王様に謁見したら、王様の〇〇になりました。(4)
「それじゃあ陛下、話しますね・・・」
「まて。まず、そこに座れ。」
私が話を始めようとすると陛下が座るようにいってくる。
その目は凄んでいて、言われた通りにする意外、体が動かなかった。
私は腰を下ろす。
「よし。楽にして良いぞ。そなたが心配をかけたくない相手は、今はいないのだからな。」
なっ!!
き、気づかれてたー。
「どうして、私が体調不良を隠していると気づいたんです?私の演技、そんなに下手でした?」
「いや、演技は素晴らしかったさ。」
「では、なぜ気づいたんです?」
「魔力が高いものはな、意識すれば、相手の魔力の動きが分かるのだ。私はそなたを警戒し、そなたが部屋に入ってきたとき、魔力の動きを探ったのだ。もしも、何かしらの魔法が発動されそうになったら、魔力の動きでわかるからな。そうしたら、そなたの魔力がありえないほどに荒れているのが感じられた。生きているのが不思議なくらいだ。」
つまり、私が陛下に害意を持っていた場合に備えて警戒していたら、相手がかなり弱っていたことに気づいた、ということだろう。
「はあ。まさか、そんなバレあたがあったとは。以後気をつけます。」
「いや、その必要はない。私は、この世界のにんげんで一番魔力が高かったのだ。私でギリギリ、そなたの魔力を探れたからな。私以外、そなたの魔力は探れん。相手が魔族なら別だが。」
え、陛下、そんなにすごい人だったのか。
それより魔力が高い私って何もの?あ、神格化する寸前のものでした。
そりゃあ、私より魔力高い人間なんていないよな。私以上=人外だもん。
しっかし、出鼻をくじかれたなあ。
「陛下、これは、私が今から話そうとしていた事の一つです。私は今から、私の秘密を陛下に明かします。どうか、人には話さないでください。」
「私がここで、人には話さない、といったら、そなたはその言葉を信じるのか?」
私は頷く。
「そうか。では約束しよう。これから聞くことは、絶対に人には言わない。」
「ありがとうございます。・・・では、陛下がお気づきになった、この発作のことから。」
私は、順を追って、陛下に発作のことを説明した。
1、私の病気は自分でしか治せないが、私は治癒魔法等の、体に作用する魔法が使えないこと。
2、なので、使える魔法を行使して、発作を感じなくさせていたこと。
3、しかし、これでは体への負荷が大きく、定期的に回復魔法をかけてもらう必要があること。
4、私は、回復魔法が使える、信頼できる、いつも私とある程度近くにいる、魔力が多く定期的に回復魔法を使っても負担にならない、という条件を満たす、白魔術師を探していること。
5、このままだと、あと二日以内にし死にそうなこと。
私はこの説明の途中、魔法の多重複使用ができることも明かした。
これで、陛下に明かした秘密は2つ。
「なるほど。想像以上に危機的状況にいるな。」
「はい。ですから陛下に、条件を満たす白魔術師を探していただきたいのです。」
「いや、その必要はない。私が、その役目を担おう。というか、私以外、そなたに回復魔法を施せる人間はいない。」
「・・・は?え、どういうことですか?」
「そなたの魔力量は、おそらくこの世界に存在する人間の中で一番たかい。その大量の魔力が荒れたら、それを押さえるには相当な魔力が必要となる。私は、この世でそなたの次に魔力が高い。が、それでも、私の持っている魔力のほとんどを使わなければ、そなたの魔力は収められん。つまるところ、私よりも魔力の低い他の人間が、そなたを癒すことはできん。」
補足で説明すると、この世界での体調不良とは、魔力の荒れを指す。
この世界の人は皆一様に、魔力を持っている。その魔力の流れがなんらかの理由で荒れた時、人は体調を崩す。
ウイルスなどが魔力の荒れの原因だとしても、治療方法は、ウイルスを殺すことではなく、魔力を安定させること。
日本の治療とは大きく違う。
まあつまり、何が言いたいのかというと。
体調不良は例外なく、魔力を安定させれば万事解決、ということなのだが。
そういうことで、回復魔法とは、魔力を安定させる魔法の事を言う。
が、私の魔力は多すぎて、押さえつけるのは難しい。
陛下いわく、普通の白魔術師が私に回復魔法をかけても、気休め程度にならず、全くとは言わないが」あまり意味はないだろう、とのこと。
陛下も、ギリギリ癒せるか癒せないかの瀬戸際らしい。
魔力の多さが、こんなところでアダになるとは。
余談だが、治癒魔法は、私にもちゃんと効果は出るらしい。
傷を癒すだけだから、私の魔力の量は関係ないらしい。
「だが、あまり多くの血を流すことはおすすめしない。血には、多くの魔力が含まれている。血を失うとはつまり、魔力を失うに等しい。血は減るし魔力も減るしで、良いことなど一つもないからな。特に、そなたは魔力の量が多いからな。血に混ざる魔力も多いだろう。同じだけ血を流しても、他人とそなたとでは失う魔力量が違う。
それに、魔法は便利だが、万能ではない。傷は癒えても、失った血や魔力は戻らない。覚えておくといい。」
すごいためになる話だ。
魔法は万能ではない。確かにその通りだと思う。
「話がそれたな。とりあえず、そなたを回復するとしようか。
・・・・・・・・・癒しの力を持つ者よ。この者を癒したまえ。」
おおっ。
詠唱はそれなりに短いものだったが、疲れは吹っ飛んだし、魔力も安定した。
陛下はどうやら、かなり魔法ができるらしい。
私は、再度、発作を抑えるため魔法をかける。
これで、体調は万全だ。
魔力を探ってみたのだが、確かに陛下の魔力は、かなり消費されている。
「どうだ?楽になっただろう。私は、そなたが提示した条件を満たしている。問題があるとすれば、信用できる、という条件を私が満たしているかどうかだな。そなたが私を信用するかどうかだが・・・」
「私は、陛下を信じますよ。ご厚意に甘えさせていただきます。」
「そうか。ならば良い。まだ話したいことはあるのだろう?続けろ。」
私は、一番の問題が簡単に片付き、拍子抜けしながらも話を続ける。
「ええと、今日私が、陛下に明かそうと思っていることは、さっき話した二つを除いて、あと二つです。一つは、私の魔力についてです。私の魔力が高いことには気づいていると思いますが、私も、自分の魔力が具体的にどれくらいなのかはわかりません。それから、魔力の質ですが、これも、かなり高いです。これが、私が魔力を計測するときに使った紙です。」
そう言って私は、私の血を吸い込んでカラフルに染まった紙と、真っ黒に染まった紙を手渡す。
「これは・・・!。まさか測定不能、とはな。確かにこれは規格外だし、これでは、どの程度の量なのかわからない。この紙は、燃やしたほうがいいだろうな。誰かに見つかりでもしたら騒ぎになる。」
「分かりました。貸してください。自分でやります。陛下、これが今日、私があなたに明かす最後の秘密です。」
私はそう言って、無言のまま、二枚の紙を魔法で燃やす。
それを見て陛下は、今日一番の動揺を見せる。
「無詠唱・・・!?そんな、まさか。詠唱は、魔法発動の鍵なのだ。鍵なくして、鍵のかかった扉が開くことはないように、詠唱なくして魔法が発動する事はありえない!」
「なんでかはわかりません。けどその例えで言うなら、私はピッキングが得意なんですよ、きっと。でもその分、頑丈に施錠された扉は、流石の私も鍵を使わないとあけらけらません。」
「・・・つまり、高度な魔法、大規模な魔法は、詠唱をしないと発動できない、ということか?」
「はい。」
これで私は今日、陛下に四つの秘密を明かした。
発作のこと、魔法の多重複発動のこと、魔力の質と量のこと、無詠唱発動が可能であること。
陛下はしばらく混乱っしていたが、すぐに落ち着いた。
やはりこの人も私と同じように、物事を受け止めるのが得意なようだ。
一つため息をつき、声をかけてくる。
「ひとつ質問をしてよいか・・・?」