精霊(3)
私は、たくさんの精霊たちと話をしようと思って、失敗した。
誰ひとり(?)として口を開かないのだ。
嫌われているおかと思いがっくりしていると、どうやらそうでもないらしい
リーレンによると、「精霊は警戒心が強いから、なかなか口を聞いてもらえないんだよ。でも、こんなに近くまで寄ってきているんだ。第一印象はよかったみたいだよ。」ということらしい。
確かに私の周りにはたくさんの精霊がいるのに比べ、ルカやテルガさんの周りには一人もいない。
それから私は、ほぼ毎日のように教会に通い、精霊たちに話しかけた。
そのかいあってか、今ではみんな、普通に話してくれるし、時々触れ合ったりもした。
とは言っても、彼らには実体がないのだが。
精霊は、何者かと契約を結ぶと、契約精霊となり、実体を手に入れるのだそうだ。ちなみにこれは、水の精霊から聞いた。水と闇、光の精霊とは、特に仲がいい。
私は今、日々魔法の鍛錬をし、精霊たちと他愛もない話をするという、平和な日常を送っている。
* * *
今日も協会へ行こうとしていると、テルガが何やら手紙を読んでいるのが目に入る。
ここ世界に来て、今は3週間だ。だいぶこちらの知識も身につき、ここでの生活にも慣れてきた。
魔法も、回復、治癒、身体強化など以外なら、もう何でも使えると思う。
「テルガ、なに読んでんの?」
「ああ、リュリアか。いや、一週間後、王都で、ある貴族の誕生日会をするらしくてな。そのパーティーの招待状だ。」
私はもう、テルガに敬語を使うのをやめていた。それなりに信頼している証拠だ。
「へえ、王都で。いいなぁ、私も行きたい。」
「俺も王都、行ってみたい。」
がっばぁぁぁ!!!!
私たちがそうつぶやくと、ものすごい勢いで、テルガが顔を上げる。
「お前ら!それ、超いいアイディアだ!ぜひ、一緒に来てくれ!俺、貴族ばっかの空間、マジで無理なんだ!お前たちが隣にいてくれれば、かなり楽になる。頼む。一緒に来てくれ!」
がっばぁぁぁ!!!!!!!!!!
今度はものすごい勢いで頭を下げる。
「い、いや、私たちも行きたいけど・・・ねえ。」
「テルガ、俺たちは貴族じゃないどころか、身元不明なんだけど?」
「そんなものは、遠い親戚だなんだと言っておけばなんとかなる!最近、全然こういう社交界的なのに顔出してなかったから、そろそろ一回行っておかないとやばいんだ!このままだと、貴族のやつら、全員俺の顔を忘れかねん。」
(おまえ、どんだけすっぽかしてきたんだよ)
かなり悲惨な状態だ。
久しぶりに社交界の場に勇気を出して出て行って、「・・・・・こいつ、誰だっけ?」って顔されんのはきつい。
そうなったとき、近くで慰めてやる人間が必要だろう。
そう思って、「わかった。行ってあげるよ。」とかわいそうな子を見る目で言うと、テルガは、ぱぁぁーーーー!という効果音が付きそうな笑顔で礼を言ってきた。
((・・・こいつ、ほんとに可哀想な子なのかもしれない。))
私とルカの、心の声がハモった瞬間だった。




