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王様に謁見したら、王様の〇〇になりました。(5)

「なぜそなたは、私に、そんな大事なことを話したんだ?聡明なそなたなら、あれらの事柄はみな、そう簡単に人に話していい内容ではないことなど、分かっているだろう?なぜそんなことを私に話す?なぜ私が他言しないと信じた?」


質問をしている陛下の目は、不安に揺れているように見える。


「・・・長い話になりますよ。いいですか?」


陛下は頷く。教えてくれ、と。

私は、私が陛下を信じる理由を、陛下に話しだした。



「・・・・私にとって、一番大切で、一番重要なこと、生きる意味って、[大切な人と共にあること]なんです。昔の私にとっての[大切な人]は、家族でした。

でも、その家族はもう、この世にいない。皆殺しにされたんです。残ったのは、当時まだ幼かった、弟だけ。苦しかったし、辛かった。今も苦しい。

もう大切な人なんて作らない。こんな思いをするぐらいなら、大切な人なんていらない。そう思ったことは、何度もあります。でも、それじゃダメなんですよ。」


「なぜ?」


「大切な人が、悲しむからです。あの人たちは、私のために命を捨てた。・・・私のために。ならば私は、あの人たちが残してくれた自分の人生を、自分らしく進んでいかなければなりません。

それが、私のために死んでいったあの人たちへ、私ができる、最大限の感謝の形だから。

命を賭してまで守った人間が、死んだように生きていたら、報われないでしょう?

だから私は、自分らしく生きていかねばなりません。

あの人達のため、立ち止まることは許されません。」


私は、真っ直ぐに前を見据えていう。


「私が自分らしく生きるためには、前に進むためには、生きる意味が必要なんです。[大切な人]が必要なんです。

・・私には今、大切な人が3人います。」


(テルガとリーレン、それにルカ。)


「でまその3人は、もっと私が大勢の生きる意味を待つことを望んでいます。だから私は今、大切だと思える人を探しているんです。ここへは、そのために来ました。」


(この世界には、そのために来た。)


「大切な人を見つけたいのに、人を疑うことから始めてしまったら、見つけられるものも見つけられないでしょう?

だから私は、今日あったばかりのあなたを信じます。

あなたが、私の[大切な人]になり得る可能性を、信じます。」


「・・・私は、国王だ。国のため、などと言って、君の[大切な人]を傷つけるかもしれないのだぞ?それでもか?」


「言ったでしょう。信じる、と。」


私がそう言うと、陛下はどこか、泣きそうな顔をしていた。



  *  *  *



<リルミス視点>


「・・・私は、国王だ。国のため、などと言って、君の[大切な人]を傷つけるかもしれないのだぞ?それでもか?」

「言ったでしょう。信じる、と。」


その目には、確かな光が宿っていた。この子の行動の全ては、[大切な人]のためのようだ。

そこには、僅かな迷いもない。ただただ、真っ直ぐな想いがあるのみだった。

だが、だからこそ彼女は脆い。

自分の全てを[大切な人]に預けているから、その一つが消えただけでも簡単に傾く。


なぜだかは分からない。だが私は、その真っ直ぐな想いを、自分にも向けて欲しいと思った。

自分も彼女の[大切な人]となり、彼女を支えるひと柱でありたいと思った。


(もしかしたら俺は、こんなふうに、身分や立場など関係なく、自分を必要としてくれる人を探していたのかもしれないなあ。)


そして自分も相手を頼れる、そんな対等な関係になれる人間を、ずっと求めていたのかもしれない。


(俺は、この子のそばで、彼女と対等な人間になりたい。)



そう思った俺は、ある決意を固めた。


「なあ、リュリア。俺の〇〇にならないか?」


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