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11.鹿の女神

前書き

私たちの日常は、一見すると平凡で変わり映えのしないものかもしれません。朝目覚めて学校や職場に向かい、決まりきったルーティンの中で一日を過ごす。けれども、その「日常」の裏側には、私たちが知らない不思議な世界が広がっているかもしれません。

本作『日常の向こう側:朝霧の神社と猫耳の友人』は、そんな日常と非日常が交わる瞬間を描いた物語です。主人公・つとむは、普通の高校生として何気ない毎日を送っていました。しかし、ある朝、怪我をした猫を助けたことをきっかけに、彼の世界は一変します。猫耳を持つ不思議な少女・みおとの出会い、そしてディスガイズという存在との関わりが、つとむの日常に新たな彩りを加えていきます。

この物語を通じて、私は読者の皆さんに「見えないものの存在」や「日常の裏に隠れた非日常」に対する新たな視点を提供したいと考えています。私たちが普段当たり前だと思っている世界の裏には、無数の秘密や冒険が潜んでいるのかもしれません。そして、その秘密に気づくことで、私たち自身の日常もまた豊かに、そして鮮やかに変わっていくでしょう。

つとむと共に、日常の向こう側に広がる未知の世界を探求する旅に出かけてみませんか?彼の物語を通じて、皆さん自身の心の中に眠る冒険心を呼び覚ますきっかけとなれば幸いです。

それでは、つとむの冒険の始まりにページをめくりましょう。


広がる白い空間の中、四人は静かに足を進めた。中央に立つ青い花が咲く木の下、鹿の角を持ったディスガイズの姿が現れる。その姿は、まるで祠の像がそのまま生きているかのようだった。優雅で静かな存在感を放ち、四人の心に不思議な安心感をもたらしていた。みおは一歩前に進み、鹿のディスガイズに問いかけた。「すみません。ここは、どこか分かりますか?」そのディスガイズは穏やかな微笑みを浮かべ、優しく答えた。「迷い人よ、私は鹿の女神みずほ。あなた方のような悩み迷える者を助け、見守る存在です。」「あなたは、願いを叶えてくれるのですか?」みおは期待を込めて尋ねた。鹿の女神みずほは頷きながら、みおの頭を見てふと微笑んだ。「はい、そうです、みおさん。それにしてもあなたの猫耳は美しいですね。」その言葉にみおは一瞬驚いて、自分の頭に手をやった。すると、そこにははっきりとした猫の耳が現れていることに気がついた。つとむが驚きの声を上げた。「みお、頭!耳が出てるよ!」みおは慌てて耳を手で覆い、恥ずかしそうに顔を赤らめた。「私もディスガイズだったんだ。隠しててごめんね。」つとむは優しく笑い、「ううん、いいよ。薄々気付いてたけど。」と答えた。鹿の女神みずほは二人のやりとりを見守りながら、穏やかに微笑んだ。「ふふ、誰でも秘密はあるわよね。」とうかもそっと耳を触りながら、「それに私たちも耳が生えています。」と言い、彼女の真実の姿が映し出される。女神は静かに頷き、「ここは、どんな者も真実の姿を写し出す神聖な場所です。さぁ、あなた方は何を願うのですか?」と問いかけた。しおりは一歩前に進み、女神を見上げた。「私のオルゴールがどこにあるか教えてください。祖母から貰ったけど無くしてしまったんです。」女神は優しい目でしおりを見つめながら微笑んだ。「しおりさん、あなたはオルゴールの在りかを知っているはずですよ。」しおりは困惑して首をかしげた。「どういうことですか?」女神は穏やかに答えた。「無くしては、いないんですよ。しおりさんのおばあさんの宝物を聞いて見てください。そうすれば、自ずと見つかります。「はい、分かりました。」しおりは頷き、女神に感謝の意を示した。みおもお辞儀をしながら、「女神様、ありがとうございます。皆、早速行こう。」と仲間たちを促した。女神は手を広げ、示すように言った。「帰りは、この木に触れれば戻れます。」四人は感謝を込めて女神に礼を述べ、つとむ、とうか、しおりの順に木に触れて元の場所へと帰っていった。しかし、みおが帰ろうとした瞬間、女神がみおに優しく声をかけた。「みおさん、あなたの悩みはいいんですか?」みおは手を止め、振り返って女神を見つめた。「何のことですか?私は悩んでいませんよ?強いて言えば、最近太ったことですかね。」女神は微笑みながらも、何かを悟ったように静かに言った。「いつでも、ここに来てくださいね。待っています。」「はい、ありがとうございました。」みおは返事をしながら、微かに笑顔を浮かべる。しかし、心の奥には何か抱えたままであることが感じられた。みおは木に触れ、光に包まれながら元の世界へと戻っていく。女神は静かに見送りながら呟いた。「みおさん…あなたは、過酷な道を進むのですね。」

誰もいない祠の中、像が再び光を放ち、四人は現実世界に戻ってきた。出てきたみおは何か考え込んでいるようで、その表情に不安の色が浮かんでいた。「みお、どうしたの?」つとむが心配そうに声をかけると、みおはハッとして顔を上げた。「ううん、大丈夫。さっ、行こう!」みおはその場を振り切るように元気な声を出して、先に歩き出した。しおりも前を指差して、「こっちです。ここからも近いです。」と案内する。とうかも意気揚々と頷き、「はい、行きましょう。」と言い、四人は再び走り出した。しおりは走りながらポケットからスマートフォンを取り出し、母親に電話をかけた。「もしもし、お母さん?おばあちゃんの宝物ってわかる?」電話の向こうから母親の声が返ってきた。「え?宝物は、分からないけど……そういえば、おばあちゃんが、おじいちゃんの仏壇の奥に大切なものをしまってるって言ってたわよ。」しおりは希望の光を見つけたかのように笑顔を浮かべ、「ありがとう。」と礼を言って電話を切った。四人は走り続けながら、新たな希望を胸に抱き、次の一歩を踏み出した。彼らの探し物は、ついにその居場所を明らかにしようとしていた。


あとがき

この物語を最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

物語を通して、主人公のつとむが日常の中に潜む非日常に出会い、新たな冒険へと踏み出す姿を描きました。彼の孤独な朝から始まり、みおやとうかとの出会いを通して変わっていく日々は、私たち自身の人生の中にも共鳴する部分があるのではないかと思います。

つとむの物語は、一見普通に見える日常が、少しの視点の違いや誰かとの出会いによって鮮やかに彩られることを教えてくれます。そして、未知の世界や不思議な出来事が彼を待ち受けているように、私たちの人生にもいつどんな瞬間に変化が訪れるか分かりません。この物語を通して、読者の皆さんにもそんな新たな発見や冒険心を感じてもらえたなら、これ以上嬉しいことはありません。

また、みおやとうか、けんたといったキャラクターたちは、つとむの成長を支えながらもそれぞれの物語を秘めています。ディスガイズという存在が何を象徴するのか、そして彼らの生きる世界にどんな秘密が隠されているのか、これからの展開で少しずつ明らかにしていきたいと考えています。

つとむが出会う日々の小さな出来事が、彼の心にどんな変化をもたらしていくのか、そして彼らがどのようにして自分たちの世界と向き合っていくのか――続く物語の中でさらに深く探求していく予定です。

最後になりますが、この物語を通じて、少しでも皆さんの日常に新たな視点や心の彩りを加えることができたのなら幸いです。これからも、つとむたちの物語を見守っていただければと思います。

ありがとうございました。


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