侵攻者、来る
ラギルの街でアルとリリスが足を踏み入れた冒険者たちの世界は、想像以上に刺激的で危険だった。多くの冒険者たちが、異能を駆使して数々の依頼をこなす中で、アルもまた、その技術を武器に名を上げていった。
だが、その日が来るまでは、まだ平穏な日常が続いていた。
アルが工房で新しい武器を試作していると、外から突然、騒がしい声が響いてきた。
「侵入者だ! 異世界の侵略者が現れたぞ!」
声が響き渡ったのは、町の広場からだった。アルはリリスと目を合わせると、すぐに身支度を整え、外に飛び出した。
町の中心広場には、異能者たちと街の住人たちが集まっていた。空に浮かぶ巨大な黒い影が、街を包み込んでいる。それはまさに、異世界からの侵略者の証だった。
「異能者部隊……!」
アルは空を見上げて呟いた。その巨大な影の正体は、地球から来た異能者部隊の飛行船だった。彼らは地球の政府から派遣され、異世界を征服するために送り込まれてきた。
「異能者部隊だと……」
リリスはその飛行船を見つめながら、震える声で言った。
「私たちの世界に、あんなものが来るなんて」
その言葉通り、異能者部隊の兵士たちが次々と降り立ち、街の中に足を踏み入れた。彼らは異世界の戦闘技術と、強力な異能を駆使して圧倒的な力を見せつけていた。
「こいつら……どうにかしないと、街が壊される!」
アルの目は鋭く光り、手にした武器をしっかりと握りしめた。
「でも、私たちの力だけでは……」
リリスが不安そうに言うと、アルは顔をしかめて答えた。
「このままじゃ、俺たちのような者が倒されちまう。だけど、諦めるわけにはいかない」
そんな中、異能者部隊の兵士がアルたちに気づき、向かってきた。
「貴様ら、異世界のゴミ共か」
兵士の言葉に、アルは表情を硬くする。だが、すぐに冷静さを取り戻し、前に出た。
「ゴミだと? 俺は、ゴミじゃない」
言葉と同時に、アルは地面にひざまずき、手を広げた。そこから、廃材を引き寄せるように動かし、瞬時にして新たな武器を作り上げる。
「これが俺の力だ。お前たちにわかるか?」
兵士はその武器を見て、冷ややかな笑みを浮かべる。
「その程度で俺に勝てると思っているのか?」
兵士は指を鳴らし、強力な雷撃を放つ。しかし、その雷撃はアルの武器によって反射され、周囲の空気が震えた。
「な……」
兵士は驚きの表情を浮かべ、すぐに態勢を整える。しかし、アルはすでに次の攻撃を準備していた。
「ゴミじゃない。素材だ。お前の力、俺が再構成してやる」
アルは新たな武器を錬成し、それを兵士に向けて投げた。武器はまるで流れ星のように飛び、兵士の足元で爆発を起こす。
「これが……俺の力だ」
その一撃で、兵士は膝をついて倒れる。アルは冷静にその場を見回し、次の攻撃を準備しようとした。
「アル、気をつけて!」
リリスの声が耳に入り、アルは振り返った。すると、遠くから一人の男が歩いてきているのが見えた。
その男は、アルの知っている人物だった。
「カイ……!」
アルの目が鋭くなった。彼のかつての親友、カイ=ヴェルハルトが、異能者部隊の一員として現れたのだ。
「お前、何をしている?」
カイは無表情でアルを見つめ、冷たく言った。
「異世界征服だ。これ以上、無駄な抵抗は止めろ」
「お前……どうしてこんなことを!」
アルは激怒し、拳を握りしめた。しかし、カイはまるでそれを予期していたかのように冷静な顔をして言った。
「お前にはわからないだろう。俺たちは、世界を変えるために戦っている。お前も、俺のように覚醒する時が来る」
「覚醒? そんなものいらない!」
アルは断固として答えると、すぐに武器を準備した。
だが、カイは一歩も動かず、ただ冷たく言った。
「無駄だ。お前の力では俺には勝てない」
その言葉と共に、カイの体から圧倒的なエネルギーが放たれた。彼の周囲の空間が歪み、雷のような力が渦巻いている。
「さあ、来い。お前にとっての最初の試練だ」
カイの言葉に、アルは深く息を吸い込み、静かに前へ進んだ。次の瞬間、激しい戦いが始まる――