表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/21

6.迷子のけんたからの依頼

「#日常の向こう側:朝霧の神社と猫耳の友人」シリーズは、普通の高校生活を送っていた主人公つとむが、ある日出会った謎めいた少女みおをきっかけに、異世界と交わる物語です。みおが案内する先は、現実の裏に隠された不思議な場所、ディスガイズと呼ばれる存在がひっそりと生きる世界。つとむは、人とディスガイズの境界線を越え、様々な困難や冒険を通して自分と向き合いながら、仲間たちと共に問題を解決していきます。シリーズは、迷子の犬のディスガイズや、大切なものを探すウサギのしおりなど、日常に潜む小さな奇跡や、不思議な出来事を通じて、人と異形の存在がどのように共存し、支え合うかを描いています。そして、つとむ自身もまた、隠された真実や自分の役割に向き合うことで、成長していく物語です。毎日のように繰り返される日常の中に潜む非日常が、このシリーズの中心テーマとなっています。

けんたはその言葉に少し安心した様子で話し始めた。「僕ね、お母さんとこの町に最近引っ越してきたんだ。でも、ちょっと探検してみようと思って家を出たら、帰り道が分からなくなっちゃって……」けんたの声が震え、彼は鼻をすする。つとむは慌てて言った。「それは大変だ!早くお家を探そう。」しかしみおは冷静だった。「そうだね。でも、少し落ち着こう。けんた君、どんなお家に住んでいるの?」けんたはしばらく考え込んだ後、ぽつりと言った。「うーん、わからない。」「そっか……じゃあ、家からここまでどんな道を通ってきたの?例えば、目立つポストとか標識はなかった?」みおは穏やかに尋ねた。けんたは再び考え込み、ゆっくりと答えた。「黄色い壁の家があったかも。それから、いろんな色の花が咲いている家もあった!」「それだ!」みおは嬉しそうに声を上げた。「じゃあ、その家を探そう。どっちから来たの?」けんたは、小学校のある方向を指さして、「たぶん、こっち。」と答えた。三人はその方向に向かって歩き出す。

「けんた君は、どこから引っ越してきたの?」つとむが優しく尋ねると、けんたは少し明るい表情になった。「それはね、すっごく綺麗な森なんだ。僕たちが家の周りを花で飾ったりしてたんだよ。」けんたは懐かしそうに語る。「素敵な場所だったんだね。でも、どうしてこんな住宅街に引っ越してきたの?」つとむの何気ない質問に、けんたの表情が曇った。みおがすかさずフォローした。「良い場所だけど、小学校に通うのは大変だったりするんだよね、きっと。」「うん、そうなんだ。でも、あんなことがなければ僕は残りたかった……」けんたは小さな声でつぶやいた。その言葉に、みおとつとむは一瞬言葉を失った。

しばらく歩くと、けんたが急に「あっ!」と声を上げた。「あの家だよ!」彼が指さす方には、黄色い壁の家が見えた。「本当だ、よく見つけたね!」みおは喜びながら言った。「じゃあ、ここからどっちかな?」つとむがさらに尋ねると、けんたは少し困った顔をした。「うーん、どこかに目印があれば……」

「けんた君、その時の花の匂いを覚えてる?」みおが突然尋ねた。「うん、覚えてるよ。でも、どうして?」けんたが不思議そうに聞き返す。「その匂いを追いかけていこう!」みおは自信たっぷりに言った。その瞬間、けんたは何かを閃いたように鼻を手で擦り、次の瞬間、彼の鼻が犬のように変わった。周りの空気を嗅ぎ始めると、けんたは確信に満ちた声で言った。「こっちだよ!早く行こう!」

「けんた君、犬のディスガイズだったんだね!」つとむは驚いて言った。「そう!その特徴を生かせると思ったんだ!」みおは笑顔で答えた。三人はけんたの導きに従い、家の匂いを追いながら、再び走り出した。

住宅街を走り続けると、つとむたちはやがて色とりどりの花が咲く家の前にたどり着いた。赤や青、緑、黄色などの花が咲き乱れるその家の前には、けんたが指さしていた花壇があった。つとむは目を輝かせながら、息を弾ませて立ち止まった。

「すごい、こんなにたくさんお花が咲いてる。」みおも、けんたに続いてその家を眺める。「本当にすごく綺麗だね。」けんたは少し誇らしげに、でもどこか寂しげに微笑んだ。「すごいでしょ。僕の前の家もこんなに綺麗な花だらけだったんだ。」けんたの言葉に、みおとつとむはしばらく花に見入っていた。そのとき、背後からけんたの名前を呼ぶ声が響いた。「けんた!」慌てて振り向くと、そこにはけんたの母親がいた。心配そうな表情で、涙をこらえるようにけんたを抱きしめる。「けんた!どこに行ってたの?心配したんだからね。」けんたは母親に駆け寄り、抱きつく。けんたの母親はその様子を見て安心したものの、けんたの鼻の異変に気づいた。「けんた、ちょっと何してるの!?」けんたは鼻が犬のように変わっていることを指摘され、慌てて手で覆った。「ごめんなさい。でも、この人たちに助けてもらったんだ。」けんたの母親はつとむとみおに不安な視線を向ける。みおは優しい笑みを浮かべ、けんたの母親に声をかけた。「私たちは、皆さんのお助けをしているんです。猫の手神社のお助け屋をご存じですか?それに、私も同じディスガイズです。」そう言ってみおは頭の上に手をかざし、猫耳を見せた。つとむは驚いて目を見開いた。「みおさんもディスガイズだったんだ!」けんたの母親はその光景に安堵の表情を浮かべ、みおとつとむを家に招き入れた。「そうだったんですね。ありがとうございます。よかったら、お家で休んでいってください。」

あとがき

この物語を最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

物語を通して、主人公のつとむが日常の中に潜む非日常に出会い、新たな冒険へと踏み出す姿を描きました。彼の孤独な朝から始まり、みおやとうかとの出会いを通して変わっていく日々は、私たち自身の人生の中にも共鳴する部分があるのではないかと思います。

つとむの物語は、一見普通に見える日常が、少しの視点の違いや誰かとの出会いによって鮮やかに彩られることを教えてくれます。そして、未知の世界や不思議な出来事が彼を待ち受けているように、私たちの人生にもいつどんな瞬間に変化が訪れるか分かりません。この物語を通して、読者の皆さんにもそんな新たな発見や冒険心を感じてもらえたなら、これ以上嬉しいことはありません。

また、みおやとうか、けんたといったキャラクターたちは、つとむの成長を支えながらもそれぞれの物語を秘めています。ディスガイズという存在が何を象徴するのか、そして彼らの生きる世界にどんな秘密が隠されているのか、これからの展開で少しずつ明らかにしていきたいと考えています。

つとむが出会う日々の小さな出来事が、彼の心にどんな変化をもたらしていくのか、そして彼らがどのようにして自分たちの世界と向き合っていくのか――続く物語の中でさらに深く探求していく予定です。

最後になりますが、この物語を通じて、少しでも皆さんの日常に新たな視点や心の彩りを加えることができたのなら幸いです。これからも、つとむたちの物語を見守っていただければと思います。

ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ