112話:幻虚
「私は、魔族だってことを」
え……?
アリアさんが魔族……?
そんなわけがない……!
これはきっと、何かの間違いのはず……!
「そんな、アリアさんが魔族なんて……。そんなわけないですよね!アリアさん!!!」
私は必死にアリアさんに言った。
「梨花ちゃん……。ごめん。これは事実なんだ」
彼女から放たれた言葉は、私の希望を打ち砕いた。
「私は、歳を重ねるにつれて、魔族の頃の記憶を朧げながらに思い出したの。でも、その頃は、私が魔族だっていう確証はなかったんだ。自分でも信じたくなかったしね」
アリアさんは、低い声で話を続けた。
「でも、あの時……それは確信に変わった」
「あの時って……?」
私は恐る恐る聞き返した。
「闇属性魔法を初めて学んで、使った時……私の右腕に黒い薔薇の紋様が浮かんだの。その紋様が何か気になって、ミレアさんと一緒に色々と調べた。そしたら……」
アリアさんの顔が徐々に暗くなっていった。
「それは、魔族の特徴だった。正確に言えば、闇属性魔法を使い慣れていない魔族に出る特徴なんだ。その時、私は魔族だということに気がついた」
そんな……
でも……
アリアさんが死神に乗っ取られた時に、アリアさんは初めて黒色の紋様が出たと言っていたはず……
じゃあ、あの時のアリアさんは、嘘をついたということ?
確かに……
あの時、アリアさんが魔族だとわかれば、新たな問題と誤解が生まれていた。
みんなを混乱させないため……
そして、みんなと冒険を続けるために、嘘をついたのだろう……
「そして、私は闇属性魔法を使いすぎると、完全に魔族になってしまう。完全に魔族になってしまったら、今とは別の人格になると思う」
「じゃあ、なんでさっき私たちを襲ったんですか!!!」
私は、大きな声で言った。
今まで、どの人生でも、アリアさんは本当のことを言わなかったという怒りと……
アリアさん自身が抱え込んでいたものに、気がつかなかった私への怒りがあったからだ。
「3日くらい前……私は、ウェンター女王が、この世界を滅ぼそうとしていることを知ったの。そして、ここに飛ばされた」
アリアさんが震える声で話を続けた。
「私が守ってきた国、そして人に裏切られ絶望した。そして、梨花ちゃんたちが来る少し前……私の目の前に、黒い球みたいなものが、突然目の前に現れたの。そして、その球はみるみる大きくなり、私を飲み込んだ……。気がついたら、私の意識は、その球に乗っ取られていたの。そして、魔族の力が暴走した……」
「球……?」
オメガちゃんが、何かを思い出すように言った。
「オメガちゃん。何か心当たりがあるの?」
私は、オメガちゃんに聞いた。
「いや……でも……あれは……。もう……」
オメガちゃんは、うわごとのように呟いていた。
オメガちゃんに、私の声は聞こえていないようだった。
「まさか……幻虚エネルギー……?そんな、ありえない……」
オメガちゃんは、やっとしっかり喋り出した。
「幻虚エネルギー……?」
アリアさんは、少し震える声で言った。
「魔力紛争が起こる、10年くらい前に流行った寄生虫みたいなものだよ。幻虚エネルギーは、心が弱っている人の元に現れ、精神を侵食する。でも……あれは、アリーネが封印したはず……」
「アリーネって……アリーネ・リンポス?」
「うん。でも、なんで……?封印されているはず……。まさか……!あいつ!!!」
オメガちゃんの顔が一気に強張った。
「梨花ちゃん!早く、女王を倒さないと!!!」
「え……?」
「今すぐにでもいい!!!早く行かなきゃ!!!」
「ちょ……!ちょっと待って!女王を倒すには、五獣の力がいるって……女王が!!!」
私は少し焦りながら言った。
「五獣の力……。もしかして、全属性の力がいるってこと!?」
「多分……」
「クソ!!!やられた!!!じゃあ、早く残りの五獣を倒して、力を奪いに行くよ!!!」
「奪いに行くって……どこに五獣がいるの……?」
「ちょっと待ってて!!!」
オメガちゃんは目を瞑った。
すぅぅぅぅぅぅ……
はぁぁぁぁぁぁ……
いつもより、オメガちゃんの息が荒かった。
すぅぅぅぅぅ……
はぁぁぁぁぁ……
「っ……!!!そんな……!!!」
オメガちゃんが目を開いて言った。
「どうかしたの……?」
「サンドーラ王国が……土の五獣の力で滅ぼされてる……」




