王都へ(8)
「姉さん!怪我してるじゃん!なんでもっと早く言わないの!?そこに寝て!」
ルカは強引に私をソファーに寝かせ、傷を癒してくれる。
かなり、怒っているように見えた。
「ごめん。」
「はぁ。姉さんが無茶するのは前からだけど、心臓に悪いから、怪我したんなら早く言って。」
「ごめん。ありがと。」
わかった、とは言わないでおく。これからも私は、おんなじようなことをするような気がするからね。
しばらくして、バルジス様が、部屋に入ってくる。
バルジス様の顔を見ると、エルーゼ様は泣きながら、良かった、とつぶやいた。
「いま、王に報告をしてきました。明日の朝に、迎えをよこすとおっしゃっていました。ルカ様とテルガ様もともに来るように、とのおおせです。」
「分かりました。」
私たちは今夜、ルミーダ家に泊まることになった。
一人一部屋、という破格の待遇だ。
今頃みんなは、親睦を深めるためにと、会話を楽しんでいることだろう。
しかし私は、疲れたから、と言って、一人寝室にこもっている。
「はあ・・・・っあっ・・・はぁ・・・」
体が重い。
頭が痛い。
苦しい。
本当にもう、限界が近いのだろう。魔力が乱れて、かけていた魔法まで解けかけている。
発作が、完全には抑えきれていない。
私を心配してか、精霊たちが出てきた。
「姫様、しっかり」
「大丈夫ですか?とても苦しそう」
「苦しんでいる姫様を前に、何もすることができないなんて・・・」
「無理をするからこうなるんだ。もっと俺たちを頼れ」
口調や表現はそれぞれだが、本当に心配しているようだ。
「大丈夫。ひと晩休めば、平気だよ。」
「嘘つきだね、リュリアは。本当は、かなりきついんでしょう?」
「リーレン。」
リーレンまで出てきた。
リーレンは、私をいたわるように、ベッドに横たわる私のそばに来た。
「ごめんね、リュリア。」
「・・?なにが?」
「回復魔法、もう、かけてあげられない。」
なんだ、そのことか。
「分かってる。精霊と契約したから、私の霊力が上がって、リーレンの魔力が入り込む余裕がなくなっちゃったんでしょう?わかってるから。わかかってて、私は精霊と契約したんだから。」
まあ、私も体外ピンチだが。
霊格がさらに高まった私に、リーレンは回復魔法を使えない。私が神格化してしまうから。
となると、私は唯一の回復方法を失ったことになるのだ。
私の体は、疲弊しきっている。もって後三日くらいだ。
それ以内に、誰かに回復魔法を施してもらわなければ、死ぬ。
リーレンは、私の隣に横たわる。
精霊たちも実体化し、ベッドの上に集まった。
精霊たちは自由に、自分の姿を変えることが出来る。
本当に何にでも。実体化するしないもおもいのままだ。
今、精霊たちは、身長50センチ位の人型をとっている。かなり小さいが、それでも、ひとつのベッドの上でそれだけの人数が寝ると、窮屈だ。
しかし、私に寄り添ってくれるものたちの体温が心地いい。
私はそのまま眠りに就いた。
この子達のためにも、死ねないよなぁ。
明日から、死に物狂いで、条件を満たす白魔術師を探すとしよう。




