パワーアップ
パワーアップか……試しに一体化してみるか。
一瞬、空気が変わった。
踏み出した足が軽い。視界が澄み、風の流れが線のように見える。
「スピードは増したな。火力は……そこまででもないか。ナツ、台風の方は?」
「いきます」
ナツが息を深く吸い、腹の奥に意識を沈める。
次の瞬間、体内で渦が生まれた。
――来たな。
胸の内側を叩く圧。
一体化しているこちらにまで伝わる、圧縮された暴風の気配。
「おぉ……」
明らかに違う。
体内で形成されている台風の“密度”が、これまでとは段違いだ。
風が暴れているというより、押し潰そうとしてくる。
三十五秒後。
「……あー」
嫌な予感は当たった。
中心を保っていた渦が、じわじわと崩れていく。
力が逃げていく感覚。指の間から砂が零れるみたいだ。
「そこは変わらないんだな」
一体化が解け、空気が元に戻る。
「つ、疲れたぁ……」
ナツがその場に座り込む。
「台風の最大火力が上がった分、制御にももっと力が要るんですよ……」
「なるほどな」
顎に手を当てる。
「デメリットは据え置き、か」
短時間・一発限り。
制御不能になれば自滅。
……だが。
「それでも」
ナツを見る。
「体感だが、風神の祝福を受けてる奴よりは今の方が強い」
「ほんとですか?」
「ザコと戦った事はある。スピードも瞬間火力も、こっちが上だ」
「やったぁー!」
無邪気に笑う。
「あぁ……本当に凄いよ」
「えへへ」
その笑顔を見て、胸の奥が少しだけざわついた。
「凄いな……本当に俺は――」
「……そっち!!」




