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イザナミノミコト
帰っても、ご飯が貰えない。
台所には、冷えた匂いだけが残っている。
お母さんは宗教にハマってる。
お父さんが死んでから、変になった。
お母さんが帰って来なくなった。
時計の針だけが、夜を刻んでいた。
警察の人が家に来た。
低い声と、畳を踏む靴音。
お母さんが信仰していたのは、
良い神様の振りをした、悪い神様だったらしい。
祝福を受けた人は死んで、
悪い神様の力になったんだって。
(コロしてやる)
「はぁ……はぁ……」
喉が焼ける。
息を吸っても、空気が足りない。
「なんです!? 変な夢でも見ました?」
「……イザナミノミコト」
「え!? 有名な神様じゃないですか? それがどうしました?」
「……なんでもない」




