昇進
「引っ越し?」
「あぁ……家賃高い所に引っ越す」
一瞬、言葉が止まる。
「え? そんなお金あるんですか?」
「この前の試合な、見物人多いんだわ」
何でもないことみたいに肩をすくめる。
「そよ風の神と契約した奴が、オオクニヌシの祝福を受けた中で最強に勝った。要するに昇進って訳だ」
「いいですね!!」
弾んだ声に、少しだけ口角が上がる。
「スサノオノミコトの討伐隊だがな」
「……え?」
「戦わねぇよ。そんな直ぐにはな」
言い切るようでいて、どこか現実的だ。
「降臨して来るのがいつかは分からない。数年前は撃退が精一杯だったらしい。神の時間感覚はバグってるからな。次いつ来るかも分からん」
「良かったぁ……」
胸を撫で下ろす。
「あぁ……その前に、昇進したんだ。やる事がある」
「何ですか? お祝いですか?」
「頭お花畑かよ」
「うぅ……じゃぁなんですか」
一拍。
「イザナミノミコトを殺す」
「はぁ!!! 出来る訳無いじゃ無いですか」
反射的に叫ぶ。
「やるんだよ」
声音は低く、冗談の余地は無い。
「被害は少ないが、殺害対象になってる筈だ。希望を出せば優遇して捜査に参加させて貰える。……そんだけの働きを、俺達はした」
「うぅ……」
「今更遅いからな」
視線を向ける。
「それに、お前かなり力増してるだろ?」
「……あれ? 本当だ? なんで?」
「そよ風の神がオオクニヌシに勝った様なもんだ」
即座に付け足す。
「全ッ然違うけどな」
それでも。
「だが、それがかなり噂になってる。警察内限定だがな。それが力になってる」
「やったー!」
「信仰じゃねぇ」
即座に切り捨てる。
「知られてる、しかも本人を、ってのがデカい」
少し間を置いて。
「……お祝いはしてやるよ。ナツ、何が良い」
「回らないお寿司ーー!」
即答。
「お前が信仰されない理由が分かったよ」




