111話:騎士団長
「更衣室って、これかな……?」
私は、練習場の近くにあった小さな建物の中に入った。
苔むした外観とは裏腹に、中は意外にも綺麗だった。
「あった……!着替え!」
私は、ロッカーの上にあった、黒色の鍛錬着を手に取った。
銀色の薔薇の刺繍が入っている。
「これがオリジナルのウェンター王国鍛錬着……」
女王が作った王国の鍛錬着よりも、なんか……ガチっぽさがある……
しかも、色が逆だ。
でも、なんでわざわざ女王は、鍛錬着の色を変えたんだろう……?
そんなことを思っていたら……
バンッ……!!!
更衣室の扉が勢いよく開いた。
「はあ……はあ……!!!」
ドアの前で誰かが息を切らしていた。
私は、この息遣いだけで誰かが分かった。
それは、ウェンター王国騎士団長でもあり
私の恋人でもある
「あなたが……梨花ちゃんね……」
私は声の主のほうを向いた。
そこには、青い目をしたアリアさんが立っていた。
「ア……アリアさん……」
「初めまして……っていうのもおかしいかな……?じゃあ……また会えたね。梨花ちゃん」
「アリアさん!!!!!!」
私は、アリアさんの胸に飛び込んだ。
「ごめんなさい……。私、あなたと過ごした時の記憶がないの。目が覚めた時、青い髪の女の子……オメガちゃんにいろいろな話を聞いたんだ。それで、すぐに会わなきゃって思って、ここまで急いで来たの」
「いいんです!!!私との記憶がなくっても……!!!アリアさんが元に戻ってくれた……!それだけで……!私!!!私、とっても……!!!とっても嬉しいです!!!」
私は、アリアさんの胸の中で泣きながら言った。
「じゃあ、一旦オメガちゃんのところに戻りましょうか」
「はい!!!」
私は、アリアさんと一緒に、オメガちゃんのところまで戻った。
「あ!戻ってきた!もう、びっくりしたんだから。アリアちゃん、急に梨花ちゃんのところに行っちゃうんだもん」
オメガちゃんは少し戸惑いながら言った。
「でも、こうして元のアリアさんに戻ってくれてよかった!」
「それはそうだね。ただ……」
オメガちゃんの顔が一瞬曇った。
「ただ……?」
「単刀直入に聞くね。アリアちゃん」
オメガちゃんが、アリアさんのほうを向きながら言った。
「あなた。洗脳されてなかったでしょ?」
え……?
どういうこと……?
アリアさんが洗脳されてなかった……?
じゃあ、なんで……
なんで、私たちを攻撃したの……?
「うん。その通りだよ」
アリアさんが、真剣な声で答えた。
「やっぱり。あんな強力な洗脳をされたら、普通1週間は昏睡するはず……。なのに、すぐに目を覚ました」
オメガちゃんは、重い声で話をつづけた。
「しかも、アリアちゃん。あなた、私たちに何か隠してるよね?」
オメガちゃんが勘ぐるように言った。
あたりに緊張が走った。
私は、何も話についていけなかった。
「……。まあ、いつか誰かにばれると思ってたから、仕方ないか……」
アリアさんは、少し暗い顔で言った。
「私に前の記憶はないけど……でも多分、このことは言ってなかったと思う。あなた達は、私が拾われた子ってことは知ってる?」
そうえいば……
ミレアさんに拾われたって言ってた……
なんか森の中をさまよっていたとか……
「私は小さいころ、森をさまよっていたところを拾われた……。でも、誰の子なのか、なんで森をさまよっていたかは、その時はわからなかった。だけど……大人になるにつれて、少しずつ思い出してきたんだ」
アリアさんは、少し間をおいて言った。
その時のアリアさんの目は、確かに青かった。
だけど、どす黒く見えた。
「私は、魔族だってことを」




