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嫉妬の連鎖  作者: ますざわ
第4章 操り人形
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 飯田基弘の死から三日が経った。未だに犯人は見つかっていない。それどころか、瀬崎の所に警察がやってくる事もなかった。つまり、警察はまだ金森愛の存在に辿り着いていない。

 浩平や檜山、桜川も警察から有力な情報を得る事は出来ておらず、金森愛、有川保についても追跡の糸は切れている状況だ。


 役員会まであと八日。瀬崎にはとにかく時間がなかった。飯田の事件以来、亮や西川とは連絡を取っていない。

 二人にとって親友であった飯田が殺されたという事実は、瀬崎の予想以上に大きいダメージを受けている筈だ。しかも、殺害された理由は金森愛、有川保を追っていたからだ。つまり、二人も命を狙われている可能性は非常に高い。

 しかし、瀬崎には一つどうしても確認しておきたい事があった。自分勝手である事は分かっているが、もう瀬崎に余裕は無かった。意を決して、瀬崎は亮に電話を架けた。


「兄貴」


 亮はすぐに出た。意外にも声は明るかったことに瀬崎は少し安心した。


「すまなかったな、飯田君のこと」


「兄貴が謝ることじゃないだろ」


 自分でも分かっていたが、自分が亮を、飯田を巻き込まなければ彼は命を落とさなかった筈だ。その事に因果関係がないとは言えなかった。


「今、仕事休んでるんだ」


 亮が言った。


「飯田を殺した奴、絶対俺達の手で探したくてさ」


 亮の言葉は意外なものだった。


「警察が捜査してんのは分かるけど、それを黙って見てられないんだ」


「俺が言うのもあれだけど、亮や西川君も狙われてるかもしれないんだぞ?」


「分かってる。でも、兄貴と同じさ。警察に任せて待ってるだけじゃ不安なんだ。だったら自分の手で見つけ出したい。だから仕事休んでそれに専念してるんだ。それで、兄貴はどうなの?」


「勿論動いてる。実は、兄貴も人を使って動いててくれててな。今の所、進展が無いから成果は出てないが」


「兄貴、それなら一つ考えがあるんだ」


「考え?」


「俺達の予想なんだけど、きっと飯田は分かってたと思うんだ。自分の身に危険が近付いている事を。あいつは昔からそういう危ない世界にずっと身を置いてたから油断して何も分からないまま殺されたってのは考えにくい。きっと、残してる筈なんだ。何かを」


「何かって、手掛かりってことか?」


「そう。ちなみにもう飯田が一人暮らししてたアパートは調べた。でも、警察が先に入って飯田の荷物はほぼごっそり持って行かれてた」


「まぁそれはそうだろうな」


「でもね、多分あいつは自宅に大事な物は置かない。自分自身の身の回りを管理出来るような奴じゃないからね」


「というと・・・女か?」


「ああ。成果があるかどうか分からなかったから、兄貴には言ってなかったけど、実は今日アポを取ってる。兄貴も行く?」


 願ってもない展開だった。瀬崎が一つ、どうしても確認しておきたかったというのは、亮の言った通り、「飯田の残した手掛かり」だった。

 もし、飯田が中山に全幅の信頼を置いていたのなら、または逆に中山に何らかの疑いをかけていたのなら、どこかに必ず何らかの手掛かりを残す筈だ。いや、残していたと信じたい。そこからきっと、金森愛へ辿り着く何かが掴めると信じたい。


「勿論だ。どこへ行けばいい?仕事はもうじき終わる」


「じゃあ二時間後にしよう。二時間後に川崎駅で」


 亮の口調からも、これが恐らく最後の手掛かりになる筈だ。浩平、檜山、桜川が何らかの新情報を得る可能性も高いが、何よりも時間が無い。

 瀬崎にとってもこれが最後のチャンスだった。


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