王様に謁見したら、王様の〇〇になりました。(2)
え、若、わっかぁ!!
しかも、超キラキラしてるし!
本日三人目の、見目麗しい方来た!
目の前にいる王様は、金髪碧眼の青年である。
少し肩にかかるぐらいの癖のある髪もそうだが、オーラが、まぶしい人だ。
だが、浮かべた笑顔が、どこか見透かされているようで、恐ろしい。
「お初お目にかかります。リュリアと申します。この度は、このような場にお招きいただき、感謝します。」
私は、マナーの先生に教わった、最大限の感謝を示す礼を取った。
「私の名はリルミス。この国の王だ。こちらこそ、私の友、バルジスの命を救ってくれたこと、感謝する。そなたの精霊たちにも礼が言いたい。姿を現すように言ってくれるか?」
陛下のこの一言で、私の陛下に対する評価は一気に上がった。
自分の友のために、人に頭を下げる王など、なかなかいないだろう。
やはり怖いと感じるが、仲間思いはいいことだ。どうやら、バルジス様が言っていた陛下の評価は、身内びいきなどではなく、真実のようである。
私が精霊たちに声をかけると、みんなは私を囲んで、守るように現れた。
「そなたは本当に、7種族すべての精霊と契約しているのだな。名はなんというのか、聞いてもよいか?」
「この子達の、名ですか?いえ、そのようなものはつけておりませんが・・・」
そう答えると、この場にいる、私とルカ以外の全員が、面食らったような顔をした。
「おま!じゃあ、名前つけずに、精霊たちにあそこまでの力を出させたっていうのか!?」
「それに精霊たちは、一度も力を暴走させませんでした。・・それを、名づけの儀なしで行うとは。
本当に、リュリアは規格外ですね。」
テルガとバルジス様が声を上げる。
「・・・・・・・・えーと、説明いただいても?」
私が困惑していると、レナードさんが説明してくれた。
「普通、契約精霊を完璧に使いこなすには、名付けの儀ってのをして、契約精霊に名前をつけてやる必要があるんだ。そうじゃねえと、精霊の力を完璧に引き出すことができないし、逆に、暴走することも珍しくねえ。なのにあんたは、精霊に名をつけずに使いこなしたってんで、みんな驚いてんだ。」
「なるほど。じゃあ私は、この子達に名前をつければ、もっと大きな力を引き出してあげることができるってことですね。」
「その通りだが・・。お前たちのご主人様は、かなり優秀のようだな?」
陛下が声をかけると、精霊たちは「当たり前だ」とでも言うように胸を張った。
「まあいい。とりあえず、今回のこと、お前たちにも本当に感謝している。」
「私たちは、ただ姫様のお望み通りに動いたまでです。」
「感謝されるいわれはないな」
精霊たちの言い分に、陛下は苦笑する。
「主思いで何よりだ。これからもお前たちの主人を守ってやれ。」
そういうと、精霊たちは「あたりまえだ」といいのこし、姿を消した。
「さて。では、いくつか私の方からそなたに、質問をするがよいな?」
陛下は素早く、話を切り替える。
私は承諾する。
「ではまず、そなたは、どこの家の者だ?私は、社交界の場で、そなたを見たことがないのだが。そなたのように目立つものは、一度見たら覚えているだろうからな。」
いきなり、地雷を踏んできた。
「ええっと、彼女は体が弱くてですね・・・」
慌ててテルガが嘘を答えようとするが、私はそれを止める。
これからお世話になるかもしれない相手だ。なるべく、嘘や秘密は言いたくない。
「私は、実は、テルガの親戚でも、貴族でもありません。バルジス様、今まで嘘をついていて、すみませんでした。」
「・・・事情が、有るのでしょう?話してください。」
バルジス様は先を促す。
私は、自分とルカは記憶がなく、気がついたらヴァロの山奥にいて、病気の発作で動けなかった私たちを、テルガが見つけて助けてくれたと話した。
転生や魔力の量と質、無詠唱などについては伏せる。
話を終えると、陛下から質問が飛んでくる。
なんだかビクビクしてしまうのはやはり、この人の圧力のせいだろう。
「人為的な記憶操作の可能性が高いな・・・。そなたがテルガと出会ったのは、一か月前だといったな。それにしては、落ち着き過ぎではないか?」
「そういう性格なんですよ。わからないことは考えない。どうしょうもないことは、悩むより受け止める。とどまるより、進むことを選ぶ。悲観にくれるより、出来ることを探す。私は、適応能力が高いのかもしれません。突きつけられた真実から目を逸らさず、そういうもんだと受け止める。だから、あまり混乱はしませんでした。」
「では、気がついたとき、発作を起こしていた、と言ったな。それはどうなった?」
「四日で魔法をマスターし、症状を抑えることができました。」
嘘はいっていない。この言い方だと全員、白魔法を使ったと思い込むだろうが。
「・・・。四日。・・まあよい。」
私と陛下は、なんども、質疑応答を繰り返した。
で、話しているうちに、思ったことがある。
この人も案外、物事を受け止めることに長けている気がする。さっきから私が何を言っても、あまり取り乱していない。
「うむ。そなたがいかに、優れた人間かは、よくわかった。冷静で、強く、頭の回転がよい。運動神経がよく、あらゆる魔法を思い通りに操り、7人の精霊と契約を交わし・・・キリがないのでこのくらいにするが、おまけに美人と来ている。ぜひ、このエルフェキアのために、その能力、生かしていただきたい。どうだ。ここに、とどまってはもらえないだろうか?」
つまり、王城で、国のために働け、ということだな。
この人、もし私が嫌だといっても逃がす気ないくせに聞いてくるところ、賢いよな。
ここで働く、と私が言えば、陛下は私が望んでここにいるのだと、アピールできる。
誰にか、は、もちろん私を取り込もうとする連中に、だ。
私がここで働くようになれば、私の存在はそこらじゅうに知れ渡る。魔法ひとつとっても、私はかなり優秀だ。味方につけようと、ちょっかいを掛けてくるやからも、少なくないだろう。
陛下がここに留まるよう命令するのではなく、私に自ら言わせることで、そういう奴らを牽制できる、というわけだ。
私は、陛下の策略を理解した上で、こたえる。
「私は、ここに留まります。しかし、国のために働くかどうかは、陛下次第です。あなたが私に、国のために働きたいと、思わせてください。そうすれば私は、全力を尽くしますよ。」
私が、不敬罪云々の意識を遥か彼方に飛ばした状態でそう言うと、陛下はニヤリ、と笑った。
「面白い、やってやろうじゃねえか」とでも言うように。
なに、その笑顔。マジ怖えぇ!!!!!!!!




