物語の始まり
「#日常の向こう側:朝霧の神社と猫耳の友人」シリーズは、普通の高校生活を送っていた主人公つとむが、ある日出会った謎めいた少女みおをきっかけに、異世界と交わる物語です。みおが案内する先は、現実の裏に隠された不思議な場所、ディスガイズと呼ばれる存在がひっそりと生きる世界。つとむは、人とディスガイズの境界線を越え、様々な困難や冒険を通して自分と向き合いながら、仲間たちと共に問題を解決していきます。シリーズは、迷子の犬のディスガイズや、大切なものを探すウサギのしおりなど、日常に潜む小さな奇跡や、不思議な出来事を通じて、人と異形の存在がどのように共存し、支え合うかを描いています。そして、つとむ自身もまた、隠された真実や自分の役割に向き合うことで、成長していく物語です。毎日のように繰り返される日常の中に潜む非日常が、このシリーズの中心テーマとなっています。
[導入部]
朝日が昇る水平線に朝霧が悶々と立ち込める。いつもと変わらない、何気ない朝。観覧車のような煌めきのない水車のような趣もないただ、続く日に私は芽吹く。湿った土の上で芽吹いた、新芽に囁き声がかけられる。誰も、見ていない見つけられない私を少しずつ、物語を刻もう終わるまで。
1.物語の始まり
カーテンの隙間から朝日が零れる布団の上で目覚めるつとむ、薄暗い部屋に朝の静寂が漂っている。天井を見つめ、しばらくの間ぼんやりと考え事をしている。親や兄妹の声がしないことに気付き、独りだと感じる。静かな家の中に、時計の秒針の音だけが響いている。
洗面台の鏡を覗き込むと、ぼんやりとした自分の顔が映る。「おはよう」と声に出してみるが、部屋に響くだけで誰も返事をしてくれない。その言葉が誰かに届いたらいいのにと、ふと思う。
少しばかりの気持ちよさを感じながら、冷たい鉄の箱、冷蔵庫を引く。中から卵、ベーコン、牛乳、ヨーグルトを取り出し、朝のフルコースを机の上に並べる。シンプルな朝食に向かい自分に話しかけるように「いただきます」と呟く。電子レンジの「チーン」という音がなんとなく締まらない気分に笑ってしまう。
朝食を済ませ、服を着替え出かける支度を整える。灰色の学ランに灰色の鞄、決まったコスチュームをまとい、鏡の前で身だしなみを確認する。
玄関を出ると、冷たい朝の空気が肌に触れる。いつもの風景が広がり、階段を下りて行くとアパートの入り口に三毛猫が寝そべっている。何度も見かけたことのある猫だが、今朝は少し違う気がする。「やぁ、おはよう。」つとむが声をかけると、三毛猫はちらりとこちらを見て「ふっん…」と短く鳴く。素っ気ない挨拶だが、その白湯のような温かさに心が少しほぐれる。いつもより良い日になるかもしれない、と心の中で思うつとむが鍵をかけ歩み階段へ進める。
階段を降りきると、アパートの管理人、旭さんが掃除をしている。二人は目が合い旭が「おはよう。今朝も天気がいいね。」彼女の柔らかな声が朝の空気に溶け込むように響く。「おはようございます。」つとむは少し恥ずかしさを感じながらも、照れくさい笑顔を浮かべて返事をする。旭さんは掃除の手を止め、空を見上げながら「今日は爽やかな天気だけど、小雨が降るらしいよ。」と話し続ける。「そうですか…ありがとうございます。」つとむは礼を言いつつも、心の中では嘘を混ぜてその場を去ろうとする。「でも、降んないかもしれないけどね。」旭さんは微笑みながら言う。「はは……失礼します。」つとむは少し気まずさを感じながらもその場を離れる。まだ始まったばかりの登校の道。毎日通る道に新たな発見を求め、進む。
あとがき
この物語を最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
物語を通して、主人公のつとむが日常の中に潜む非日常に出会い、新たな冒険へと踏み出す姿を描きました。彼の孤独な朝から始まり、みおやとうかとの出会いを通して変わっていく日々は、私たち自身の人生の中にも共鳴する部分があるのではないかと思います。
つとむの物語は、一見普通に見える日常が、少しの視点の違いや誰かとの出会いによって鮮やかに彩られることを教えてくれます。そして、未知の世界や不思議な出来事が彼を待ち受けているように、私たちの人生にもいつどんな瞬間に変化が訪れるか分かりません。この物語を通して、読者の皆さんにもそんな新たな発見や冒険心を感じてもらえたなら、これ以上嬉しいことはありません。
また、みおやとうか、けんたといったキャラクターたちは、つとむの成長を支えながらもそれぞれの物語を秘めています。ディスガイズという存在が何を象徴するのか、そして彼らの生きる世界にどんな秘密が隠されているのか、これからの展開で少しずつ明らかにしていきたいと考えています。
つとむが出会う日々の小さな出来事が、彼の心にどんな変化をもたらしていくのか、そして彼らがどのようにして自分たちの世界と向き合っていくのか――続く物語の中でさらに深く探求していく予定です。
最後になりますが、この物語を通じて、少しでも皆さんの日常に新たな視点や心の彩りを加えることができたのなら幸いです。これからも、つとむたちの物語を見守っていただければと思います。
ありがとうございました。