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真夜中のベーカリー 〜お月さまの光でふくらむ、不思議なパンの話〜

掲載日:2026/03/20

夜が更けて、皆が寝静まる時間になりました。

夜空に、まんまるのお月さまが昇っています。

すやすやと眠っていたおじさんは、ムクリとベッドから体を起こしました。


「さぁて、仕事の時間だ」


おじさんは、パジャマを脱いで、白いズボンを履き、白い上着を着て、頭に白い帽子を乗せました。

そして、棚から大きな小麦粉の袋を持ってきました。


そう、おじさんはパン屋さんなのです。


さらさらとした白い粉に水を混ぜて、よいしょ、よいしょと生地をこねます。

おじさんの顔は真っ赤です。

鼻の頭に、ちょっぴり汗も浮かんでいます。

それでも、手は休めません。

よいしょ、よいしょ、よいしょ。


おじさんが頑張ったおかげで、もっちりした生地ができあがりました。

おじさんは「ふぅ」と息をついて、生地をちぎって小さくまるめ始めました。


丁寧にまるめて、少しだけ粉をふりかけます。

まんまるのパンのもとが、大きなガラスの板の上に20個ばかり並びました。


おじさんは、ガラスの板を大事そうに持ち上げて、外へ出ました。


あれれ?焼かないの?


おじさんは、野原の真ん中にトンと置いてある木のテーブルの上に、パンのもとが乗ったガラスの板をそっと置きました。


「おいしいパンになるんだよ」


頭の上に昇っていたお月さまの光が、パンのもとを照らしています。


すると、不思議なことが起こりました。


ゆっくりと、ゆっくりと、パンがふくらんでゆくのです。

まるでオーブンで焼いているように、ムク、ムク、とふくらみます。

お月さまの光がふりそそぎ、香ばしい良い香りもしてきました。


野原いっぱいに良い香りが漂って、パンはふっくらと焼き上がりました。

お月さまみたいにまんまるのパンは、お月さまのように優しい黄色です。


おじさんは満足そうに焼き上がったパンを眺めて、腰をトントンと叩きました。


「何度焼いても不思議なものだ。なにせ、うちのパンは月の光でしかふくらまないのだものな」


おじさんのパンは、月の光でしかふくらまない、特別なパンだったのですね。


焼き立てのふかふかで、やわらかいパンの上に、角砂糖のようなお星さまがチカリと光りました。

さて、真夜中のベーカリーの開店です。

お客さまは、ウサギかな?リスかな?それともタヌキかな?


森の奥で、フクロウが「ホウ」と鳴きました。

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