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06 幼馴染

幼馴染



次の日は予定通り目をさまし出発の準備をする。


清算の段階で宿屋の主人が挨拶にきた。


前の日の夜、強盗が入ったがお客様に被害はなかったかどうかをだ。


連日泊まっていた雅雄に確認の意味で声を掛けてきたのだ。


薫は気づかなかった。


しかし、強盗は全員中庭で倒れていたとのこと。


宿屋の方としては、誰が強盗を倒したのかわからない。


そのまま、役人が取り押さえていったのだ。


客にも内緒で処理されていた。




実は、前の日の夜、別の宿では皆殺しになっていた。


そして、ここの宿で犯人達は何者かに倒されていたという。


話を聞いた薫は運命というものを感じていた。


被害にあった一軒目の宿は最初に断られた宿だったからだ。


もし断られていなかったらその被害者に自分がなっていたのだ。




話を聞けばここらへんを荒らしてる凶悪なやつらということ。


普段は店などを襲い皆殺しにしていくということだ。


だから、手がかりが少なく賞金も凄い者たちだった。


結局捕らえたものもいないので宿屋が賞金をもらうことになった。


これも縁ということでお客さまのその日の宿泊費は無料であることを伝えにきたのだ。


宿の方は客の誰かが捕まえたと推測した。


その客がいなければ、宿のものを含めて皆殺しだったからだ。


宿としてはその日の泊り客全員を払っても余裕の賞金に謝礼の意味を込めたのだ。


雅雄はそれを聞いても淡々としていた。


二人は食事を済ませると旅立った。




薫は町を出ると当然お店のある白国首都の方向に向かう。


まだ50kmはあるので先は長いと思う。


そのため、急ぐ気配もなくのんびり歩く。


今までの旅がきつかっただけに楽な旅は楽しかった。


雅雄と話をしながらのんびり歩いていた。


少し寄り道する感じで屋敷のような所に入る。


別に休憩する間もなく屋敷から出た。


いつの間にか屋敷は消えていたので驚いた。


そして、見慣れたところにいることに気づく。


少し行けば村の入り口というところだ。


自分の目と正気を疑った。


5日かけて歩いてきたはずの道を半日?数時間で戻ってきたことになるのだ。


なにがおきたのか呆然としていると見慣れた男の子がこちらにくる。


思わず、「かつお」と声をだしていた。




呼びかけられた勝男は誰が呼んだのかわからないままこちらを見ている。


やがて、こちらの顔が判ったようだ。


「薫なのか、本当に薫なのか、見違えた」


そういって駆け寄ってくる。


二人は手をとりあって再会を喜ぶ。




「さて、お別れはそれぐらいでいいか、薫は村を去らなければならないので、挨

 拶をさせるため連れてきたのだけど」


勝男は雅雄のほうを見て


「どこへ、連れて行くんだ」


「白国、雅楼」


ただ一言いっただけだ。


だが勝男にはその一言で通じたようだ。


それほど有名な娼館ともいえる。


「そうか、もう会えないのかな?」


田舎の豪族程度では首都の高級娼館には行ける訳がない。


「そう悲観したものでもない、お前に会うだけの資格ができれば会わしてやるぞ」


「資格?」


「そうだな、白国千人長が最低条件だな」


「そんな、絶対無理だ」


「そうか、別にあきらめても構わないが、将来の嫁さんに特別にとっておいても

 いいのだぞ、ただしそれなりの金額になるからな、覚悟はいるぞ」


「かならず、迎えにいくから、大事にしてやってくれ」


「ほう、いいのか、そんなことを言っても」


「命に代えても」


薫の胸にこみあげてくるものがある。


しかし、静かに笑うだけだ。




百人長でさえこの村では有名人なのだ。


白国正規兵の千人長になることは不可能なのだ。


地方の城の百人長なら成れる可能性もある。


もっと大きな町でそこを束ねるようなものなら可能かもしれない。


まして勝男の上には次男の勝也かつやがいるのだ。


三男では単なる一兵士扱いだ。


この村の総括は勝也が行うので勝男はこの村では一人なのだ。


迎えにいくと言われも、「はいそうですか」とても言えるものではない。


勝男にはそんなことも判らない子供と思いたくなかった。


せめて後腐れないようにしっかり別れてほしかった。




「いい返事だ、期待してるぞ。だが今のままでは無暴だな、子供のわがままとし

 かいえない。」


雅雄の言うことが正しい。


子供のわがままというより夢といったほうがいい。


薫にはその程度も判らない勝男と思いたくもなかった。


「なにをいうか、活躍して這い上がってやる」


「その根性はいいが、死ぬだけだぞ、無理すれば」


「死ぬことをおそれはしない」


「死ねば彼女は地獄を見るのだぞ。それでもいいのか」


「それは・・」


ようやく勝男は言われた意味が判ったようだ。


生き抜くことも条件の一つだと言う意味に。


「ひとつアドバイスがあるが、聞くか」


「なにをすればいい」


「簡単なこと、無謀なことはしない、部下を大事にしろ」


「そんなの当たり前のこと」


「そうか、1人の部下を助けるため10人が危機になる時どちらをとる」


「決まってるではないか10人を助ける」


「だからそんなことを言ってるうちは出世はあきらめだな」


「どういう意味だ」


勝男は言われたことの意味が判らない。


単純に考えれば、一人のために残った10人が危なくなってしまうからだ。


そんなときは、犠牲の少ない方を選ぶのは当たり前のように感じる。




「簡単なこと、いつ残されて一人になるかわからない戦いに、数が少ないから見

 捨てる指揮官には誰もついてこない」


「それじゃ、残っているものまで殺すことになるじゃないか」


「だから、選択させることだ、死地に赴く場合は必ず部下に選択させる。その結

 果たった一人になっても行く事だ、それが出来れば千人長になることも可能だ、

 しり込みしていたらあきらめだな」


「よくわからないが覚えておくよ。そうならないことをいのるけど」


「いい返事だ、そうさせないことがいい指揮官だからな」


「薫、かならず迎えにいくから、待っていてくれ」


薫は夢に終わると思うがその言葉がうれしかった。


「うん、待ってる」


夢に終わると思うだけにこれが最後の別れと思い笑顔で別れた。



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