7.けんたの家族
「#日常の向こう側:朝霧の神社と猫耳の友人」シリーズは、普通の高校生活を送っていた主人公つとむが、ある日出会った謎めいた少女みおをきっかけに、異世界と交わる物語です。みおが案内する先は、現実の裏に隠された不思議な場所、ディスガイズと呼ばれる存在がひっそりと生きる世界。つとむは、人とディスガイズの境界線を越え、様々な困難や冒険を通して自分と向き合いながら、仲間たちと共に問題を解決していきます。シリーズは、迷子の犬のディスガイズや、大切なものを探すウサギのしおりなど、日常に潜む小さな奇跡や、不思議な出来事を通じて、人と異形の存在がどのように共存し、支え合うかを描いています。そして、つとむ自身もまた、隠された真実や自分の役割に向き合うことで、成長していく物語です。毎日のように繰り返される日常の中に潜む非日常が、このシリーズの中心テーマとなっています。
みおとつとむはお礼を言い、けんたの家に上がる。けんたの母親はリビングに二人を案内し、ジュースとお菓子を差し出した。お菓子をつまみながら、つとむは部屋の隅に飾られた一枚の写真に目を留めた。その写真には、けんたとその両親が森の中の家の前で笑っている姿が写っていた。つとむは感心したようにその写真を指差す。「けんた君、この写真、すごく良いね。」けんたは少し嬉しそうに微笑んだが、どこか曇った表情を見せた。「うん、そうでしょ。……また、あの家に帰りたいな。」けんたの母親はその言葉に少し困ったような顔をして、優しくけんたをたしなめた。「こら、けんた。その話はしないの。」みおはその雰囲気を察して、話題を変えようとした。「こっちはお父さん?かっこいいね。」けんたは少し明るくなって、父親のことを話し始める。「そう、すごく優しくてかっこいいんだ。」
しかし、けんたの表情はまた暗くなった。みおは不自然さを感じ、けんたの母親にそれとなく尋ねた。「旦那さんは、今どちらに?」みおがけんたの父親について尋ねると、けんたの母親は少し動揺しながら「ちょっと、けんた、自分の部屋に行って荷解きしてきなさい。まだ、終わってないでしょ。」とけんたを自分の部屋に行かせた。「分かったよ。」けんたはいやいや、自分の部屋に向かった。
「すいません、けんたの父は実は……夫は行方不明なんです。けんたには仕事で海外に行っていると伝えていますが。」けんたの母親は、重い雰囲気で話した。「そうなんですね。」つとむは驚いたが、言葉を選びながら返事をした。「すみません、突然聞いてしまって。」みおも申し訳なさそうに頭を下げた。「いえいえ、気にしないでください。それに、同じディスガイズなら分かりますよね。私たちは人間に見つからないように生活しているけれど、夫は人間の仕事に関わっていて……。先月、夫の置き手紙があって、私たちの家が危険だと知らされたんです。それで、私たちは人間に紛れる道を選んだんです。」けんたの母親は悲しげに首を振った。けんたの母親は深刻な顔をして話す。みおはけんたの母親の不安を感じ取り、助けを提案した。「そうなんですね。もし困ったことがあったり危険だと思ったときは、朝霧の神社に来てください。私たちの事務所があります。それと、けんた君のお父さんがどんな仕事をしていたのか、何か知っていることがあれば教えていただけますか?」「分かりました。ありがとうございます。それと……(けんたの母親はみおに知っている限りの情報を伝えた)。これが私の知っていること全てです。」けんたの母親はみおの提案に感謝しながら、知っている限りの情報を話してくれた。「ありがとうございます。」みおは真剣に話を聞きながら、感謝の意を示した。そのとき、けんたが自分の部屋から戻ってきた。「お母さん!終わったよ。」けんたは元気よく母親に声をかける。けんたの母親はにっこりと笑って、けんたを迎えた。「整理できたのね。じゃあ、今から晩ご飯の用意するから、机の上を片付けて。お二人も食べていってくださいね。」つとむはけんたの母親の優しさに触れ、嬉しそうに感謝の言葉を述べた。「ねぇ、これ運ぶの手伝って。」けんたは無邪気にみおに声をかけた。「うん、どこに持っていくの?」みおは微笑んで応じた。賑やかな雰囲気が食卓を彩る。和やかな時間の中で、けんたとその家族との絆を感じながら、つとむとみおは初めての依頼を無事に完了した。
その日の夜、朝霧の神社にある事務所には灯りが点っていた。みおは一人、資料とパソコンを前に真剣な顔で調べ物をしている。「やっぱり……調べてみよう。」
彼女の視線の先には、小さな額縁に飾られた家族写真が置かれていた。写真の中には、みおの両親と小さな彼女が、笑顔で映っていた。どこかけんたの家族写真と重なるものを感じたみおは、新たな決意を胸に抱く。
こうして、つとむとみおは新たな一歩を踏み出したのだった。
あとがき
この物語を最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
物語を通して、主人公のつとむが日常の中に潜む非日常に出会い、新たな冒険へと踏み出す姿を描きました。彼の孤独な朝から始まり、みおやとうかとの出会いを通して変わっていく日々は、私たち自身の人生の中にも共鳴する部分があるのではないかと思います。
つとむの物語は、一見普通に見える日常が、少しの視点の違いや誰かとの出会いによって鮮やかに彩られることを教えてくれます。そして、未知の世界や不思議な出来事が彼を待ち受けているように、私たちの人生にもいつどんな瞬間に変化が訪れるか分かりません。この物語を通して、読者の皆さんにもそんな新たな発見や冒険心を感じてもらえたなら、これ以上嬉しいことはありません。
また、みおやとうか、けんたといったキャラクターたちは、つとむの成長を支えながらもそれぞれの物語を秘めています。ディスガイズという存在が何を象徴するのか、そして彼らの生きる世界にどんな秘密が隠されているのか、これからの展開で少しずつ明らかにしていきたいと考えています。
つとむが出会う日々の小さな出来事が、彼の心にどんな変化をもたらしていくのか、そして彼らがどのようにして自分たちの世界と向き合っていくのか――続く物語の中でさらに深く探求していく予定です。
最後になりますが、この物語を通じて、少しでも皆さんの日常に新たな視点や心の彩りを加えることができたのなら幸いです。これからも、つとむたちの物語を見守っていただければと思います。
ありがとうございました。