3 例外
今回の動画もいつも通りマルス•セラートが画面に向かって喋っているが、その顔の目元にはくまができていた。
「やぁ!みんな!元気にしてたか?今回は久しぶりに記録の紹介をしようと思う!」
マルスは机の下から書類の束を取り出すと、一番上の書類を取り出して、それ以外の書類を机の下に隠す。
「ジャジャーン!今回はこれを紹介しようと思う!」
マルスがカメラに向けた書類に記載されている写真には部屋の中にポツンと佇んでいるドア枠とドアが置いてあった。
「なんと今日はいつもと違って音声の記録もあるんだ!今回はそれも聞いていこうと思う!それじゃあ早速行くよ!」
マルスがそういうと、画面は切り替わり、収容されている物の紹介の画面に移り変わる。
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識別コード T∴T∴I∴
名前 よくある普通のドアとその枠
収容難易度 simplicity
説明
どこにでもあるドアとその枠です。特徴としては、驚異的な耐久力、詳細不明な空間へと繋がっている事が挙げられます。ドア自体のこれら以外の特徴は挙げられませんが、時折、ドアから生命体(以後、T∴T∴I∴αと表記)が現れる事があります。
空間について
ドアを開けた際に確認できる空間です。開いた側でしか観測できず、裏側からの観測では何も無い事が実験により判明しています。
ドアの奥には、トンネルのような空間が広がっており、出口などは見つかっておらず、トンネルの側面にある非常口には鍵がかかっています。
現在,空間内の実験は禁止されています。
T∴T∴I∴αについて
T∴T∴I∴αはドア内の空間に生息する四足歩行の生命体です。また、α以外にも、βやγなども生息することが実験により判明しております。生態としては生命体の中でも階級のような物が存在しており、γ←β←αの順で高くなっています。また、生命体の解剖実験により、驚異的な再生能力、肺や胃、一部の骨が存在しない事が判明しています。
T∴T∴I∴βについて
T∴T∴I∴βはドア内の空間に生息する四足歩行の生命体です。T∴T∴I∴αよりも数倍体格が大きく、強靭な皮膚を持っていると考えられます。また数匹のT∴T∴I∴αを連れていると考えられます。
T∴T∴I∴γについて
T∴T∴I∴γは半径3メートルほどのT∴T∴I∴αと同じ皮膚組織で構成された球体です。T∴T∴I∴γはT∴T∴I∴αやT∴T∴I∴βの肉片が変化して、できるのが判明しています。T∴T∴I∴γの生態は数時間かけてT∴T∴I∴αを排出するのを繰り返す事が判明してます。
収容方法
室内に設置された監視カメラでの監視を続けてください。また、T∴T∴I∴αがドアから出現した場合、直ちにランク4〜6の職員を派遣し、処理をした後に火炎放射器を使用して肉片の処理を行ってください。
発見場所
よくある普通のドアとその枠はギリシャの◾️◾️島での山中で発見されました。観光者にはモニュメントと思われていましたが、ドアの周辺で行方不明者が多発された事で発見されました。現在は近隣住民の処理なども完了しています。
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「なるほど。今回は生物ではなくドアとその枠なんだね。今まで紹介した二匹…いや。三匹の生物に比べたら少し変わってるね。」
マルスは眠たそうな目を開けて、話し続ける。
「それじゃあ今度は音声を聞いてみよう!」
画面はまた映り変わり、黒い背景に音声が流れながら白い字幕が出ると言う画面に変化した。
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ガチャガチャという何かをセットする音と共に音声は始まる。
「1 675824。現在の体調を教えてください。」
「ああ。今は…特に異常はない。」
音声は女性の声と1 675824と呼ばれる男性の声が聞こえる。
「では、ドアを開けてください。」
「了解した。」
ドアの蝶番の軋む音と共にドアの中に入っていった。
「空間内に入った。やけに空気が冷えてるな…」
「分かりました。では、そのまま真っ直ぐ進んでください。また、何か異変があった場合すぐに報告してください。」
「分かった。何か見つけた場合は、帰還してもいいか?」
1 675824の質問に女性は答えずに、黙っている。
「はいはい。歩けばいいんだろ?」
1 675824溜め息を吐いた後、歩き始める。トンネル内は1 675824の呼吸音と足跡が響くのが数分間続いている。
「聞こえてるか?」
「えぇ。聞こえてますよ。何か異常がありましたか?」
1 675824の歩みが止まり、少し荒かった呼吸が息を殺すように静かになる。
「何だ…あれは…」
「状況を説明してください。」
「数十m先に…よく分からん…とにかく生命体がいる。数は…四匹だ。リーダー格みたいなのが一匹いる。」
1 675824は女性に生命体の事を伝える。その瞬間リーダーと思われる生命体が咆哮を上げる。
「生命体がトンネルの奥に走っていってるが…後を追うか?」
「はい。そのまま歩み続けてください。」
「くそったれ!あの化け物たちが有効的なのを願うよ…」
1 675824は生命体達の後を追い始まるが、数分後、また1 675824は再び歩みを止める。
「ああ。クッソ。」
「状況を説明してください。」
女性は淡々と状況の説明を求める。
「生命体とに見た目をした…球体?みたいなのがある。」
喋っている瞬間、リーダーと思われる生命体が咆哮を上げる。
「まずい!」
1 675824は歩いてきた方向に向けて走り出す。それと同時に獣の走る音のような音も聞こえ始める。走ってる途中からガサゴソという音と共にマイクが地面にぶつかる。
『現在、この記録は部隊によって回収されています。また、1 675824の遺体は回収された際にT∴T∴I∴αがドアから出ましたが、現在は研究された後に破棄されました。』
音声は無機質なアナウンスと共に終了していた。
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マルスは神妙な顔持ちで話し始める。
「なるほどね。多分だけど今回の生命体達はもう出てこれないだろうね。施設は海に沈んでるから…いや。もしかしたらいるのかもしれないのか。」
マルスは音声の記録と書類を机の下にしまうと、目を抑える。
「関係ないんだけど、最近寝れないんだよね。なんか…常に誰かに見られてる気がするんだよね。まあ、編集早く終わるんだけど。」
マルスは弱音を吐くと,声色を変えて話し始める。
「うし!元気出してこ!話何回も変わって申し訳ないけど、今度ライブ配信をしようと思う!良かったらみんな来てくれ!それじゃ!」
マルスはライブ配信の予告をすると、いつものチャンネル登録の催促の画面に映り変わり動画は終わった