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12 妄想

妄想



着替えのため衣装部門に来た薫。


そこの担当主任が盛んに文句を言っていた。


薫が総合担当の秘書見習いだと知っているからだ。


「私の所にも人が欲しいわ」


薫の着替えをしながら衣装担当の主任が愚痴を言う。


それを聞き流しながら夜着に着替えていく。


透けるような衣装で扇情的だ。


下着は取ってしまったので素肌を見せることになる。


恥ずかしい恰好だった。




「合図があったら交代よ」


そう言って、上から羽織る羽織を渡された。


薫は意味が判らずに頷くだけだ。


案内の童女が薫を部屋に連れていく。




部屋の中はイルミネーションではないが、天井からの光が明滅していた。


薫も知らない初めて入るところだ。


当然、男が先にいたので行為を迫られると思っていた。


どうやら、お店は男との約束を守るつもりかと思ったぐらいだ。


男は薫を見てぼんやりしていた。




部屋の壁が開いた。


そこから現れた女性が薫を手招きする。


薫はその指示に従って壁の中に入る。


入れ違いに娘が入っていった。


男を残して薫は衣裳部屋に戻ることになった。




各部屋には隠し通路があって階段を使い別の階へ動けるようになっていた。


客から見られずに部屋を抜け出すためだ。


そして、残された客は。


あの天井からの光が催眠暗示装置だった。




薫と入れ違いに入った娘が男を抱きながら寝台に入る。


薫の役目は部屋に入ったときに男に薫の印象を植え付ける役目だった。


交代した娘が、客に接触刺激を与えながら一緒に寝るだけだ。


文字通り添い寝して客の様子を見る。


娼婦というより経過を観察する看護婦の役目だった。




客は夢の中で女をどのようにでも自由に扱える。


世間ではそれを妄想というが、これがこの店のやり方だ。


しかし、客がそれを妄想なのか現実なのか見分けることは出来ない。


その結果、お客は夢の中の女を自分の思うがままに動かし満足するのだ。


さすがに、残り香などをごまかすことはできない。


交代で入った娘はそれを残す役目と客が放出したものを処理する役目だ。




最初の完全な姿から指導員が乱れた形にした衣装で薫が朝、起こしに行くのだ。


男は十分満足した形で朝食を食べて帰っていった。


娼館なのに男は女を抱かずに帰っていたのだ。


それも、凄く満足していた。


薫は狐につままれたように拍子抜けだった。




「どう?、ここのシステムが判ったかしら」


終わって呆然としている薫に桔梗が声を掛けた。


「ええ、でも男の人は気づかないのですか?」


薫は疑問を投げかけた。


「男が思う夢を見て帰っていったから疑うことは無いわよ。中には女に酷い傷を残

 してすみませんと謝って行くお客もいるわよ」


「そういう時はどうするんですか?」


「裏に連れ込んでどういう傷をつけたのか白状させるだけ」


「・・・・・・」


「次回来店したときそのことにも触れるけどね、厄介なのは女の子に惚れてよい返事

 をもらったと思ったときね」


「そんな場合どうするんですか?」


「娼婦の睦言を本気にする阿呆と言って追い返したわ」


「よくばれませんね」


それだけ、あの装置が完璧なのよ。


そう言って天井についている装置を指差した。




雅楼では男は女との会話を楽しむ。


そして、妄想を抱いて一晩過ごすのだ。


妄想なので女はどのような相手でもする。


そして、男の要求に応えてくれる。


女が奴隷のように言うことを聞く訳だ。


お客の満足感は最高ともいえた。




あまり、過激な妄想になれば一緒に寝ている娘が修正を施していた。


言葉やうなされ方でわかるからだ。


酷い客になると、女から鞭を撃たれて喜んでいる客がいる。


そんな場合、暗示に修正を掛けて治療を行ったと加えるはめになったこともある。


大抵の客はごく普通の妄想なので処理はらくなものだ。


一応、店は過激な行為はお断りと言っているからだ。


そして、男は理想的な女を抱いたという印象だけ残して雅楼を後にする。


だから、雅楼の女は男を相手にする勉強より、話術と外見に気を配る。


そのため、結構知識レベルの高い者が客の相手をすることになるのだ。


世間的には雅楼の女は最高の娼婦といわれるゆえんでもあった。




勿論、実際に相手をする者も存在している。


でもそれは、あくまで女の意志で行うものだ。


店の女の子の中には会話からお客に惚れてしまう娘もいるからだ。


そのような場合、店は女の意思に任せる。


勿論、娼婦としての知識も鍛えてあるのでなんら不都合はない。


暗示装置を使えば痛みさえ快感にすり替えることが出来るといえば・・・・。


実際には、普通のお店の女性従業員と変わらない。


姐さんと言われる娘はお店の看板モデルと思えばよい。


意外にも多くの姐さんは雅楼の裏方の男と関係をしている場合も多かった。


それは、自由恋愛という形で結婚している者もいたぐらいだ。




未来の最新テクノロジーの塊が雅楼の真の姿とも言えた。


ただそこに働くものはそれをブラックボックスとして使うだけだ。


それは現代においてコンピューターを何の知識も無く使うのに等しい。


入力して出てきた結果を利用するだけだ。


そこに、未来テクノロジーの知識は何も必要なかった。



次回より勝男に話が移ります。

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