青春カメラロール
[カメラロールを見返して]
春の匂いがつきだした風。
桜の花がもう少しで咲きそうな季節になってきた日の事。
散らばった部屋の机。一人の男がペンを持ち何かを便箋に書こうとしているが全くペンが進んでいない。
何を書けばいいのかわからなくて、僕はふと目に入ったパソコンを開いた。
暗くなった部屋で見返すカメラロール。
一つ光るパソコンの画面からは、溢れんばかりの青春が詰まっている。
もう二度と戻らない時に憧れるのは間違いだろうか。昔に焦がれ、あの時が一番良かったと思っていた時に戻りたいと思うのは間違いだろうか?
学生にとっての夏休みは何よりも盛り上がるイベントだ。
何をするかと話すクラスメイト、僕も友達と予定を立てていた。
“カラオケ” “映画” “夏まつり”
楽しいイベント盛り合わせの休みにみんなでワイワイ出かけるのが本当に楽しい。
未来を見据えている瞳に見るイベントはキラキラと光っていた。
「空って上に行くほど青くなるよな」
「ん?確かにな」
「確かにね〜」
そんな何とも言えない会話。高校の制服を着て、幼馴染三人で帰る道はいつも同じ。かわり映えのない帰路だった。
最近三人でハマっている音楽を聴きながら、道を歩く。
時々〈キィー〉と一人が押している自転車が鳴るのと蝉の音。
くだらない日常は壊れることを知らない。ジメジメと暑い日本の夏。
カラッとしていない事に少しの殺意を覚えることもあるだろう?
夏休みはみんなと遊び呆けた。
カラオケに夏祭りそして、買い物。馬鹿みたいに遊んだ夏休みに増えた写真は馬鹿みたいな数になった。
ちゃんと課題を終わらすのを忘れたがね。
夏休みが終わったら次は体育祭だろう。
リレーに綱引き、借り物競走。そして台風の目に毎年恒例先生リレー。
一年で学校が一番盛り上がる体育祭。
外の葉は少し紅葉しだし、教室から見える景色もパッと変わる。
練習は辛いとかレベルではないが、楽しいのでよしとしよう!
何より、リレーの練習はみんなの心が繋がった気がして楽しかった。
体育祭、毎年の思うことはなんで日焼け止めを塗らなかったのか? 夏休みで焼けた肌に拍車がかかり真っ黒になりそうな勢いだ。
泣いても笑っても一発勝負の競技。一番かっこいいのはやっぱり全力で楽しんでいる奴だ。
練習が面倒そうだからと辞めた応援団。みんなで声出しと、練習は思ったよりも楽しそうだった。
次のイベントはテストだろう。
学校全体で一番覇気がなくなる行事だ。
学生の本分は勉強と言わんばかりの課題の量。
テスト計画表……、あの計画表なんてあってないようなものだ。あれどうりに進めている人なんて見たことがない。
部活も一時停止をくらい、勉強するはずの時間は遊んでしまう。
そして、テスト当日は徹夜で課題を終わらした人や、自信満々の人ましてや、教科によって違う人様々だった。
これより悲惨なのはテスト返し。
阿鼻叫喚の教室で死んでいる者、ガッツポーズを決め込んでいる者。現実逃避している者。平均は何点だ!と叫びそうな勢いな者。
沢山の種類に分かれるクラスメイトの中僕はいつも中間を極めていた。勿論順位も中間だ。
本当になんとも言えない気持ちになる。
この魔境が終わったらやっとの思いで、音楽祭。束の間の休息を与えられる。
大きなホールに沢山の学校が集まり、各学校発表するのは本当に楽しい。
クラスメイトと協力し、学校の他クラスとも他学校とも戦うのは新鮮な感じがした。
学校全体のイベントはまだまだある。
林間学校、修学旅行。学校レクに球技大会。
個人のものでも沢山あって、
バレンタインにクリスマス。恋バナなんて、盛り上がること間違いなしだ。
そんな僕も恋バナをしてことがある。まぁ、思いを告げんことはなかったが……。
「で、誰が好きなんだ?」
「幼馴染の……、」
「マジかよ、ガンバ!」
なんて会話を今でも覚えている。
今思えば思いを告げてこっぴどく振られていてもよかったと思う。
それも、青春の一つの形だと思うならな。
こんな学校生活最後のイベントはどんな時も決まって卒業式。
桜が舞い、青い空に映える日の卒業式。
「泣く?泣く?」
「えー、泣かねーよ」
「つっまんなー」
「そう言うお前は」
「泣く!」
「おぉー」
こんな会話が卒業式が近づくにつれ増えていく。後ろの黒板にはあと何日と書かれ、卒業カレンダーをみんなと作った。
そして卒業式本番は、大体みんな笑っている。泣いても最後には笑っている。
ニカッと笑う写真が配られる。そんな卒業式の写真も勿論沢山持っている。
カメラロール最後の写真は幼馴染三人で写った卒業式の写真だった。
あれから何年経っただろうか?
最初は頻繁に会っていた友達も少しずつ疎遠になり合わなくなっていく。
あの頃は、幼稚園が最高に楽しかったとかほざいていたけどやっぱり一番楽しいのはその時なのでは思う。
あの頃の方がよかっとか言うけれど、それは当たり前。昔の記憶は都合がいい場所しか覚えていない。
だからこそ、この記憶を大事にしたい。
くしゃくしゃになった手紙にペンを滑らせる。沢山の思い出共に書く文章。
ただ誰よりも幸せになってほしいと思いを込めて、話す原稿。涙がこぼれ落ちるのはまだ早いだろう。
この涙は結婚式に取っておくから。
結局滲んだ文字は一つだけだった。
一週間後は幼馴染二人の結婚式だ。
読んで頂きありがとうございます。
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