王都へ(3)
宰相様は壇上で挨拶をしたあと、シャルノ様とともにホールに降りてきた。
その周りに貴族たちが群れる。
おかげで私たちの周りには人がいなくなった。
本来ならば私も挨拶をするべきなのだが、かなり疲れていたので、休憩室に行く事にする。
「そうか。初めてのパーティーで疲れただろう。ゆっくりしてこい。宰相様がたには俺が挨拶しとくから。」
テルガに声をかけ、私はホールを抜け、隣にある休憩室に向かう。
休憩室は小さめにできた部屋で、なんだかおちついた。
落ち着くと、自分がどれほど疲れていたかがわかる。
頭痛がひどい。熱も上がっている。
流石にここまで来ると、放っておけば、テルガ達にバレるのも時間の問題だろう。
私はそう思い、冷却と麻痺魔法をうわがけしようとして気づく。
(魔力が荒れてる。)
魔力が安定せず、発動までに時間がかかった。
おそらくこれも、体調不良が原因だろう。発動し終わり、一息ついていると、不意にドアが空いた。
目を向けるとなんと、そこにいるのはパーティーの主役の、シャルノ様だった。
「シャルノ様?・・・どうしてこちらに?」
シャルの様は今、挨拶の真っ最中のはずである。このような場所に居ていいのだろうか。
「お姉さん、大丈夫ですか?ホールから出て行くところを見かけたのですが、顔色が悪いようだったので心配で・・・」
「ええと、私を心配して、わざわざ来てくださったのですか?」
シャルの様はこくりと頷く。
「ありがとうございます。しかし、私は大丈夫ですから、どうかホールにお戻りください。もし無断でここに来たのなら、シャルの様のご両親が心配なされます。」
「わかった。でもその前に、お姉さんの名前を教えてください。僕、お姉さんのことを見るのは、今回が初めてなもので・・・。」
名前を知らない、とは言いにくかったのだろう。シャルの様は言葉を濁す。
「お初お目にかかります、シャルノ様。わたくし、リュリアと申します。私は身分があ高くはありません。ですからどうか、かしこまった口調をおやめください。」
本当は貴族どころか、身元不明の私が、帰属の中でも身分が高いシャルノ様に敬語を使われている事実が落ち着かず、そうお願いしてみる。
「あ、うん。わかった。じゃあ、リュリアお姉さんってよんでいい?」
「はい。もちろんです。」
どうやら彼は、人懐っこい性格のようだ。私が承諾すると、いきなり抱きついてきた。
浮かべた笑顔がとても可愛い。
これで13歳だというのだから驚きだ。
「さあ、ご両親が心配なされます。お早くホールへ・・・」
シャルノ様を急かしていると、またドアが開く。今度入ってきたのは、シャルノ様の両親、バルジス・ルミーダ様と、エルーゼ・ルミーダ様だった。
どうやら、私がシャルノ様を帰すより、彼らが探しに来るほうが早かったようだ。
「シャルノ、こんなところにいたのか。ん?君は、見ない顔ですね。ああ、もしかして、ジェインの親戚の子ですか?」
バルジス・ルミーダ様に、声をかけられた。