106話:原型
「これって……。ウェンター王国……!?」
私は、オメガちゃんに担がれた状態で、地上を見下ろした。
そこには、ウェンター王国そのものが広がっていた。
ただ一つ違和感があった。
それは、誰一人として人がいなかったからだ。
「ここは、ウェンター王国の元となった国。いわば、オリジナルのウェンター王国だよ」
「オリジナル……?」
「ウェンター王国の女王……まあ、梨花は、この世界がプログラムだって言ってたでしょ。でも、正確にはそれは間違いなんだ」
私は話が追いつかなかった。
女王の言っていたことが間違い……?
私が理解をする間もなく、オメガちゃんが話を続けた。
「女王は、この世界を元に、プログラムを付け加えただけ……。付け加えたプログラムの内容は、Cシステム……つまり、今の梨花ちゃんと、世界のループ。そして、プログラムする前にあった国を元に、新たな国を世界に設置したの」
「ちょっと待って!女王はそのプログラムをいつ付け加えたの?」
「うーん……。それがあんまり覚えてないんだよね」
「え……?」
「いつの間にか世界に浸透していたって感じかな。しかも、このことに気がついたのは多分、私しかいないし。他の人はループすると同時に記憶が消されて、世界が巻き戻るのに、私だけ戻ってないんだ」
オメガちゃんだけが戻ってない……。
それは監視長だからなのだろうか?
それとも……
女王がわざとそうした?
でも、それはありえないか……
「それに、私は女王以外にプログラムを作った人がいると思うんだ」
「それは、なんで……?」
「考えてみて。だって、女王一人だけで、世界のルールを書き換えるようなことができると思う?おそらく、もう一人居るはず。そして、それは私が知っている人……」
「それは……誰?」
私がこう聞いた瞬間、オメガちゃんは一瞬苦い顔をした。
「それは、教えなーい!さ!アリアちゃんを探しに行くよ!」
オメガちゃんは、はぐらかすように笑って言い、城の前に着地した。
私はオメガちゃんの肩から降り、地に足をつけた。
「おそらく、アリアちゃんは目の前の城の王室にいるはず。城の中に魔物とか居るかもしれないから、武器だけは構えておいてね」
私と、オメガちゃんは、武器を構え、ゆっくりと城に入った。
城の中は驚くほど静かだった。
魔物……というか、生物がいるような気配がない。
私たちは、慎重な足取りで廊下を歩いた。
見慣れた廊下と景色のはずなのに、どこか異質に感じた。
コツッ……コツ……
私たちの足音だけが廊下に響く……
王室まであと少し……
コツッ……コツ……
「梨花ちゃん……止まって」
オメガちゃんが歩みを止め、私に言った。
「どうしたの?」
「目の前、見て」
私は目を凝らし、暗い廊下の先を見た。
そこには、微かな影があった。
「梨花ちゃん。武器をかまっ……!」
ビュン……!!!
オメガちゃんがそう言った瞬間、炎の玉が私たち目掛けて飛んできた。
「メビウス・プロテクター!!!!!!」
オメガちゃんは、一瞬で槍を盾に変え、炎から身を守った。
「あれ……?当たったと思ったのに……」
奥から声が聞こえた。
その声は、確かに聞いたことがある声だった。
だけど、私は聞いたことのない声にしたかった。
だって……その人は……
徐々に、影が近づいてくる。
「まあいいや!次は絶対殺すから!」
目の前には、金色の髪、細くすらっとした体型、そして胸がある。
「アリアさん……」
私の好きな人が立っていた。




