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ただ一人の為に  作者: 輝久実


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柊平の異世界転移

金井柊平がこの世界に転移してきた当初、彼は絶望の中にいました。バイク事故の直後に放り出された異世界。そこで彼を拾ったのは、偏屈だが凄腕の老魔術師、ガルドスでした。


ガルドスは柊平の持つ「異世界の魔力回路」に興味を持ち、彼を弟子にします。ある日、ガルドスは書庫の奥から一冊の古びた本を取り出しました。


「これは、かつてお前と同じ『東方』から来た男が遺した、呪われた書だ」


その本は、なんと日本語で書かれていました。そこには、この世界の魔法体系を無視し、「魔力を圧縮・変換し、一人で全役割オールラウンダーをこなすための最適化理論」が記されていたのです。


柊平は、故郷の文字で綴られたその理論を貪るように読み、ガルドスの厳格な指導の下、独自の魔法スタイルを築き上げていきました。


転移から一年。師匠ガルドスは、村を襲った上位魔獣との死闘の末、命を落とします。


彼が最期に柊平に託したのは、孫のメイジでした。


メイジ(当時12歳): カールしたツインテールの銀髪に、吸い込まれるような水色の瞳を持つ少女。両親とは流行り病で早くに死別し、ガルドスだけが頼れる身寄りでした。


「柊平……お祖父様がいなくなっちゃった……」


泣きじゃくるメイジを抱きしめ、柊平は誓いました。「俺が、この子を一生守る」と。彼は自分の若さを捨て、メイジの「兄」であり「父」としての役割を背負うことになったのです。


それから三年。柊平は26歳になり、メテオ・ティアの主力メンバーとして名を馳せていました。

15歳になったメイジは、誰もが振り返るような美少女に成長していました。柊平は彼女を「可愛い娘」として接していましたが、多感な時期のメイジにとって、自分を守り育ててくれた柊平は、「憧れの異性」そのものでした。


メイジは、柊平が時折見せる「大人の男」の顔や、他の女性に向けられる視線に、密かに胸を痛めるようになります。


真琴の存在の裏側で、メイジは気が気ではありませんでした。柊平が「同胞を見つけた」と、上沢真琴に熱心にアプローチをしていたからです。


「シュウ兄、最近あの『心臓』の人につきっきりじゃない。……あんな、地味な人がいいの?」


柊平のいないところで、メイジは鏡の前で自分のツインテールをいじりながら、むくれていました。真琴に魔法を教える柊平の楽しそうな顔を見るたびに、メイジの心は嫉妬でかき乱されていたのです。

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