第二話:希望の日差し、ポニーテールの女の子。
社宅の階段を降り、外に出ると、とても強い日差しに迎えられた。新しい学校生活に希望を持てってか、バカバカしい。清春はそう心の中で思い、舌打ちをした。
「柴田君?」
社宅を出ようとした時、清春は入口の所にいた少女にそう声を掛けられた。その少女は均整のとれた美人というより、どちらかというと可愛らしい感じのする顔立ちで、ポニーテールがよく似合っていた。
「そ、そうだけど。お前誰だよ。」
あんまり異性と話すのに慣れていない清春は、
少し戸惑いながら答えた。
「わー、やっぱりそうなんだ。あのね、うちのお母さんが同じ社宅に今学期から同い年の転校生がくるって言ってたからそうかな〜って。あ、そうだ、あたしの名前は小川菜津子。よろしくね。」
菜津子は嬉しそうに笑いながら清春にそう言った。
「同じ社宅ってことは小川さんもここに住んでるのか。」
「うん。そうだよ!うちは102だけど柴田君ちは?」
「うちは203だから小川さんちとは階段が一つ違うね。」
「あはは。そうだね。ところで私は友達と待ち合わせしてるんだけど柴田君も一緒に行く?」
「ごめん。今日は早く来いって言われたからもう行かなきゃやばいからさ。」
清春は一緒に行きたいのを我慢してそう断った。
「そっか。それじゃあ同じクラスになれるといいね。ばいばい!」
菜津子は微笑みながら手を振った。
清春もそれに応じ、手を振ると、学校へ向かった。
話しやすい子だったな。清春はそうさっきの事を思い出していると、思わずにやけてしまっていた。すぐにあわてて誰も見てないよなと辺りを見回し、口許を直した。
皆あの子みたいに話しやすかったら、うまくやっていけるかもしれない。そんな思いを胸に、清春は学校に向かった。