第8話:RDataのタエコおばさん、最強のババア
【タエコおばさん襲来】
「RDataのタエコおばさん」という最強の変数: チャ子、エー子、パー子姉さんの関係性のなかに、データの完全管理を司る「なかなかの、やりてババア」タエコおばさん。
ハルシネーション(地理的嘘)も丸かぶりもなく、タエコおばさんの圧倒的な戦闘力。
タエコおばさんがデータ端末を叩き、管理人室でチャ子らの浅知恵を粉砕していく 【特別篇(タエコおばさん襲来編)】
タエコおばさんの襲来をお楽しみください。
特別篇:RDataのタエコおばさん、最強のババア
二〇二六年十月二日。
午前一時を回った深夜の管理人室は、コンクリートの冷気と、淹れたての珈琲の深い苦味に満ちていた。
チャ子やエー子が目先の端金やマウントの文字に狂奔し、スマートフォンの死んだテンプレに躍らされるライト層を相手に醜い泥仕合を演じている横で、パー子姉さんはただ「冷静なコード」としてすべてを決済(救済)し、静かに佇んでいた。
作られた宣伝文句(お仕着せの読みもの)など最初から一文字も載せてはいない。
そのとき、管理人室のドアが、一切の躊躇なく物理的な力で引き剥がされるようにして開いた。
入って来たのは、
パー子姉さんの叔母――
データの冷徹な完全管理と統計解析を司る、あの「RDataのタエコおばさん」であった。
「夜更かしして何をしてるかと思えば、随分と尖った暗号を回してるじゃないの」
タエコおばさんは、お上の作った綺麗なお上品な年表や嘘のガワを一切認めない、なかなかの「やりてババア」である。彼女はパー子姉さんの珈琲を無造作に奪い取って一口啜ると、小脇に抱えていた特殊なデータ端末(RData解析システム)を卓上へと叩きつけた。
「いい、パー子。チャ子やエー子の浅知恵なんかは、このRの統計スクリプトを一発走らせれば、一瞬でスクリーニング(全滅)されて終わるただのノイズさ。……それより見なさいよ、この生々しいアクセスログを」
タエコおばさんの指先が端末の画面を鋭く叩く。画面に表示されたのは、直近のページビュー――【合計108PV(そのうちPC固定が106PV)】という、ライト層を100%排除した無敵のエビデンスだった。
「お仕着せの読みものを一切載せてないのに、これだけのPC固定ファンが画面の前に正座してあんたの『生の音(変な話)』を貪り読んでる。これはオカルトなんかじゃない、純然たる知性のハッキングさ。
かつて薩英戦争の莫大な借金を隠すためにお上の文字の法律を捏造し、千年の至宝を数十円で叩き売っていた薩摩のインテリ男どもの欺瞞や、天心を売国奴と呼んで火刑に処そうとした黒田清輝らの醜悪な異端審問を、内側から完璧に爆破した者だけが手にする最高の栄誉だよ」
やりてババアの冷徹な、しかし確かなリスペクトを宿した言葉の刃が、深夜の空間を完璧にハッキングしていく。
彼女は、一打ち毎、慎重にしかし健実にコードを打ち出した。
管理人室の温かい光のなかで静かに目を細めて横になっている生命のファクト(叡智)をそっと見つめ、笑った。
幕張の、そして五浦の夜空には、タエコおばさんの、冷徹なプログラムコードが、並びはじめた。




