだよ?」
それは、私がリーレンのことを信頼しているからだ。もしほかの人だったら、ちゃんと全部自分で決めるよ。
でも、同じ世界におんなじ顔の人がいっぱいいるのか。そりゃこえぇ。自分もその中の一人かもしれないの?何それ怖い。
「・・で、年齢どうする?」
「イデールって、いくつで成人?」
「15歳だよ」
「じゃ、今のままでいい。子供だと、できないことが多いから。」
「オッケー。・・・次は・・名前、かな。ねえ、千笑の新しい名前、僕につけさせてくれない?」
「ああ、うん。いいよ。私もリーレンにつけてほしい。いい感じのをよろしく」
「うん。任せて。」
リーレンはしばらくの間、目を閉じていた。
「・・・・リュフィナ。リュフィナってどう?」
リーレンが私の新しい名前を紡いだ時、私の体の奥のほうに何か、温かい、懐かしいものが生まれた気がした。
「リュフィナ。いいね。気に入った。」
私がこの名前を受け入れると、さっき感じた物が体の中に納まった。
「なんか今、力が千笑、あー、リュフィナのなかに収まったでしょう?それ、僕の力の一部だよ。僕が名前をつけたから、加護が与えられたんだ。」
だから懐かしい感じがしたのか。リーレンは私が不安定な頃によく、おまじないだといって、私に力を分けてくれたのだ。
「へえ。すごいね。名前って、つける相手に力を与えられるんだ。」
「うん。もっとも、普通の人が名前をつけても、せいぜいその人と魔力を共有できるぐらいの効果しかないけどね。僕は神様だから、効果絶大さ。ピンチの時に使うといいよ。でも、あまり力を見せびらかさない方がいい。宗教って、向こうにもあるし。とにかく、名前はイデールで、とても大切なものなんだ。特に、真名はとても大きな力を持つ。真名を知っていれば、相手を操ったり、魔力を奪い取ったりできる。互いに真名を知っていれば、心をつなげることもできるよ。・・・・リュフィナ、僕の真名は、リーレルミス。」
私たちの体が、一瞬強く光った
「これで、僕たちは真名を互いに知った。僕たちの心はつながったよ。」
「私とリーレルミスは、念話?ができるってこと?」
「そういうこと。あと、どこにいても相手の居場所が分かったりするね。ああでも、真名は簡単に口にしてはいけない。一生で一度も使わないことも珍しくないんだ。だから、僕みたいに普段は違う名前を使うんだよ。」
「そうなんだ。・・リュフィナだから、リュリアでいいか。」
「うん。そうだね。・・・・・んーと、決めることはこれで全部かな。あとの細かいことは、僕の方でいろいろ決めとくよ。いろいろ能力とか、向こうの言葉しゃべれるようにしたりとか。」
「よろしく。ありがとう。」
「どういたしまして。・・・一つ、伝えなきゃならないことがあるんだ。君がこれまで苦しめられてきた病気なんだけど、あれ、体じゃなくて魂の問題があるんだよね。たまにいるんだ。生まれた時から魂が完全じゃない人。リュリアはそれだ。普通の人は生まれてすぐ死んじゃうけど、リュリアの魂は特別だから、重病を持った状態で生きているんだ。・・・で、転生して体が変わっても、魂は変わらないから、病気は治らない。環境の変化に応じて魂は形を変えるから、治らないにしても、少しは良くなるかもしれないけど悪化するかもしれないんだ。むしろ、その可能性のほうがずっと高い。体が生きている状態での魂の転生は、魂に負荷がかかるから。普通の人がやったら、魂がボロボロになって、死んじゃうくらい。」
そう、なんだ。
「でも、リュリア、向こうの世界には魔法がある。どうにかできるかもしれない。リュリア、転生したらすぐ、いつ発作が起きても平気なように魔法の練習をするんだ。病気は治せなくても、痛みや苦しみをなくすことはできるから。念のために、薬は持って行ってね。ああ、リュリア、そろそろ世界が限界に近い。」
「わかった。いろいろありがとう。ひとつお願いしていい?」
「もちろん。弟君のこと?」
「うん。私がいなくなったら、あいつやっぱり困ると思うんだ。だから、最後にちゃんと話がしたい。」
「いいよ。じゃあ、光太君をここに呼ぶね。それから、ここにいるだけなら世界に影響は出ないから、たまになら合わせてあげられるよ。」
「え、本当?うそ、ありがとう、リーレン。ほんと、ありがとう。」
「うん。じゃあ、光太君、呼ぶよ。」
何もないところが光ったと思ったら、いつの間にか、目の前に光太がいた。