王様に謁見したら、王様の〇〇になりました。
現在、パーティーの翌日の、あさ7時でございます。
(きっつ・・・)
正直に言おう。かなりやばい。これは、今日が山場かも知れない。薬を飲んで、傀儡をかけ直したが、麻痺と冷却は、かけ直せなかった。マジに余裕がなくて。
冷却はとりあえず、水の精霊にやってもらうことにして、頭痛その他もろもろは、我慢だ、我慢。
汗を半端なくかくので、それも水の精霊に蒸発してもらうことにした。
歩くことすらきついので、風の精霊に常に風を起こしてもらい、支えてもらう。
ほんと、迷惑をかけます。
朝食の席に向かう前に、ルカの部屋に行く。
「ルカ、起きてる?朝食へ行こう。」
声をかけると、すぐにルカが出てくる。準備は整っているようだ。
「おはよう、姉さん。顔色が悪いけど、大丈夫?」
「うん。大丈夫。昨日、緊張しすぎてあまり眠れなかっただけ。」
今日は、王様に謁見するのだ。緊張の一つや二つ、して当然だろう、というと、ルカも納得したようだ。
本当は、緊張など微塵もしていないのだが。
朝食を食べている間、テルガやルミーダ一家からも同じようなことを言われたが、ルカと同じように説明すると、皆納得してくれた。
今のところは、疑っている人はいないようだ。
バルジス様が、それとなく励ましてくれようとする。
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。確かに陛下は、足を引っ張る輩や、馬鹿には冷たく接し、バッサリと切り捨てますが・・・」
え、なにソレ怖い。
完全に、敵に回したらアウトな人じゃん!?
「役に立つ人や、頭の切れる人など、自分が認めた人には、人並に接してくれますし・・・」
はぁ!?
役に立っても、頭が切れても、人並みにしか接してくれないと!?
うーわー。・・・怖!
「気に入った人には、とても優しいお方ですよ。リュリアなら、きっと、陛下のお気に入りになれますよ。」
ハードル上げられたぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
何だ、なれますよって!?なれるかい!
それに、なれますよ、が、ならなきゃやばいよ、に聞こえるのは私だけか!?
そうか、私だけか。(現実逃避)
何なんだ、この国の国王って。
バリバリの実力主義者やないか~い!
あれか!?私は精霊使いで、魔力高くても、役に立たなかったら終わりなのかい!?
即刻追放とかされんのか!?牢屋行きか!?私の、異世界ハッピーライフの夢は消えるのかい!?
そんなのいーやー。
私は、バルジス様の一言で動揺しまくったまま、食事を終え、準備を整えた。
私たちは皆、国王の御前に立つということで、昨日よりも数段豪華な服を着ている。
全員分、ひと晩で仕上がったのだ。
針子さんたち、ありがとう!
服装で陛下からの第一印象下げるとかは、マジ勘弁だからな!
準備が終わり、全員(私、ルカ、テルガ、バルジス様)が人部屋に集まったころ、王城からの迎えが到着した。
でけえ。
ええ、もう、それはそれは豪華な馬車でありました。
車で言う、リムジンみたいな?
これ乗んのかよ。まじか。
そんなことを考えていると、目の前に、それはそれは見目麗しい人が二人立っている。
「あんたがリュリアか?」
「はい。」
「そうか、会えてよかった。」
見目麗しい方その一が話しかけてくる。
オレンジ色の髪と目をしている。筋肉がすごくて、かなり長身だ。
体格のせいでかなり高圧的だが、その顔に浮かべる笑顔は、とても親しみやすいものだ。
「俺は、エルフェキア騎士団団長、レナード。こっちのは、副団長だ。」
見目麗しい方その一改、レナードさんは、見目麗しい方その二を紹介する。
こちらは、紫の髪と目をもつ、レナードさんには及ばないまでも長身だ。
筋肉のつき方も露骨ではなく、いわゆる細マッチョだろう。
長い髪を、後ろでひとつにまとめている。かっこいい、というより、綺麗な人だ。いや、男なのだが。
「エルスだ。よろしく頼む。」
それだけ言うと、さっと背を向けて、馬車の方へ戻っていった。
うん。なんていうか、一応諸好事例として言ってはいるが、宜しくするつもりはないって感じだな。
レナードさん曰く、
「すまねえな。あいつは色々あって、人をあんまり信用しないんだ。許してやってくれ。」
ということだ。
* * *
馬車に乗って30分足らずで、王城には付いた。
もう言わなくてもわかるよね?
私が王城を見て、最初に思ったことはなんでしょう?
正解は?さん、はい!
「でけえ」
正解!
私たちは、とにかく広くて、豪華で、煌びやかな城内を、バルジス様に案内される。
とても入り組んだろうかを進んでいき、ひとつの部屋の前で止まった。
ここに、王様がいるんだろう。
緊張は・・・してないな。あるのは、恐怖である。
バルジス様が声をかける。
「陛下、例の者たちをお連れしました。」
「入れ。」
え、声若くね!?
私、もっとこう、ダンディーなオジさんを想像してたんだけど!?
扉を開け、見えた王様は、20歳くらいの青年だった。