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16.レンの依頼と霧ヶ岳の薬草探し

私たちの日常は、一見すると平凡で変わり映えのしないものかもしれません。朝目覚めて学校や職場に向かい、決まりきったルーティンの中で一日を過ごす。けれども、その「日常」の裏側には、私たちが知らない不思議な世界が広がっているかもしれません。

本作『日常の向こう側:朝霧の神社と猫耳の友人』は、そんな日常と非日常が交わる瞬間を描いた物語です。主人公・つとむは、普通の高校生として何気ない毎日を送っていました。しかし、ある朝、怪我をした猫を助けたことをきっかけに、彼の世界は一変します。猫耳を持つ不思議な少女・みおとの出会い、そしてディスガイズという存在との関わりが、つとむの日常に新たな彩りを加えていきます。

この物語を通じて、私は読者の皆さんに「見えないものの存在」や「日常の裏に隠れた非日常」に対する新たな視点を提供したいと考えています。私たちが普段当たり前だと思っている世界の裏には、無数の秘密や冒険が潜んでいるのかもしれません。そして、その秘密に気づくことで、私たち自身の日常もまた豊かに、そして鮮やかに変わっていくでしょう。

つとむと共に、日常の向こう側に広がる未知の世界を探求する旅に出かけてみませんか?彼の物語を通じて、皆さん自身の心の中に眠る冒険心を呼び覚ますきっかけとなれば幸いです。

それでは、つとむの冒険の始まりにページをめくりましょう。

夏が近づき、汗ばむ陽気が続くある日の放課後。事務所には、つとむ、みお、とうかが揃っていた。「最近は依頼がないね。」みおが、少し退屈そうにつぶやく。「まぁ、依頼がないってことは、みんな平和ってことじゃないの?」つとむが軽く返す。「そういえば、先週設置した相談箱、確認しましたか?」とうかが突然思い出したように問いかけた。「忘れてた!ちょっと見てくる!」と言うやいなや、みおは外に走り出ていく。少しして、みおが小さな紙を手に走って戻ってきた。「ねぇ!相談箱に一件入ってたよ!」「どんな依頼?」つとむが興味津々で訊ねる。「確認しましょう。」とうかが静かに答え、みおが机の上にその紙を広げた。


依頼内容には、こう書かれていた。

「僕たちのお母さんを助けたいです。一緒にある薬草を探してください。いつもお昼くらいにこの神社にお参りしています。レン」


「レン君って名前みたいだね?」みおが呟く。とうかが時計を確認する。「もうすぐお昼だから、たぶん今来てるかもしれないね。」3人は急いで事務所を飛び出し、神社の賽銭箱の前へ向かった。そこには、小学生くらいの男の子が真剣にお祈りをしていた。近づくと、つとむのペンダントが光り始める。「みお、もしかして……?」つとむが言うと、みおが頷いて、男の子に声をかけた。「ねぇ、君、レン君?」男の子は驚いた顔で振り返り、3人を見つめた。「うん。お姉ちゃんたちは誰?」

「私たちは、君が入れてくれた相談箱を設置した…えっと………ちょっと待ってて。2人ともちょっと集まって。」

みおは戸惑いつとむととうかを呼ぶ。「ねぇ、私たちって何なの?」2人に問いかける。「えっ?」急に聞かれ驚くつとむ。「そういえば、私たちの名前は何なのでしょう?」とうかも同じように疑問に思う。「う~ん。例えば、人とディスガイズの両方を手助けするって意味で〈霧のリンクハンド〉とかどう?」みおは考え込んだ後、一つの案をあげる。

「良いじゃん。それにしよう。」賛同するつとむ。「そうしましょう。」とうかも賛同する。名前が決まり、みおは、レンの方に振り返る。「レン君ごめんね。私たちは、ディスガイズや人の手助けをしている。〈霧のリンクハンド〉って言うの。それで、相談というか依頼内容を詳しく聞かせてくれる?。」みおが少し恥ずかしそうに答える。レンは少し迷った後、頷いて話し始めた。「うん。お母さんが昔から病気でずっと家にいるんだ。おばあちゃんのお家で過ごしてることが多いんだけど、最近、この絵本を見つけたんだ。それに、何でも治せる薬草があるって書いてあって……僕、それを見つければお母さんが元気になるかもしれないって思ったんだ。」そう言って、レンは絵本を机に置いた。「この絵本、すごく古いね。」とうかが驚きの声を上げる。つとむは小声でみおに囁く。「何でも治せる薬草なんて実在するのかな?」その間、みおは絵本をめくっていた。そして、あるページに目を留めた。「ねぇ、これ見て。『霧ヶ岳』って、この町の裏にある山だよね?」とうかは頷きながら、「確かにそうですね。それに、裏表紙に書いてある鶴田っていう名前……どこかで聞いたことがあるような……」とうかは急に何か思い出したようにパソコンに向かい、検索を始めた。「他にも何か町との繋がりがあるかもしれない。ちょっと探してみて。」つとむが言った。「うん、探してみる。」みおは絵本をめくり始める。つとむはレンにジュースを差し出しながら、ふと尋ねた。「ところで、レン君はこの町で生まれたの?」レンはジュースを受け取りながら答えた。「うん。ずっとこの町で暮らしてるよ。」「この町のこと、好き?」つとむが聞くと、レンは少し迷いながら答えた。「うーん、どうだろう……でも、お母さんが元気になったら、ディスガイズだけが住む町に引っ越すんだ。」「そんな町があるんだ?」つとむは驚いた。「うん。お母さんが言ってたよ。それに絵本にも描いてあるんだ、『特別な者たちの夢の巣』って。」みおがそのページを開き、「これのことかな?確かに描いてある。それに、この女性……女神様に似てる!」つとむが絵本を覗き込み、「確かに!」と頷いた。みおは真剣な表情で言った。「この絵本はディスガイズやこの町と深く関係があるんじゃない?。」その時、とうかが突然大きな声を出して立ち上がった。「分かりました!ちょっと、聞いてください。」

パソコンを持ちながら、とうかはつとむたちの元に戻ってきた。「この絵本の作者、鶴田って名字なんですが、この町の多くの土地を所有している大地主と同じ名字なんです。この神社の土地も、もともとは鶴田さんの所有だったんです。」「それが何か関係あるの?」みおが尋ねる。「それだけじゃなくて、鶴田さんの家は霧ヶ岳の麓にあって、代々薬草を扱う家系だったことが分かりました。つまり、絵本に描かれている薬草の話が史実かもしれないんです!」「それなら、薬草の存在も本物かもしれないね。」つとむが頷いた。みおは決意を固めて言った。「よし、探そう!その薬草を!」「本当に?」レンはつとむを見上げる。「もちろん。私たちはこの依頼を引き受けるよ。」みおが優しく微笑むと、レンは安心したように頷いた。「ありがとうございます!」レンはつとむたちに感謝の言葉を述べた。「まずは、鶴田さんの家に行ってみよう。」つとむが提案する。みおも頷き、「そうだね。レン君も一緒に行く?」「うん、僕も行きたい。お母さんのためだから。」

「よし、じゃあ行こう!」みおが元気に声を上げ、とうかに鶴田さんの住所を確認した。「私はもう少しここで調べておきますね。」とうかが言い、つとむたちは鶴田家に向かうため、事務所を後にした。


この物語を最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

物語を通して、主人公のつとむが日常の中に潜む非日常に出会い、新たな冒険へと踏み出す姿を描きました。彼の孤独な朝から始まり、みおやとうかとの出会いを通して変わっていく日々は、私たち自身の人生の中にも共鳴する部分があるのではないかと思います。

つとむの物語は、一見普通に見える日常が、少しの視点の違いや誰かとの出会いによって鮮やかに彩られることを教えてくれます。そして、未知の世界や不思議な出来事が彼を待ち受けているように、私たちの人生にもいつどんな瞬間に変化が訪れるか分かりません。この物語を通して、読者の皆さんにもそんな新たな発見や冒険心を感じてもらえたなら、これ以上嬉しいことはありません。

また、みおやとうか、けんたといったキャラクターたちは、つとむの成長を支えながらもそれぞれの物語を秘めています。ディスガイズという存在が何を象徴するのか、そして彼らの生きる世界にどんな秘密が隠されているのか、これからの展開で少しずつ明らかにしていきたいと考えています。

つとむが出会う日々の小さな出来事が、彼の心にどんな変化をもたらしていくのか、そして彼らがどのようにして自分たちの世界と向き合っていくのか――続く物語の中でさらに深く探求していく予定です。

最後になりますが、この物語を通じて、少しでも皆さんの日常に新たな視点や心の彩りを加えることができたのなら幸いです。これからも、つとむたちの物語を見守っていただければと思います。

ありがとうございました。


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