訓練
訓練かぁ……
「嫌そうな顔しますね。成績、良いんですか?」
「あー、武器無しだから付喪神のナイフは使えない。つまりオオクニヌシの祝福を受けた奴と、神無しでタイマンだ。完全にアウェーだろ。だから嫌なんだよなぁ」
そう言いながら、無意識に手を握る。
指先が、ほんの少しだけ震えていた。
「今は私が居ますしね」
「ナツが居てもなぁ……」
訓練表を見る。
紙に印刷された名前を追った瞬間、胸の奥がひやりと冷えた。
「おーい、間違えてんぞ」
「間違えてませんよ?」
受付は淡々としている。
「オオクニヌシの祝福無しなので、弱い方との訓練でしたが、それでも負け無しじゃないですか? 名無しとは言え、神と契約したんです。なので――」
一拍置いて、続ける。
「オオクニヌシと契約された方の中で、一番強い方と対戦です」
「最悪……」
喉の奥で、小さく舌打ちする。
対戦が始まる。
「下位の連中とは言え、祝福持ちを倒した貴方と試合ですか」
相手は一回り大きい。
立っているだけで、床に重みが乗るのが分かる。
「そうらしいですね」
平静を装うが、口の中が乾いていた。
「よろしくお願いします」
「こちらこそ」
「ナツ、力を貸せ」
「はい!」
即答だった。
それが逆に、胸の奥を少しだけ刺す。
――頼るしかない。
試合開始。
相手が踏み込んだ瞬間、空気が変わった。
近接格闘。
速さじゃない。圧で押し潰すタイプだ。
腕を弾いた瞬間、骨まで衝撃が走る。
(重い……)
今までの相手は、貰った力に振り回されていた。
だが、こいつは違う。
祝福を――使いこなしている。
カウンターを入れ、距離を取る。
「案外、行けるんですね?」
「……バフで言えばな」
呼吸を整えながら、頭を回す。
スピードはこちら。
力は向こう。
つまり――
一発でも、貰えば終わる。




