王都へ(6)
「リュリアさん、大丈夫ですか!?・・・君は一体何ものです?強力な魔法を使い、超人的な運動神経を持っている。その上7体の精霊と契約を結ぶなど。本来ありえないことです。」
険しい顔の彼に、私は笑って答える。
「別に、ただの小娘ですよ。」
「・・・」
納得はしていないようだっだが、バルジス様は今度は違う疑問を投げつけてくる。
「では、なぜほかの人たちの様に、私の記憶も消さなかったのです?私はこの国の宰相です。このことを、王に報告しないわけにはいきません。すぐにまた、君の正体が広まってしまうかもしれませんよ?」
わかりきった事を聞いてくるものだ。
「あなたが、王に報告をすることは承知の上です。でも、あなたにはこのパーティーの主催者として、騒動を収める義務があります。だから、記憶を残しました。それに、あなた方国の上層部は、私のことを公にすることはないでしょう?私のようなイレギュラーの存在なんて明かしたら、国民は混乱し、国の統率が測りにくくなるんじゃないですか?さっきみたいに。場合によっては、協会や他国と、私を取り合って争いになる可能性だってありますよね?私は、大きな戦力にも、権力にもなりますから。普通は、存在を隠し、独占しようとするでしょう?」
(まさか、そこまで考えた上での行動だったのですか・・・?)
バルジスは、驚きの色を隠さない。
「それに、このままあなたも記憶を失ったとしたら、このパーティーは、混乱した人々から、呪われている、なり、祟られている、なり言われることになるでしょう。そんなことになったら、シャルノ様がかわいそうじゃないですか。せっかくの誕生日なんですよ?」
(リュリアさん、あなたは・・)
「あなたは、とても聡明ですね。それでいて驕らず、思いやりがある。」
「・・・・・・・・・・・そんなんじゃ、ありませんよ。」
そんなんじゃ、ない。
千笑はずっと、大切な人のためだけに生きてきた。
家族の傷を癒すため、知識を集めた。
母を傷つけられないため、父を殺した。
光太が生きていくため、私も生き続けた。
リュリアもまた、大切な人のためだけに生きている。
リーレンが悲しまないよう、幸せになる努力をすることにした。
でもこれは決して、その人のためにやっているわけではない。
私は、誰かの為にしか、行動を起こせない。
誰かの為にじゃないと、生きていけない。
・・誰かに必要とされていないと、倒れてしまう。
私は、自分の力では立っていない。人に寄りかかって生きている。
だから私は、私を支えてくれる人たちを「大切な人」と呼ぶ。
その人たちに完全に寄りかかって生きている。
私が「大切な人のため」に動くのは、自分が支えを失わないため。
私が「人のため」に動くのは、自分の支えを増やすため。
私が行動するのは、全て自分のため。自分が倒れないため。
それを、優しい、思いやりがある、などというのは、自分の本質から目を背けているだけだ。
だから私はこう言う。
「そんなことない。そんなことはないです。私は、自分のためにしか動きませんから。」




