2.出自の真実
許しが入り、部屋に備え付けられている豪奢な扉を開ける。目線の先、部屋の中央には街を歩けば100人中100人全員が振り返りそうなほどの黒髪翠眼の超絶美形、、、マリンフォード王国第二王弟、フェリクス・メーア・マリンフォードがいた。
フェリクスは三人いる王弟の中でも特に優秀だと評判らしく、軍部の総司令官兼外交を担っている。妻である第二王弟妃、キャサリン妃は外交を司る伯爵家の娘だ。御本人も何カ国語も話せ、よく世界中を飛び回っている。
それが何だというのか。ルティアにとって、面倒で無茶振りをかましてくる嫌な上司には間違いなかった。
今度はなんの無茶を言われるのかと恐れを抱きつつ、無表情で部屋に入る。
「、、、、え?」
それも束の間、仮面は崩れ去った。なんの因果なのか、前世でも今世でも双子の兄となったルイス・ベルローズがいたのだ。
ルイス・ベルローズ。マリンフォード王国軍魔物討伐部第一連隊隊長で大佐。ルティアの双子の兄で十五歳。閃くヘーゼルブロンドの髪に、翡翠の瞳をした美少年。スラリとした長身は武術をしているとは思えないほど細い。
なぜ彼がここにいるのか。今は黒の大陸で魔物の討伐中ではなかったのか。思わず眉をひそめる。その心を読んだのか、ルイスが笑って答えた。
「殿下に呼び出されたんだ。今すぐ帰ってこいってね。あと、少しで終わったし、残りは部下に任せて帰ってきたよ。うちの部下は優秀だから問題ないさ」
なるほど、と納得する。フェリクスの無茶振りは今に始まったことではない。
「あのさ、なんで僕が呼び出したって説明すると納得するのさ」
「、、、恐れながら閣下、日頃の行いを振り返ってくださるとご自身でも納得なされるかと」
「そうですね。もしくはどうしてもお分かりになられなければ、俺達でなくとも、補佐官であらせられる方々にもお聞きなされたらいかがでしょうか」
「ちょっ、ルティアちゃん!!ルイスくん!!」
ルティアとルイスの容赦ない返しにフェリクスの側に控えていた補佐官が悲鳴と言う名の抗議の声を上げた。良くない、マズイ、非常にマズイ。嫌な予感しかしなかった。
「へえ、、、?どう思われているのかなぁ、、、面白そうな内容だなぁ???」
隣から聞こえてきた普通に生きていれば一生聞くとこなどないであろう魔王のごとく低い声とおどろおどろしいオーラに方が跳ね上がる。語尾を伸ばしているのがもっと怖い。
ギギギ、と擬音が聞こえそうなほどゆっくりと振り向くと、
「っ、ひぃぃぃぃぃぃっっっっっ!!??」
、、、、、魔王がいた。
しかもめちゃくちゃえがおじゃあああん!?なんで!?終わった!!!俺の人生終了!?妻と子だけはっっっ!!、と真っ青を通り越して真っ白になった補佐官が悲鳴を上げた。
補佐官の人生終了ゴングがなる発端となった当の最年少軍人二人組はどこ吹く風だ。殺気すら湧いてくるが、それどころではなかった。何しろこの魔お、、じゃない、王弟殿下は冷酷非情な死神とも言われている切れ者なのだ。この人に睨まれたらとりあえず死を覚悟したほうが良い。そのレベルで怖い通り越して恐い。
「、、、ていうのは冗談で本題に入ろうか」
いや、冗談きついて!!!!、と心のなかで突っ込む補佐官をよそに爆弾を落としまくる。
「実はね、君たちの出自がわかったんだ」
、、、どっかあああああああん!!
「ルティアとルイスの両親はローゼンベルク公爵と公爵夫人なんだ」
、、、どっかんどっかああああああああんん!!
「本名は、ルティアがルティアーヌ・ローゼンベルクでルイスがルーシャス・ローゼンベルク。三歳のときに行方不明になったと聞いている。詳しい資料はこの封筒に入っているよ。面会は明日だ。荷物はまとめてある。これからは軍人としての素性を隠して令嬢、令息としても生きていってもらいたい」
、、、どっかんどっかんどっかんどっかんどっかあああああああああああんん!!!!!
爆弾が戦場並に、、、いや戦場以上に破裂し部屋にいる全ての人間が被爆し、動けなくなった(主に思考が)。
、、、、え、なんて?てか、こんな大事なことこんな適当にサラッと言う??面会明日???早すぎん????心の準備は?????
ーー 部屋にいる全員(一人は除外)の思考が一致した瞬間だった。
補佐官……不憫っ!!




