表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ただ一人の為に  作者: 輝久実


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/11

メイジの初仕事

メイジの『メテオ・ティア』としての初仕事は、森の街道を脅かす「アーマード・ライノ(装甲犀)」の群れの討伐でした。柊平はメイジのサポートをする事になりました。


「いいかメイジ、お前は後方で支援魔法を。危なくなったらすぐに俺の影に隠れろ」


「もう! 何度も言わないで! 私はシュウ兄みたいに、回復も攻撃も完璧にこなす魔術師になるんだから!」


メイジは柊平への対抗心から、彼が真琴に教えていた「魔力の微調整」を必死に模倣しようとします。しかし、目の前に巨大な犀の群れが迫ったその時、彼女の「本能」が叫びました。


「ダメだ、メイジ! 切り替えが遅い!」


柊平が叫び、身を挺して彼女の前に出ようとした瞬間。メイジの中で、繊細な制御の糸がぷつりと切れました。


「……ああっ、もう、じれったい!!」


メイジが杖を地面に叩きつけると、彼女の瞳が鮮やかな水色に発光しました。柊平の教えた技術とは真逆の、純度100%の破壊衝動。


「吹き飛んじゃえ!!」


放たれたのは、初級魔法のはずの『ウィンド・カッター』。しかしそれは、微風の刃などではなく、空気を切り裂く巨大な真空の嵐でした。


轟音と共に、街道の木々はなぎ倒され、硬い甲羅を誇ったアーマード・ライノたちは、戦う暇もなく遥か彼方まで消し飛ばされました。


沈黙が流れる中、更地になった森を見て柊平は顔を引き攣らせます。


「……メイジ。お前にオールラウンダーを禁じた理由、わかったか?」


「えっ……?」


「お前が『支援』だの『回復』だの気にして魔力を抑えるのは、大砲の火薬をスプーン一杯分だけ分けるようなもんだ。効率が悪すぎる。お前は敵の前に立って、全部消し去る。それがお前の、唯一にして最強の役割なんだよ」


柊平は「怖すぎるだろ……」と本音を飲み込みながら、呆然とするメイジの銀髪をガシガシと撫でました。


数日後。初仕事の報酬を手にしたメイジは、鼻歌を歌いながら街へ買い物に出かけました。柊平は「どうせ新しい魔道書か、可愛いリボンでも買うんだろう」と高を括っていました。


宿に戻った柊平を待ち受けていたのは、ドヤ顔のメイジでした。


「はい、これ! シュウ兄にプレゼント!」


「……なんだこれ」


渡されたのは、目がチカチカするような蛍光オレンジに、変な魚の模様が入ったアスコットタイ。そして、食べると舌が真っ青になるという「激甘ブルーベリー・キャンディ」の袋。


「この街で一番高い、オシャレなネクタイなんだから! これをつけて、真琴さんよりずっと可愛いパートナーを早く見つけなさいよね!」


メイジは顔を真っ赤にして叫ぶと、自分の部屋に逃げ帰って行きました。


柊平は、手の中の絶望的にセンスの悪いアスコットタイと、不気味な色の飴を見つめ、深いため息をつきました。


「……趣味、悪すぎんだろ」


そこへ、リーダーのヤワンとロアンが通りかかりました。


「おっ、柊平。なんだそのアスコットタイ。罰ゲームか?」


「……うるせえ。メイジが初給料で買ってくれたんだよ。最高にオシャレだろ?」


柊平は、文句を言いながらも、次の日の定例会議にその「魚柄の蛍光アスコットタイ」を堂々と締めて出席しました。


ロアンが


「お前、真琴さんに振られて頭がおかしくなったのか」


と冷やかしても、柊平は


「これは最先端のトレンドだ」


と言い張り、真っ青になった舌でキャンディを転がしながら、嬉しそうに笑っていました。


そんな柊平の背中を、メイジは扉の陰から眺め、少しだけ満足そうに、そしてもっと深い恋心を募らせながら微笑むのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ