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10.謎の老婆と霧隠れの森の祠

前書き

私たちの日常は、一見すると平凡で変わり映えのしないものかもしれません。朝目覚めて学校や職場に向かい、決まりきったルーティンの中で一日を過ごす。けれども、その「日常」の裏側には、私たちが知らない不思議な世界が広がっているかもしれません。

本作『日常の向こう側:朝霧の神社と猫耳の友人』は、そんな日常と非日常が交わる瞬間を描いた物語です。主人公・つとむは、普通の高校生として何気ない毎日を送っていました。しかし、ある朝、怪我をした猫を助けたことをきっかけに、彼の世界は一変します。猫耳を持つ不思議な少女・みおとの出会い、そしてディスガイズという存在との関わりが、つとむの日常に新たな彩りを加えていきます。

この物語を通じて、私は読者の皆さんに「見えないものの存在」や「日常の裏に隠れた非日常」に対する新たな視点を提供したいと考えています。私たちが普段当たり前だと思っている世界の裏には、無数の秘密や冒険が潜んでいるのかもしれません。そして、その秘密に気づくことで、私たち自身の日常もまた豊かに、そして鮮やかに変わっていくでしょう。

つとむと共に、日常の向こう側に広がる未知の世界を探求する旅に出かけてみませんか?彼の物語を通じて、皆さん自身の心の中に眠る冒険心を呼び覚ますきっかけとなれば幸いです。

それでは、つとむの冒険の始まりにページをめくりましょう。


アサガオ広場でのバザールもまた、しおりのオルゴールを見つける手がかりにはならなかった。広場の隅から隅まで探し回っても、しおりが探しているオルゴールは影も形も見当たらない。みお、つとむ、とうか、しおりの四人は途方に暮れていた。しおりの肩は落ち、みおもため息をついていた。その時、背後から不意に声がかけられた。「ちょっと、そこのお若い方……何かお探しかい?」振り返ると、バザールの片隅で小さな店を広げている老婆が目に入った。彼女は深いしわの刻まれた顔に、目は細く光を湛えている。その目はまるで何かを見透かすようで、不思議な雰囲気を漂わせていた。とうかが一歩前に出て、老婆に答えた。「私たち、あるオルゴールを探しているんです。」老婆はゆっくりと頷き、口元に笑みを浮かべながら問いかけた。「どんなオルゴールなんだい?」しおりは鞄から先ほど見せた写真を取り出し、老婆に見せた。写真には、赤い箱に金のメッキの縁取りがされたオルゴールが映っている。「とても、綺麗なオルゴールだね。」老婆は目を細めて写真を覗き込んだ。「おばあさん、このオルゴールどこにあるか知りませんか?」しおりの声には、どこか切実な響きがあった。しかし、老婆はまるで眠っているのかと思わせるほどゆっくりと考え込むと、首をゆっくりと横に振った。「ごめんね。わたしは、知らないねぇ。」老婆の答えに、しおりの表情は曇り、四人の肩も自然と下がってしまった。とうかは礼儀正しく頭を下げた。「そうですか……ありがとうございました。」だが、老婆は再び口を開いた。「ちょっと待ちなさい。わたしは、知らないと言っただけだよ。」つとむは老婆の言葉の意味が理解できずに、眉をひそめて問いかけた。「…?どういうことですか?」老婆は謎めいた笑みを浮かべ、声を低くして続けた。「宛があるんだよ。もしかしたら、そこに行けば見つかるかもしれないよ。」その言葉に四人は引き寄せられ、老婆の言葉に耳を傾ける。老婆はさらに声を低くし、誘うように続けた。「町外れにある森を知っているだろう。霧隠れの森。あそこにある祠に願いを込めると、願いを叶えてくれるらしいんだよ。」「本当に願いを叶えてくれるんですか?」みおは老婆に向けて真剣な表情で尋ねた。老婆は不適な笑みを浮かべ、「そりゃ、タダでじゃないと思うけどね。わたしも詳しくは知らないよ。」と意味深に言い放った。四人は顔を見合わせ、小声で相談を始めた。とうかが冷静に切り出す。「どうしますか?少し怪しい気もしますけど……」つとむは老婆の話に半信半疑だったが、「確かにそうですね。でも、行ってみる価値はあるかもしれません。」と返した。しおりは小さく頷き、「まぁ、可能性の話ですからね。」と同意する。みおは意志を固め、「行くだけ行くっていうのもありかもね。今のところ手がかりはこれしかないし。」と力強く言った。四人は意志を統一し、老婆に向かって礼を述べた。「おばあさん、ありがとうございます。行ってみます。」老婆は満足そうに頷き、少し陰のある声で「そうかい、気を付けるんだよ。」と送り出した。つとむも深々と頭を下げ、「はい、気をつけます。」と返した。四人が歩き出すと、老婆はその背中を見送りながら口元に奇妙な笑みを浮かべた。よく見ると、その口元には長い舌と鋭い二本の歯が見え、どこか得体の知れない不気味さを漂わせていた。

昼を過ぎた頃、四人は霧隠れの森にたどり着いた。森の入り口には淡い木漏れ日が差し込み、初めは優しい雰囲気を漂わせていたが、次第にその光も薄れ、森の奥は深い影に包まれていた。「この奥にあるのかな?」みおが不安げに言うと、つとむも警戒を緩めることなく答えた。「あのおばあさんの話では、そのはずだけど……」「少し、不気味ですけど大丈夫ですかね?」しおりは不安を口にした。とうかはみおの後ろにぴったりとくっつき、まるで守りのポジションに入るように小さくなっていた。みおは胸を張り、振り返って仲間たちに微笑んだ。「まぁ、大丈夫だよ。行こう!」四人は薄暗い道をゆっくりと進み、やがて光が差し込む広い空間にたどり着いた。中央には巨大な大木が立ち、その根元に小さな祠が鎮座している。古びた祠はどこか神聖な雰囲気を漂わせており、その場に立つだけで四人は自然と息を呑んだ。「この森にこんな場所があるなんて知らなかったよ。」つとむは驚きながら周囲を見回した。「ねぇ、すごく神聖な場所だ。」みおも目を輝かせながら、祠を見つめていた。四人が祠に近づくと、つとむの首に掛けていたネックレスが突然光を放ち始めた。「まぶしい!なんだ!」つとむは光に目を細め、手で目元を覆った。「どうして?この祠とディスガイズに関係があるんでしょうか?」とうかは戸惑いを隠せず、祠をじっと見つめた。「こんな祠の話、聞いたこと無いけど……」みおも同じように驚きと疑問を抱えていた。祠の中にある像は鹿のような角が生え、伝統的な羽織を纏っている。その姿はまるで異世界から来たかのようだった。「本当だ、ほらこの像も。」しおりが指差すと、みおはその像をじっと見つめた。「本当だね。この像に祈れば良いのかな?」みおは戸惑いながらも像に向かって手を合わせた。「多分……しおりさん、お願いします。」つとむが促すと、しおりは頷き、像の前に進み出た。「しおりさん、おばあさんのオルゴールを思い浮かべながら、オルゴールがある場所を教えてもらってください。」とうかもそっと背中を押した。「はい、わかりました。」しおりは静かに祠の前に立ち、心を込めて祈り始めた。「私たちも一緒にお祈りしよう。」みおの言葉に従い、四人は目を閉じ、像に向かって祈りを捧げた。すると、祠の像が光を放ち始め、像の目が明るく光り輝き、四人を包み込んだ。

目を開けると、彼らは真っ白な空間に立っていた。辺りには霧がかかり、その中央には小さな浮き島が浮かんでいた。島には青い花が咲き誇る


あとがき

この物語を最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

物語を通して、主人公のつとむが日常の中に潜む非日常に出会い、新たな冒険へと踏み出す姿を描きました。彼の孤独な朝から始まり、みおやとうかとの出会いを通して変わっていく日々は、私たち自身の人生の中にも共鳴する部分があるのではないかと思います。

つとむの物語は、一見普通に見える日常が、少しの視点の違いや誰かとの出会いによって鮮やかに彩られることを教えてくれます。そして、未知の世界や不思議な出来事が彼を待ち受けているように、私たちの人生にもいつどんな瞬間に変化が訪れるか分かりません。この物語を通して、読者の皆さんにもそんな新たな発見や冒険心を感じてもらえたなら、これ以上嬉しいことはありません。

また、みおやとうか、けんたといったキャラクターたちは、つとむの成長を支えながらもそれぞれの物語を秘めています。ディスガイズという存在が何を象徴するのか、そして彼らの生きる世界にどんな秘密が隠されているのか、これからの展開で少しずつ明らかにしていきたいと考えています。

つとむが出会う日々の小さな出来事が、彼の心にどんな変化をもたらしていくのか、そして彼らがどのようにして自分たちの世界と向き合っていくのか――続く物語の中でさらに深く探求していく予定です。

最後になりますが、この物語を通じて、少しでも皆さんの日常に新たな視点や心の彩りを加えることができたのなら幸いです。これからも、つとむたちの物語を見守っていただければと思います。

ありがとうございました。


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