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嫉妬の連鎖  作者: ますざわ
第4章 操り人形
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15

「瀬崎浩平・・・弁護士か」


 刑事の宮崎は瀬崎浩平の資料を見て呟いた。


「大久保さんの知り合いなんですか?」


 コーヒーと煙草を手にして喫煙所へ向かおうとする大久保に聞いた。


「ん?あぁ。瀬崎先生ね。そうだな・・・ちょっと、行こうか」


 そう言って大久保は宮崎を喫煙所へ促した。

 宮崎が大久保の部下となってもうじき二年が経つ。最初は優秀で仕事に厳しい大久保に怒られてばかりの日だったが、今では大久保も認める優秀なパートナーとなった。

 喫煙所に入って、煙草に火を点けて大久保が言った。


「昔、俺が担当した刑事事件で知り合ったんだ。それ以前からちょこちょこ目にしてたんだけどね。あの先生、若いのに優秀だし父親の瀬崎由伸は刑事事件弁護のスペシャリストだしな」


「へえ」


「まぁ職業柄、弁護士とは馴れ合うような関係じゃないし瀬崎先生とも最初はそんなつもりじゃなかったんだけどさ、あの人弁護士っぽくなかったんだよ。暑苦しいくらい情熱的でさ」


「弁護士でそういう人は確かに珍しいですね」


「だろ?それで理由は忘れちまったけど、先生と車で二人きりになる機会があってな。その時に同い年だって事が分かって、あとは酒の話で盛り上がったから、じゃあ今度是非みたいなね」


「社交辞令じゃなかったんですか?」


「まぁ弁護士の知人なんて損する存在じゃないしな。一度そういう話があった手前、一応誘ったんだ。それで実際酒飲んで話してみたらウマが合ってそれ以来ってところ」


「なるほど。それで?大久保さんは何でこの事件の担当だなんて嘘ついたんですか?」


 今回の事件は、横浜で起きた殺人事件であり、警視庁に所属する大久保には無関係な筈だった。


「まずいでしょ。いくら神奈川県警が目撃者の瀬崎先生には現場で話聞くだけで、一旦身柄解放されたからって、無関係の警視庁に黙って引っ張ってきちゃ」


 宮崎の言う通り、大久保が瀬崎浩平を警視庁に連れてきたのはかなり強引な方法だった。大久保自身、自分がどれだけ無茶な手段を取ったか、重々承知している筈だ。そこまでしても瀬崎浩平と話をしたかったのは、必ず何らかの理由がある筈だ。大久保という刑事は考えも無しに無茶な行動を取るような人物ではない。


「宮崎。これから俺が言う事は単なる独り言だ」


「え?」


「今回の檜山探偵、そして身元不明の一名を殺害した事件。俺はこれを飯田基弘殺人事件と関連があると見てる。勿論根拠なんて無い。ただの勘だ」


 宮崎も飯田基弘の事件は知っているが、今回の事件との接点は現段階では皆無と言っても過言ではない。大久保の話は余りに非現実的な話だった。

 しかし、大久保は勘と言ったが単なる勘で無茶な行動を起こすとは思えない。いつだって何らかの根拠がある。今回もそれを口にしないのは確信がないからだけであって必ず何かある筈だ。

 そして、宮崎には見えない接点を大久保が持っているというなら、その接点は瀬崎浩平そのものであると予測出来る。大久保がどのような形で二つの事件を繋げているのか分からないが、何らかの形で瀬崎浩平が事件に関わっていると読んでいるに違いない。


「瀬崎浩平、洗うんですか?」


「どうかな。仮に関連があったとしてもあの調子じゃなかなか喋らないだろうし。相手も刑事弁護のスペシャリストとくればこっちもあまり強引な事をすると痛い目見そうだからな。まぁ、まずは上にこの事件を神奈川県警との合同捜査にするよう話をするところからかな」


 そう言って大久保は煙草をもみ消し、喫煙室のドアを開けた。


「かなり凶悪な事件ですからね。何も言わなくてもそうなるのは時間の問題だと思いますけど」


 果たして大久保が本当に瀬崎浩平を諦めたのだろうか。それはない。白黒はっきり付く前に大久保が身を引くことなどあり得ない。


 瀬崎浩平。少し自分でも調べてみるか。

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