師弟の絆
合同討伐の熱気が冷めやらぬ翌日、メテオ・ティアのメンバーは消耗した備品を補充するため、静かな森へと足を踏み入れました。
「シュウ兄、このギザギザの葉っぱで合ってるわよね?」
「ああ、正解だ。よく覚えてたな」
メイジは柊平に確認を取りながら、丁寧に薬草を摘み取っていきます。道中、空腹の魔獣が茂みから飛び出してきましたが、四人にとっては敵ではありません。ヤワンが防御し、柊平が牽制し、メイジが鋭い魔力の一撃で見事に撃退、ロアンがとどめを刺す。流れるような連携に、柊平も「成長したな」と目を細めました。
拠点に帰宅後、採取したばかりの薬草を使ってポーションの精製が始まりました。
これまでは柊平の助手として動いていたメイジですが、今日からは「独り立ち」のための訓練です。柊平はあえて手を出さず、一歩引いた場所で腕を組んで見守ります。
(……あ、そこ、煮詰めすぎだぞ)
喉まで出かかった言葉を飲み込みますが、メイジが手順を致命的に間違えそうになった時だけ、短く声をかけます。
「火を弱めろ。抽出液の色を見ろ」
「あ、……はい!」
メイジは真剣な表情で、繊細な魔力操作を繰り返しました。額にはうっすらと汗が浮かんでいます。やがて、澄んだ色をした数種類のポーションが完成し、小瓶に詰められました。
「終わった……!」
安堵するメイジの隣で、柊平は満足げに頷き、その銀髪の頭を大きな手でわしゃわしゃと撫でました。
「よくやったな、メイジ。上出来だ」
「……えへへ。ありがとう、シュウ兄」
褒められ慣れていないはずのメイジですが、柊平のその手の温かさに、頬を林檎のように赤く染めました。
その日の夕食。宿の食堂で並んで座り、温かいスープを啜っていると、メイジは無意識に柊平の横顔をじっと、熱く見つめてしまいました。
「……なんだよ。俺の顔に何か付いてるか?」
柊平が視線に気づいて顔を向けると、メイジは心臓が飛び出しそうになり、慌てて視線を泳がせました。
「な、なんでもないわよ! ……ただ、今日はありがとう。一人でポーションを作れるように、ちゃんと指導してくれたから……。そう言えば! シュウ兄がたまに作ってくれる、東方の料理がまた食べたいなあ、なんて……!」
必死に誤魔化したリクエストでしたが、柊平は少し困ったように眉を下げました。
「東方の料理か。あれ、調味料がもう切れかかってて、作るのも手間なんだよなあ……。でも、メイジがそんなに言うなら、何か作るか。何がいい?」
メイジは目を輝かせ、即座に答えました。
「カレーライス!」
あの独特の香りと、元気が湧いてくる不思議な味。柊平が「故郷の味」として大切にしている一品です。
「それに、私も手伝う! 作り方を覚えたいの。シュウ兄がいない時でも、私が作れるようになりたいから」
「……お前に教えたら、鍋を爆発させそうだけどな」
柊平はわざと意地悪く笑いましたが、メイジが
「もう!」
と膨れるのを見て、優しく笑い直しました。
「わかった。じゃあ、次の休みは二人で台所を占領するか。楽しみにしてろよ」
「うん、約束だよ!」
メイジは、柊平と同じ「味」を共有できる喜びを噛み締めながら、幸せな気持ちでスプーンを動かしました。




