『*Cinderella* 』
一般的に知られている「シンデレラ」を、作者が自分の都合で改変、創作しています。ご注意くださいませ。
また、ご不快に思われる方は、閲覧をご遠慮くださいませ。
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『*Cinderella* 』 Rosamond=Viviane=Formarc
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とある時代、とある国、とある町で、とある男が、とても美しい女性と結婚しました。周りが羨むほど美しい妻をもち、二人のあいだには可愛らしい女の子も生まれ、男はとても幸せでした。ですがある日、悲劇がおこります。なんと、美しい妻が病で突然亡くなってしまったのです。最愛の妻を病でなくした男は悲しみに沈みました。
男と娘の将来を心配した周囲の人々は、男に再婚の話をもちかけます。相手は男と同じ年の未亡人で、娘を二人もっていましたが、とても美しい人でした。男は周囲のすすめを邪険にもできず、その女性と結婚しました。
しかし、家を征服した継母は、美しい前妻に良く似た娘をねたみ、シンデレラ(灰かぶり)という酷いあだ名をつけて、綺麗な服も着せずにこき使うようになりました。義理の姉達二人も彼女に無茶ばかり言い、シンデレラは悲しみに濡れながらも、まっすぐな優しい心を失うことなく、沢山の鳩やネズミ達を友人として過ごしていました。
そんなある日、シンデレラの家に、お城から舞踏会の招待状が届きました。それは、国中の年若い娘に送られた、王子様の結婚相手を決めるためのものでした。姉達ははしゃいでシンデレラに着替えを手伝わせ、めいっぱいに着飾りました。
「お母さま、私も、舞踏会に行ってもよろしいですか?」
「ああ、いいとも。けれど、仕事が終わるまでは来てはいけないよ。この大麦と小麦、それにマメを全てより分けるんだ。……ああ、それにドレスも。用意できないのなら連れて行ってはやれないね」
そう言って、継母は大きな桶に3杯分もの小麦や大麦やマメをシンデレラに渡しました。それはとてもとても1人では分けられる量ではありませんでしたし、シンデレラの持っていたドレスは、全て継母が奪ってしまっていました。悲しそうな顔をするシンデレラを置いて、継母と2人の姉は舞踏会に行ってしまいました。
たった1人家に残されたシンデレラは、仕事を一生懸命にしていましたが、ぽろり、と頬を涙がこぼれました。
「私も舞踏会に行けたら…。一目だけでも、王子様にお会いできたら、きっと夢のようでしょうね。……けれど、行けるはずがないわね。このお仕事はとてもじゃないけれど終わらないし、私はドレスも持っていないのだもの」
「泣かないで、シンデレラ」
ふいにかかった声に顔を上げると、すぐ傍に、輝く星の杖を持ち、優しい表情をした女の人が立っていました。
「まぁ、あなたはどなたですか?」
「私はあなたの名付け親の魔法使い。心優しいシンデレラ、あなたの願いをかなえてあげましょう。舞踏会へお行きなさい」
「いいえ。お城にはいけません。お母さまから言われたお仕事があるのですから」
「大丈夫よ。あなたには沢山の友がいるのだもの」
魔法使いが杖を振ると、閉じたままだった扉や窓が開き、沢山の鳩や数え切れないほどのネズミが入り込んできました。そして彼等は桶に集まり、あっという間に大麦は大麦の桶。小麦は小麦の桶。マメはマメの桶にわけてしまいました。
「まぁ、みなさんなんて優しいの。ほんとうにありがとう。……いいえ、でも私にはドレスがありませんもの、やっぱり無理です」
「大丈夫よ。シンデレラ」
優しくこたえた魔法使いは、もう1度杖を振りました。すると、庭のカボチャが飛んできて、きれいな馬車になり、4匹のネズミがそれをひく馬に、2羽の鳩が、従者と御者になりました。そして最後に、魔法使いがシンデレラに向けて杖を振ると、シンデレラの粗末な服は、夢見るようなきれいなドレスにかわり、何も履いていなかった小さな真っ白な足に、きらきらと、星屑のような色をしたガラスの靴が光っていました。
「まぁ、なんてきれいなドレスでしょう。それに、これはガラスの靴?銀色にきらめいて、まるで星の欠片みたいだわ」
「さぁ、舞踏会に行っておいでなさい、シンデレラ。ただし、魔法が続くのは12時の鐘がなり終わるまで。それまでには必ず帰ってくるのよ」
「ええ。わかったわ。本当にありがとう。こんなに親切にしてもらって、私は、どうやってお礼をしたらいいのかしら?」
両手を組み合わせ、感謝に涙ぐむシンデレラに、魔法使いは優しく笑いました。
「このネズミや鳩たちがあなたを手伝ったのは、あなたに優しくしてもらい、あなたを友人だと思っているからだし、あなたが優しい心を忘れなかったからこそ、私はあなたのために魔法を使ったわ。この幸運は、すべてあなたが引き寄せたもの。楽しんでおいでなさいね」
「本当に、本当にありがとう。行ってきます」
魔法使いに見送られ、シンデレラはカボチャの馬車にのって、お城に向かいました。
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お城についたシンデレラは、そのきやびやかさにうっとりと見惚れました。そして、そんなシンデレラの美しさに、舞踏会をおとずれた人々は声も無くみとれていました。そんな中、シンデレラに、ひときわ美しい男の人…その国の王子様が歩み寄りました。
「……美しい姫君、どうか私と、踊ってくださいますか?」
王子様はやさしく微笑んで、シンデレラに手を差しのべます。王子様は一目見て、シンデレラを好きになってしまったのです。そして、シンデレラは嬉しそうに微笑んで、王子様の手をとりました。
「はい。……私でよければ、喜んで」
2人は手に手をとって踊りはじめました。それは、とてもとても、夢のように美しい踊りでした。
2人は軽やかに踊っていましたが、ちょうど一曲、ダンスが終わったとき、ごーん、と音を立てて、お城の時計が12時の鐘の音を鳴らしました。
「いけないっ」
驚いたシンデレラは、王子様の手を抜け出して、外に向かって走り出しました。王子様の呼び止める声が響きましたが、時間がありません。
あまりに急いでいて、階段を下りるとき、シンデレラの靴の片方が脱げてしまいましたが、王子様は追ってきているし、12時の鐘が鳴り終わるまで時間がありません。シンデレラは靴をそのままに、かけ去ってしまいました。
そして、シンデレラがお城の外に出た瞬間、12時の最後の鐘が鳴り、馬車はかぼちゃに、馬はネズミに従者は鳩に、そして、シンデレラのドレスは粗末な服に変わってしまいました。
「……ああ、戻ってしまった。けれど、充分だわ。王子様を見て、それどころか踊ることができたのだから。……あら?」
シンデレラが足元を見ると、粗末な服の足元、白い小さな足の片方には、まだきらきら光るガラスの靴が残っていました。シンデレラは靴を脱ぐと、それを大切に胸に抱きしめました。
王子様は、シンデレラの落とした靴を大切に持ち上げました。そして次の日、国中に、ある1つのおふれが貼り出されました。
『このガラスの靴にぴったり合う娘を王子は探している。そして、王子はこの靴にぴったり合う足を持つ娘を花嫁にする』
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王子の命を受けて、王子の従者が、その国の全ての家の娘たちにガラスの靴を履かせていきます。けれど、ぴったりあう娘は1人としていません。そしてついに、従者がシンデレラの家にやってきました。シンデレラの2人の姉達は、必死に靴を履こうとしますが、かかとがつっかえたり、爪先がきつかったりして、どうしても履くことができません。
がっかりとした従者に、シンデレラがひかえめに声をかけました。
「あの、私もその靴をはいてみてよろしいですか?」
「お前のような娘が、合うわけが無いだろう?さっさと仕事をおし」
「いえいえ。どうぞ、その娘さんも」
継母は意地悪く言いましたが、従者は頷いて、ガラスの靴をシンデレラに差し出しました。そして、ゆっくりと伸ばされたシンデレラの足に、靴はぴったりと、魔法のように合いました。
「ぴったりだ」
「この方だ!この方が、王子様の花嫁だ!」
従者は喜びに声を上げます。そして、シンデレラが持っていたもう片方の靴を取り出し、履くと、その粗末な服はみるみる内に美しいドレスに変わり、彼女は舞踏会の日のままの、美しい姫君に変わりました。
どこからか、優しい声が響きます。
「心優しいシンデレラ、どうか誰よりも幸せにおなり」
「魔法使いさん?ええ、ええ。本当に、本当にありがとう」
喜んだ従者は、シンデレラを馬車にのせ、お城に連れて行きました。やってきたシンデレラを見て、王子様は、あの舞踏会のときと同じように、静かに手を差し伸べました。
「美しい姫君、どうか私と結婚してください」
「はい。……私でよければ、喜んで」
そして、シンデレラはそれに頷きました。そこで王子様とシンデレラは結婚し、シンデレラはその国の王妃様になりました。シンデレラを助けたネズミや鳩たちはお城に迎えられ、意地悪な継母と2人の姉も、シンデレラの願いで、お城で一緒に暮らすことになり、3人は心から感謝して、いままでのことをシンデレラに謝りました。そして、王子様とシンデレラは、いつまでもしあわせに暮らしたのでした。
Fin.
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※この物語は、一般向けの小説として書かれた『シンデレラ』を、著者ロザモンド・ビビアンヌ・フォルマルク本人が、子供用に書き直したものである。