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07 国都

国都



雅雄は二人をみて、促す。


「さて、薫、帰るぞ」


「はい、雅雄さま、それじゃ勝男待っているわ」


勝男は二人が手をつないで離れていくのを見送るだけだった。


薫は時々振り返りながら山の端を曲がる。




ふっと気づくと屋敷の中だ。


屋敷の外から屋敷に入ったところだ。


屋敷から出て歩いていたはずなのに屋敷にいることに驚いた。


「なにが起きたの、あれは夢なの」


「薫は幼馴染の勝男に別れを言ってきてなかっただろう、だからちょっと寄り道

 をしただけだ」


「寄り道、あれは現実なの、勝男と話をしたのは」


「当然だ、確約もいただいてきた。」


「確約といっても、子供の約束」


「勇者の一諾だよ、彼は出世する、そして君を嫁さんにする。わたしは法外な身

 請け金をいただくだけだ」


「でも雅雄はそれまで私を育ててくれるの」


「もちろんその体で稼がせてもらうさ」


「でも彼には・・・・」


「その身がきれいなままでいたいのだろう、約束したのだから」


「ええ、その通りよ、でも娼館に売られた身では無理ね」


「それじゃ、莫大な見受け金はもらえないな。大損だ」


「それじゃ、どうするの」


「まあ、それは商売上の秘密でなにも薫が初めてじゃない。現大臣の奥方、万人

 長の奥方と他にも数人成功している」


「どういうことなの」


「雅楼の秘密といったところだ。財界・政界を裏からあやつる怖いところさ」


「あなたは、なにものなの」


「暇な老人といったところさ」


「・・・・・・」


「どうする、君が望めば現政権の重職の奥方にもぐりこませることも出来るけど」


「あなたの商売がわかったわ」


雅楼の裏の顔は人身を金持ちに売るところだと気付かされた薫だ。


「ほほう、みぬかれたか。感心だな、でどうするのだ」


「できれば勝男のお嫁さんになりたいです」


しかし、雅雄の言葉に縋るなら勝男が買主になってくれる。


今はその言葉に縋りたかった。


「それじゃ、気長に待つしかないな。彼が千人長になるのは22歳だから、あと

 11年、」


「そんな若くなれるの。というより判るの?」


「超能力といえばかっこいいかもしれんが実は占い」


「それってあたるの?」


「そのうちわかるさ」


そう答えると入ってきたばかりの門を再びくぐった。




そしてその日のうちに街に着く。


50Kmを無きがごとくだ。


次の町にもうすぐ着くと思った。


そんなとき、着いたのが目的地の白都というのは驚きの一言だ。


雅雄は街の入り口で順番待ちをしている人を無視する。


門番に挨拶をすると門番はなにも言わず二人を通してくれた。


顔だけで何も言わず通る雅雄の実力に驚くだけだ。




街に入ってからもしばらく歩く。


大きな街なので当然だ。


薫にとって初めてみる大都会だ。


その人の多さに驚く。


油断すれば、雅雄を見失ってしまいそう。


そして、この人ごみの中、唯一頼れるのが雅雄だ。


この時点、薫は自分が買われた身分だと忘れるほど雅雄に頼っていた。




街の活気のすごさも薫を圧倒する。


店先も田舎では信じられないほど多くの商品が並べられている。


そして、華やかに競い合っているのだ。


見るものすべてに目を奪われきょろきょろしていた。


特に目がいくのは服装と飾りの店だ。


田舎では見られないほどの衣装と飾りに目を奪われる。


すれ違う一般の女性でさえ田舎の金持ちより豪華に見える。


まさか、自分がそれらの者達から羨望の目で見られているとは気付かない薫だった。


薫の衣装はその街の最先端の衣装で綺麗に着こなしている薫は一際輝いていたからだ。




「すぐに見慣れるからそうあちこっちを見るな、田舎者とばれるぞ」


そういってたしなめられる。


そう言われても見るものすべて珍しい。


だから、ついつい目が泳いでしまうのだ。


やがて二人の目の前にひときわにぎやかな通りが現れた。


華やかな飾りに客引きが大勢で道行く人に声をかけていた。


店の中を見れば窓越しに美人がこちらに笑いかけている。


薫は将来の自分を見ているような気になった。




そのままどんどん歩いていくと一際大きな建物が現れた。


「あれが雅楼だ、薫がこれから働くところだ、覚悟はいいか」


そういって店の前までいく。


薫はその規模につばを飲み込み、のどを鳴らす。


スーパーしか見たことのないものが百貨店を初めて見たようなものだ。


次元の違うお店を目の前にして言葉を失った。




店の前につくと客引きの若衆が声をかけてくる。


「「雅雄様、おかえりなさい」」


みんなしんから雅雄の帰りを喜んでいるように見えた。


鬼のように店の者をこき使っているようには見えなかった。


店に入ると綺麗な女性たちは雅雄の顔をみるとうれしそうに笑いかけ


「おかえりなさい」


と歓迎しているではないか。


旅の途中で聞いた噂との違いに驚く。


噂どおりに人を使っているなら従業員は鬼のように嫌うはず。


だが、従業員たちはみんな心のそこから雅雄に従っているように見えた。



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