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嫉妬の連鎖  作者: ますざわ
第4章 操り人形
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7

 瀬崎がここにはもう用はないと言うので亮が由香をもう一度リビングに呼び、情報提供に礼を言い、必ず飯田を殺害した犯人を捕まえると強く言った。

 瀬崎は上機嫌だ。この一連の事件が起こってから瀬崎の余裕のある笑顔を見た事は一度もなかった。まだ瀬崎が何故ここまで上機嫌なのか分からなかったが、久しぶりにそんな瀬崎の顔を見る事が出来て、亮は嬉しかった。


「思ったより早く終わったな。九時からウチの事務所で兄貴の雇った探偵達と会う事になってんだ。お前も行くか?どうも探偵は探偵で情報を掴んだらしいからそれを聞いてから俺の考えをみんなに話そうと思ってる」


 そう言われたら行かざるを得ない。本音を言えば、あまり行きたくはなかった。瀬崎の兄、浩平はプロの探偵を雇って情報収集をしてるが、瀬崎と共に動いてる自分達は単なる素人だ。その場にいても、場違いなような気がした。


「まだ時間あるな。ちょっと俺、先にちょっと一件だけ仕事済ませてくるから適当に時間潰しててくれよ。九時にウチの事務所で待ち合わせとしよう」


 そう言って瀬崎は電車に乗った。思い過ごしでなく、瀬崎は確かに上機嫌だ。まだ何も解決した訳ではないというのに。瀬崎はそれ程までに真相に近付いたのだろうか。

 時間を潰して、と言われたが特に何もする事はなかった。亮の飲み仲間といえば瀬崎は勿論だが瀬崎と都合がつかない時は専ら西川と飯田だった。瀬崎との酒は、時にはバカになれ、時には勉強にすらなる、自分にとって非常にメリットのある時間だ。一方で、飯田や西川との酒には、学ぶ事などほとんどなかった。むしろ、社会的に言えば、亮の方が余程地位があった。

 彼等を意識的に見下していた訳ではないが、彼等と話をすると、亮は少なからず安心した。自分よりも劣っている人間がいる、と。瀬崎との時間では決して得る事の出来ない時間だった。勿論、彼等との時間はその為だけという訳ではない。あくまでもそういう側面もあったという話であって、かけがえのない友人であることに間違いはなかった。

 だから、亮は飯田の事件以来、酒を飲んでいない。今はまだ飯田との思い出に浸りたくなかったからだ。亮の体、心を動かすものは今は飯田の仇を取る事以外、何も無い。

 犯人として一番可能性が高い、有川保。先程の瀬崎の話によって仲間である可能性が急激に高まってきた金森愛。

 この二人を簡単に警察に引き渡す事など出来ない。仮に、父が苦労して切り盛りしてきた工務店を犠牲にする事になったとしても飯田の仇は必ず取る。

 瀬崎が金森愛に抱く気持ちが少し分かる気がする。警察ではなく自分の手で裁きを下したい気持ちが。


 間もなく、瀬崎の口からより真相に近付く事実が聞けると思うと、興奮して落ち着かなかったので食事がてら定食屋に入り、亮は気分を落ち着かせた。

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