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初めての魔法(4)

遅れてすみません。ペース取り戻していきます。

「ただいま、テルガさん。」

「ああ、おかえり、二人共。食事の用意が出来てる。食べながら、どうだったか聞かせてくれ。・・・・・・ん?リュリアちゃん、た、立ててないか?ていうか、歩いてない?」


私は今松葉杖を担いで、普通に歩いている。


「あ、気づきました?私、傀儡魔法が使えるみたいなんですよね。それで、練習も兼ねて手足を操って生活することにしました。」

「まじか。リュリアちゃんすごいな!傀儡術者なんて、一国に一人いるかいないかなんだぞ?しかも、初めてで人体を操るなんて。」


私たちは食卓につき、テルガさんに報告をする。おじさんに言われた通りに。


「へぇ。じゃあ、ルカの専門は、白魔法だな。リュリアちゃんの方は、結構なんでも使えるのか。本当にすごいな。噂になれば、王様からお呼び出しがあるんじゃないか?」

「なにそれ。」

「この国の王様は、優秀な人材の話を聞くと、城に招待するんだ。で、しばらく滞在させて、実際に能力や人格を見て、城に置いておくべきか見定める。で、国に必要な人材だと判断したら、城にとどまるように言われるんだ。もちろん断ることもできるが、破格の待遇を受けるからな。断る人はなかなかいない。

精霊使いなんかも、こうやって城に集められてんだよ。」


そうなのか。そういえば昨日、精霊使いは保護される、みたいなこと言ってたな。

でも、滞在期間中に試されてるってわかってたら、その間だけ猫かぶる奴とかいんじゃね?


「そんなことしても無駄さ。うちの王様は、とにかく優秀だからな。そんなの一発でばれる。」


まじか。この国の王様、パネエな、おい。

そんなことを話しているうちに、食事が終わった。

私達は再びおじさんの家へ向かう。



   *   *   *



「おじさん、きたよー。」


なんか、もう敬語が面倒になった。ので、普通に話しかける。

小屋に入ると、大きな箱が置いてあり、中には、人形がたくさん入っていた。


「おう、きたか。早速始めるぞ。ルカは、この人形を、壊しては元に戻すを繰り返せ。まず人形に結界を張って、それを黒魔法で破れ。そしたら、黒魔法で傷ついた人形に治癒をかけて治すんだ。その繰り返し。一気に、結界、黒魔法、治癒の威力を高められる、超効率的な特訓だ。始めろ。」

「はい!」


ルカは早速、部屋の隅で特訓を始める。

傍から見れば、人形に、大切そうに結界を張ったかと思えば、自分で破壊し、自分で壊した人形を丁寧に治す、情緒不安定な子供にしか見えない。

(・・・なかなかシュールな光景だな。我が弟がカワイソウな子に見える!)

しみじみとそんなことを考えていると、今度は私に指示が飛ぶ。


「リュリア。お前は、余ったこの人形たちを、自分の思い通りに動かせるようになれ。最初は、全部同じ動きでいいから、最終的には、全部バラバラの動きで、一斉に動かせるように。それができるようになれば、発作のために発動してもいいだろう。始めろ」

「わかった」


人形の数は思っているよりも多い。一斉に動かすのはとても難しく、膨大な魔力を消費した。

私たちはこの日、日が暮れるまで練習を続け、テルガさんの家へ帰ると、夕飯を食べ、風呂に入ってから、泥のように眠った。

そして次の日の朝早くから小屋にこもり、日が暮れたら帰って、眠る。

こんなせいかつを、三回ほど繰り返した頃、私は課題をクリアした。


「おじさん!みて!できた!」


私は、人形のサーカス団を作った。ある人形は玉に乗り、ある人形はジャグリングを、またある人形は空を飛び、綱を渡り、ナイフを投げて的に当てている。ライオンの形をしたぬいぐるみは、火の輪くぐりをしている。

ちなみにこの火は本物だ。傀儡魔法と並行して発動している。

どうだこのハイクオリティー!!!


「おっ!無駄にこってんなぁ!これは。」

「無駄とは何だ。人が努力して動かしてるっていうのに。」

「いや、褒めてんだよ。どうだ、ここまでのことをしても、そんなに疲れなくなっただろう?」

「うん。これのあと5倍くらいの人形なら、みんなバラバラに動かせる自信ある。」


今私は、20体の人形を動かしている。・・・よそ見をしながら。

この様子だと、100体など余裕だろう。


「よし。その息だ。ルカの方もだいぶ強化されてきたし、特訓終了とするか。俺に教えられるのはこれくらいだしな。魔法は、そいつのイメージによって、無数に生まれる。これからも、柔らかい頭で想像を膨らませ、たくさんの魔法に挑戦するように!以上。」


(え、なに、この校長先生のおはなし、みたいなノリは。)


「さて、リュリア。ついに発作を抑える時が来たが。薬の効果は何時頃切れるんだ?」

「大体8時、かな。」

「・・・あと30分だな。発作が起こり次第、すぐに魔法を発動しろよ。発作で意識飛んじゃあ、意味ないからな。その前に終わらすぞ。」

「うん。」


少しくらい不安を覚えてもいいと思うのだが、そういった感情は一切なかった。


「ルカ。先に戻って、リュリアは遅くなるが心配するなと伝えろ。」

「わかりました。でも、伝えたら、戻ってきます。姉さんが大変な時、そばにいたいので。」

「ああ。いいからさっさと行ってこい。全く、仲のいい姉弟だな全く。」


呆れ顔でルカを追い立てるおじさんの顔には、不安が見て取れた。

どうでもいいけど、おじさん。全くって、2度言ってるよ!


「大丈夫だよ、おじさん。あんなに頑張って特訓してくれたじゃん。教え子をしんじてよね。」

「ああ、そうだな。・・はぁ。死ぬなよ?」

「わかってるって。死なないよ。」


死ぬわけがない。だって、もう完璧に、発作を抑えるために必要な魔法はマスターしたのだから。

そう、発作を抑えることはできるだろう。

ただ、そのあとが問題なのだ。発作を抑えたあとが。

おじさんはまだこのことに気づいていないようだ。が、私は気づいた。

問題はまだある。



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