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王都へ

王都へ行くと決まったあとの私たちは忙しかった。

王都へは、ヴァロから丸五日かかる。そのため、準備をする期間は二日しかなかったのだ。

ドレスの制作、私たちがパーティーに参加することへの許可とり、馬車の手配、旅に必要なものの準備等々。

とにかく大変だった。


そして今、私たちは王都にいる。

馬車に揺られ、テルガの実家を目指している最中だ。


「・・・想像以上に人が多いね。」


王都に入って初めて持った感想はそれだった。

人の少ないヴァロでの生活に慣れていたため、人の多さに目がくらむ。これは、比喩にあらず。

正直、本当に目眩がした。

リーレンに回復魔法をかけてもらってから、そろそろ一ヶ月だ。体にがたが来ているのかもしれない。


(パーティーが終わったら、また回復してもらおう。)


私が悠長にそんなことを考えていたことを後悔するのは、そう先ではない。



   *   *   *



テルガは、貴族だった。いや、分かりきっていたことなのだが、このでっかい屋敷が家だと言われると、再確認させられる。


「おかえりなさいませ、テルガ様。旦那様がお待ちです。こちらへ」


執事らしき人が、馬車から降りるやいなや声をけてくる。

私たちは客室に通された。


「「・・・・・・・」」


見たこともないようなきらびやかで豪華な部屋に、私とルカは無言でそわそわする。


「落ち着けよお前ら。これから行くパーティー会場はもっと豪華だぞ。俺たちを招待した人は、身分が高いからな。ちなみに、この国の宰相様のご家族だ。きっと宰相様も来るんじゃないか?」


まじかー。なんか、そんな高貴なお方ばかりの場所に、馴染める自信がない。

ちなみにパーティーは今日の夕方からだ。今はまだ朝早いので、あと半日はある。

その間に私たちは最低限のマナーを学ぶのだ。

テルガと会話をしていると、ドアが開いた。

テルガが立ち上がったので、私たちも立つ。

入ってきたのは、40半ばくらいの男性だった。どことなく、雰囲気がテルガに似ている。


「お久しぶりです、父上。この二人が、以前報告した、私の友人です。」


テルガが私たちを紹介すると、視線がこちらに向く。


「私の名はジェイン。そなたたちが、テルガをパーティーに参加するよう、説得してくれたのだな。本当に感謝する。」


・   ・   ・なんかいきなり、貴族に礼言われた。

話によると、テルガの社交界嫌いは筋金入りらしく、ほとほと困っていたのだという。

それがいきなり参加すると言い出し、テルガが提示した条件が私たちを連れて行くことだった。

私たちの存在が、何かしらテルガに影響を及ぼしたのだろうと思っているらしい。

私はジェイン様に、テルガにであってから、ここに至るまでの経緯を説明した。

もちろん全てではないが。

話をし終え、私たちがかなり怪しい人間であるとわかっても、ジェイン様は態度を変えなかった。親子揃っていい人たちである。


「そうか、記憶が・・。せっかくパーティーに参加するんだ。大変なことは忘れ、楽しんでくれ。さて、時間もない。早速、レッスンを始めなさい。パーティー会場でまた会おう」


それから私たちは、あいとあらゆるマナーについて叩き込まれた。

パーティーに行く頃には、ヘトヘトである。背中を丸めていると、マナーの先生に叱咤される。


「しゃんとなさい!淑女たるもの、一度ドレスに身を包んだら、一切気を抜いてはいけません!」

「はい!」

「大きな声を出さない!」

「・・・はい。」


あんたはいいのか?と思いつつ、口には出さない。

私は着付けが終わると、外に止まっている馬車へ近づく。そこにはもう、テルガとルカがいた。ジェイン様は先に行くっと言っていたので、私が最後だろう。


「ごめん二人共。待たせた。」

「いいんだよ。女の子は支度に時間がかかるんだから。ドレス、君の瞳の色にバッチリあってるよ。似合ってる」

「姉さん、すごく綺麗。」


わたしはいま、青を基調とした、細身のドレスを着ている。

なんと、コルセットは付けていない。細すぎて、必要なかったのだ。

脱いだとき、次女さんに本気で心配された。細すぎる、とか白すぎる、とか。

でも、仕方ないと思う。感じないとは言え、私は常に、発作を起こしているのだ。当然、食欲などわかない。これでも最低限は食べる努力をしているのだ。

もっと食べろと言われるが、食べたところで消化が間に合わずもどしてしまう。

血色が悪いのも、仕方ない。

特に今は、体に疲労がたまってきているのでただでさえ白い肌がもっと白くなっている。


そういえば心なしか、頭が痛い。さっきは目眩もしたし、体温も少しだけ高い。

発作の全ての症状は感じなくなっているはずなので、これは発作ではなく、発作による疲れから来た体のガタだろう。

つまり、単に疲れて熱が出ているのだ。その疲れの理由が発作だというだけで、普通の熱と何ら変わりはない。

何度も発作を起こしてきた私にとって、こんなものは気にするに値しない。


「さあ、行こうか。」


二人に熱のことを隠し、場車に乗り込む。

いよいよパーティーだ。

どんなものなのだろうかと、期待が膨らむ。


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