表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ただ一人の為に  作者: 輝久実


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/11

守られるばかりの少女じゃない

柊平が「空っぽのデート」を繰り返していたツケは、意外な形で回ってきました。


ある日の午後、メテオ・ティアの拠点に、筋骨隆々の男が血相を変えて踏み込んできたのです。


「おい! 金井柊平はどこだ! 出てこい、この放蕩者が!」


男は町でも有名な力自慢の鍛冶職人で、先日柊平が一度だけデートした看板娘の兄でした。


「うちの妹を散々その気にさせておいて、二度目の誘いもなしにシカトたぁどういうつもりだ! 妹は部屋で泣いてんだぞ!しかも、他にも色んな女性に声をかけているそうじゃないか!」


柊平が奥から慌てて出てこようとしたその時、その前にスッと立ちふさがったのは、銀髪を揺らしたメイジでした。


「……騒がしいわね。ここはギルドの拠点よ。暴れるつもりなら、衛兵を呼ぶわ」


メイジの声は、驚くほど冷静で凛としていました。


「なんだ、このガキは! どけ! 俺はその軽薄男に一発食らわせなきゃ気が済まねぇんだ!」


男が怒りに任せて拳を振り上げ、威圧感を放ちます。しかし、メイジは一歩も引きませんでした。彼女の周囲の空気が、ピリピリと魔力で震え始めます。


「『ガキ』じゃないわ。私はメテオ・ティアの魔術師、メイジよ。……あなたの妹さんのことは気の毒だと思うけど、シュウ兄を責めるのは筋違いよ。彼はただ、自分に合う人を必死に探していただけ。それに応えられなかったのは、彼が不器用だからよ。でも、遊び半分で傷つけるような人じゃないことくらい、隣にいる私が一番よく知ってるわ」


メイジの瞳が、海のような鋭い水色に輝きます。


「これ以上シュウ兄を侮辱して、力ずくでどうにかしようとするなら……私が相手になるわ。あなたの自慢の筋肉が、私の魔法に耐えられるか試してみる?」


圧倒的な魔力のプレッシャーと、少女とは思えないその毅然とした態度に、男は気圧されてたじろぎました。


「……っ、ちっ! どいつもこいつも、魔術師様はこれだから……!」


男はメイジの気迫に負け、捨て台詞を吐いて逃げるように去っていきました。


静寂が戻った部屋で、柊平は呆然とメイジの背中を見つめていました。


「……メイジ」


メイジは肩の力を抜くと、ゆっくりと振り返りました。その顔には、先ほどの凛々しさはなく、いつもの「シュウ兄」を心配する少女の顔がありました。


「……もう、情けないわね。あんな風に怒鳴り込まれるようなデート、もう二度としないでよ」


柊平は、自分を守るために立ち上がったメイジの小さな背中が、いつの間にかとても大きく、頼もしくなっていることに気づきました。


「……ああ。悪かった。……助かったよ、メイジ」


柊平の手がメイジの頭に伸びかけましたが、彼はふと手を止めました。これまでのように「子供」として頭を撫でることに、説明のつかない「躊躇い」を感じたからです。


メイジを一人の女性として意識せざるを得ない、決定的な変化が、柊平の中に芽生え始めていました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ