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ただ一人の為に  作者: 輝久実


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合同討伐

メイジが『メテオ・ティア』に加入して2週間。かつてないほど大規模な魔物発生の報を受け、メテオ・ティアと『セイブライフ』による合同討伐が決定しました。


集合場所であるギルドの前に、柊平はいつもの軽い足取りで現れ、真琴に明るく声をかけました。


「真琴さん、お久しぶり! 相変わらずレイさんとアツアツのようで、俺は毎日枕を濡らしてますよ!」


「もう、金井さんったら……」


苦笑いする真琴の背後から、不意に鋭い視線が突き刺さりました。柊平の影から、銀髪を揺らした美少女が姿を現したからです。


「シュウ兄、お喋りはいいから早く行きましょう」


冷たく言い放つメイジを見て、セイブライフの面々は目を見開きました。


「金井、その子は……?」


レイルズが驚きを隠せずに尋ねます。


「ああ、俺の養い子のメイジです。俺の師匠の忘れ形でね。今年からメテオ・ティアに入ったんですよ」


「ええっ! こんな可愛い子がいたの!?」


とユーリが、そして


「ほう、柊平にも父親らしい一面があったのか」


とダリーが驚きながら、メイジを囲んで可愛がり始めました。メイジは他のメンバーには礼儀正しく振る舞いますが、真琴にだけは、挨拶もせずツンと顔を背けました。


合同討伐が始まると、真琴はメイジとの距離を縮めようと甲斐甲斐しく動きますが、メイジは露骨にツンケンした態度を崩しません。萎縮してしまった真琴の様子を見て、柊平は休憩中にメイジを岩陰に呼び出しました。


「メイジ、いい加減にしろ。真琴さんに失礼だろう」


「だって! あの人はシュウ兄を振った人なんだよ? シュウ兄を傷つけたのに、何事もなかったみたいに笑ってるのが許せない! シュウ兄はそれでいいの!?」


メイジは涙を浮かべて食ってかかりました。柊平は一瞬、言葉に詰まりましたが、静かに彼女の頭に手を置きました。


「大人には色々あるんだよ。……メイジ。お前が俺のために怒ってくれるのは、十分にわかったし、ありがたいと思ってる。でも、これ以上は困るんだ。やめてくれ」


「……わかったわよ。シュウ兄がそこまで言うなら」


メイジは納得のいかない様子で、唇を噛み締めながら頷きました。


討伐は、ダンジョンのより深い階層へと進みました。しかし、ロアンとレイルズ、ヤワンとダリーが前線で抑え、柊平、ユーリ、メイジ、そしてオールラウンダーに転じた真琴という、攻撃力の高い魔術師が4人も揃ったパーティにとって、深層の魔物も敵ではありませんでした。


特にメイジの放つ破壊的な広域魔法には、真琴もユーリも目を見開きました。


「すごいわ、メイジちゃん! その若さでこの出力、末恐ろしいわね!」


とユーリが手放しで褒め、真琴も


「本当に素晴らしい才能ですね……」


と感心します。


するとメイジは鼻息を荒くし、真琴を正面から見据えて言い放ちました。


「シュウ兄が毎日付きっきりで、よく教えてくれるからです。私はこれから益々伸びると思います。誰かさんと違って、シュウ兄の隣にずっといるつもりですから」


あからさまな「あてこすり」に、真琴はタジタジです。レイルズが困り果てて柊平に助けを求める視線を送りますが、柊平は顔を覆って首を振りました。


「……すまんレイさん。さっき影でちゃんと言ったんだけど、全然聞く耳を持ってくれなくてさ……」


ギルドでの換金を終え、夜は宿屋でミリヤムも交えた祝杯が上げられました。メイジはまだお酒が飲めないため、果実のソフトドリンクで参加です。


宴の席で、メイジはミリヤムが抱く赤ん坊に釘付けになりました。その小さな手を恐る恐るつつき、幸せそうに目を細めます。


「可愛い……私も、いつかこんな赤ちゃんが欲しいなあ」


メイジがふと漏らしたその言葉に、柊平がニヤニヤしながら口を挟みました。


「ははは、メイジにはまだ早いだろう。子供が子供をあやしてるようなもんだ。お前はまず、自分の寝相の悪さを直すのが先だな」


「……っ! シュウ兄のバカ!」


メイジが真っ赤になって怒る中、隣にいたロアンが「ガツン」と柊平の頭を叩きました。


「柊平、お前は本当にデリカシーがないな。乙女心ってものを少しは学べ」


「痛ってぇな! 俺は父親としてだな、こいつが変な男に騙されないように……!」


「はいはい、父親代わり。もう喋るな」


ロアンは柊平を黙らせると、むくれているメイジの肩を優しく叩きました。


「ごめんなメイジちゃん。こいつは戦うこと以外はサッパリなんだ。仕方ない父親代わりだと思って、許してやってくれ」


「……うん。ロアンさんは分かってくれるよね」


メイジはそう言いながら、頭を叩かれた場所を気にしている柊平を、怒りと愛しさが混ざった複雑な眼差しで見つめるのでした。

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