無価値の証明、価値の証明
異世界の崩壊が加速する中、アルは最後の力を振り絞って立ち上がる。彼の目の前に広がるのは、破壊されつつあるゴミ山と、崩壊の兆しを見せる異世界の空。すべてが壊れ、無意味に見えるその光景の中で、アルは新たな決意を固めていた。
「この世界を救う……いや、もっと言えば、俺の力を証明しなければならない」
アルの言葉は、自らに対する決意の表れだった。何度も何度も自分を否定され、無能だと呼ばれた。だが今、彼の持つ異能《再構成》は、世界を変える力を秘めている。
「リリス、最後だ。俺には、これが最期の錬金になる」
リリスは目を見開きながらも、ゆっくりと頷いた。彼女の目には、アルの決意に対する信頼と、少しの不安が浮かんでいる。それでも、彼女はアルを支えるためにその場に立つことを選んだ。
「私はあなたを信じているわ、アル。あなたの力なら、きっとできる」
アルはリリスの言葉を胸に、周囲の廃材と破壊された世界の一部を集め始めた。それは、まさに異世界の「ゴミ」だ。地球から来た時、アルはこの世界を「ゴミだらけの異世界」と呼んでいた。だが、今そのゴミの中から、彼は新たな希望を見出そうとしていた。
「これが本当に、無価値だって言うのか?」
アルはゴーグルを取り、作業に没頭する。周囲に集められた素材を巧みに再構成し、巨大な塔のような構造物を作り上げていく。その作業は、時間を忘れさせるほどに集中し、彼の手から次々と形を成していった。
やがて、出来上がったのは「希望の塔」と呼べるべきものだった。それは、異世界の崩壊を防ぐために必要な力を秘めた装置のようにも見え、またアル自身の力を証明するためのシンボルのようでもあった。
「これで、世界を再構成するための礎ができた」
アルはそう呟き、リリスの方を見た。彼女はその塔に込められた力を見て、少し驚いたように目を見開いていた。
「これがあなたの力なの? まさかこんなにも大きなものを……」
「そうだ。これは、俺の力を証明するために必要な再構成だ。あらゆる無価値と思われたものを、価値あるものへと変える。俺は、この力を持って、世界を変えてみせる」
リリスはその言葉を聞きながら、アルに深い信頼を寄せるようになった。彼の力が、どんなに無価値だと思われたとしても、今こそその真価を発揮している。
「アル……あなたの力は、最初から無価値なんかじゃなかった。あなたがそれに気づくことができたから、私たちはここまで来られたのよ」
「ありがとう、リリス」
その言葉に、アルは微笑みを浮かべると、再び目を閉じ、錬金を始める。希望の塔は、次第に強力なエネルギーを放ち始め、空間に異常をもたらし始めた。
その瞬間、異世界の空が一変する。アルが作り上げた希望の塔が、崩壊しかけていた世界の歪みを修復し始めたのだ。異世界全体がその力に反応し、最初は小さな歪みから、やがてその効果が広がっていった。
「世界が……!」
リリスが驚きの声を上げると、アルもその変化に目を見張った。異世界の崩壊が止まり、空が晴れ、自然が息を吹き返していく様子が広がった。
「これが、俺の力だ」
アルはゆっくりと、しかし確信を持って言った。その言葉には、何の迷いもない。
そして、異世界の崩壊を防いだその瞬間、カイもまたその力に驚き、改心の意を表すように頭を垂れた。
「アル、お前の力……確かに、俺には到底及ばなかった」
カイは、その冷徹な目を持ちながらも、少しだけ弱気な表情を浮かべる。そして、彼はアルに向けて言った。
「お前の力で、世界を変えたんだな。俺は……それを認める」
アルはただ、静かに頷いた。その顔に浮かぶのは、勝利の笑みではなく、やり遂げた者の穏やかな表情だった。
「これで終わりだ。俺の異能が、無価値だと思われていたものを救う力を持っていることを証明できた」
アルはリリスを見つめながら、最後にこう告げる。
「新しい世界を作るのは、俺の力だけじゃない。みんなの力が集まってこそ、初めてこの世界は再構成されるんだ」
その言葉に、リリスは微笑みながら答えた。
「はい、アル。私も、あなたと共に歩むわ」
アルとリリス、そして新たに改心したカイ。彼らは、それぞれの力を持ち寄り、異世界と地球の融合を防ぎ、新たな未来への一歩を踏み出した。
<最後のメッセージ>
「無価値だと思われていたものにも、必ず価値がある」
アルはそう確信し、歩みを続けた。彼の持つ《再構成》という異能は、単なる「変換」や「創造」の力だけではない。それは、世界を再生し、救う力でもあった。
そして彼は新たな世界を作り上げるため、前に進むことを決して止めなかった――




