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第三章 灰かぶり姫・昼のお仕事と、回想

昨日は更新ができず、すみませんでした…っ。学校がはじまったため、これからは3日~一週間にいちど更新になると思います。すみません見捨てないで下さいよろしくお願いします! 今回はクローディア姉さん紹介話です。需要はどこでしょか。いまいち何がしたいのかよくわからない話ですが、よろしくお願いいたします!

「ブエックショイ!チクショーメ!!」

 二階から聞こえた豪快なくしゃみに、私は思わず洗っていた皿を取り落としかける。けれど根性で掴んだそれを、今度はゆっくりとシンクに下ろした。

 …これは引きこもりであるはずの我が家のお父様が、突然ガテン系になった訳ではない。そう、そういったことではなく、ただ単に、あれはお母様のくしゃみだ。例えどこかの工事現場のおじさまのようだとしても、お母様のくしゃみだ。

「ブヘェックショーイッ!チキショーメ!!」

 前半はともかく、後半はつける意味がわからない。なんでチクショーメ、とか、チキショーメ、とか付くのだろうか。むしろそもそも誰に言ってるんだろうあれは。風邪に?花粉に?自分に?自分に言ってるんだったらかなり自虐的な気がする。

淑やかなクローディア姉さまは勿論、「お姉さま」だってあんなくしゃみはしないのに、いったい何故…。

「…まぁ、いいか」

お母様のくしゃみがどれだけ大きかろうが、個性的だろうが、私の家事とはなんの関係もな…

「ビエックショーイ!!チクショーメェ!!!」

…………お母様、風邪だろうか。


 その後私は昼食の下ごしらえをして家にホウキをかけ、食器を磨いた私は、ボウルに朝食の時に出たレタスや人参のかけらとハムやサラミの切れ端。りんごのスライスにパンの耳を入れ、階段を上って、屋根裏に出た。この時点で午前11時。毎日ほぼパターン化された動作なので、仕事も早くなる。

一番の重労働ともいえる洗濯に関しては、2年前から、お母様が洗濯のために下町のおかみさんたちを雇ってくれているので、私がしなくても大丈夫なのだ。

「みんな。ご飯持ってきたよ」

 声をかけた途端、薄暗い部屋のあちこちからぱさぱさという音がして、腕や肩に温かな重みが乗る。

私は心地よさに目を細めて、コウモリたちの温かな毛をなでた。え?何故にコウモリ?ここで出てくるのは普通小鳥か、百歩譲ってもねずみじゃないかって?……そんなことをいわれても困る。ほわほわな毛に筋張った羽。漆黒の円らな瞳を持つこの子達は、クローディア姉さまの大事な友達なのだから。それにとても可愛いし。―――働きに来てくれているおかみさんたちは、何故か絶叫していたけど。

「おはよう、ディアナ、ギー。ロプル、頭に乗らないで重い重いてゆうか髪がぬける、はげる。コルクナ、ロルベル、ここにおいとくから後で食べてね?」

 お腹がすいていたのか、コウモリたちはみんな、押し合うようにしてボウルに集まる。真っ先によってくる食いしん坊がディアナで、彼女にいつもべったりなのがギー。コルクナとロルベルは年長なので、ご飯は他の子が食べ終わってからゆっくり食べる。みんな他のこのぶんまでとったりしない、礼儀正しくていい子だ。流石はクローディア姉さまの飼っている子達。

「ほらロプル。ちゃんと食べて、りんご好きでしょ?」

 けれど、一番年下のロプルだけは少し甘えん坊で、キャベツやパンは自分で食べるけれど、大好物のりんごは、食べさせてほしくてたまらないらしい。放っておくと服にぶらさがって、ビー玉みたいな黒い目で、「たべる、たべる」とねだってくる。種類にもよるけれど、コウモリは虫を食べるものが多いらしいけれど、この子達はこれで至極満足そうだ。  …本当によかった、主食が虫じゃなくて。

 ロプルにりんごをあげながら、私はこの子達がはじめて家にきたときのことを思い出していた。そう、あれはお母様たちが来て、幾年かたったある日のことだった。




「ぎゃぁぁあああああああああ!!」

 時は夕刻。朱色に染まった家の中を、耳をつんざくような絶叫がこだました。

(お母様…?)

 この世のものとは思えない絶叫に、私は持っていたタワシ(踊り場をみがいていたのだ)を置いて、階段を駆け上がる。

「ぎょあああああああああああああ!!!!!」

 お母様が叫ぶのは割といつものことだけれど、ここまでの絶叫はあまり無い。叫び声の聞こえてくる屋根裏部屋まで一気に上って、ばんっ、と音を立てて扉をあけた。

「お母様!どうし…」

「どうしたもこうしたもないわよぉぉぉぉぉぉおっ!」

 ―――うん、確かに。どうしたもこうしたもない感じの光景だった。薄暗く狭い屋根裏部屋の中、天井に腕くらいの大きなコウモリが二匹。古い戸棚に小さなコウモリが二匹。そしてお母様の芸術的に結い上げた頭の上に、とりわけ小さなコウモリがぶら下がっている。えーっと、これは一体どう反応すれば。

「へぇ…、これはこれは」

 私と同じく絶叫を聞きつけたらしいお兄様が、ぎゃあぎゃあ言って暴れているお母様と、狭い屋根裏に住み着いたコウモリたちを見て、腕を組んだまま楽しそうに笑った。……いつものことながら、気配を消して背後に立たないでもらえますか(今日は)お兄様。

「…どうすればいいでしょうか、お兄様」

「え?どうすればって?」

「いえだから、お母様が大変そうなんですけど」

「そのままでいいんじゃないかな?命の危機でも無さそうだし。何より面白いし」

 ――――――――実の母親が苦闘してるのを、面白いからと放置するかこの人は。輝かしい爽やかな笑顔がむしろ鬱陶しいのは気のせいですかお兄様。

「…………」

「えー?そんな冷たい目で見ないでよ、シンデレラちゃん。お母様はそうだな…新たなファッションの革命を行っているんだと思うよ?」

「…あれが、ですか」

「うん。テーマはサスペンスと華麗さと虚しさのコントラストかな。斬新斬新」

 斬新過ぎて確実に誰も付いて来れない気がするが。とゆうか、

「お兄様、本気で言ってますか?」

「ううん。まさか」

 ……………。

 助ける気が清清しいまでにないらしいお兄様にため息をついて、私はお母様に一歩近づいた。

(あー…。掴んでどかせばいいかな。暴れないといいんだけど…むしろ噛まないといいんだけど)

「お母様、今取りますから」

「良い」

 すとん、と響いたのは落ち着いた声。そして、つかつかと私の横を通り抜けたその人は、お母様芸術ヘアから、ひょいとコウモリを取り上げた。そして、小鳥にでもするようにその背を愛しげに撫でて、濃紺と黒のシンプルなドレスを着たクローディア姉さまは、そのコウモリを戸棚の上に放した。

 その姿を、悪夢に出てきそうな形相で睨み、ぜぇ、はぁ、と息を切らしたお母様が叫ぶ。

「クローディア!これは一体何なのよ!?」

「コウモリだよ」

「見ればわかる!!」

「…?…コルクナ、ロルベル、ディアナ、ギー、ロプル」

「は?」

「大きいのから順番に名前」

 ちなみに前から光、陽気、花束、元気、甘えっこ、の意味だったりする。

「何処からつれてきたの、ディア?」

「捕獲した」

「どうやって」

「素手」

「わぁお、我が妹ながら、アクティブだね」

 何気なく会話するお兄様とクローディア姉さまを見つめること数拍、お母様のこめかみのあたりから、ぷちっと何かの切れる音がした気がした。

「~~~~~~~!!!あたくしは、何故我が家の屋根裏にコウモリがいるのかとききたいのよぉぉぉぅ!!」

「飼ってるから。母さん、飼わせて欲しい」

「逆!順番が逆よ!!飼う前に許可を求めなさい許可を!とゆうかあたくしはイヤよ!こんなネズミの身体に悪魔の羽根がはえてるような、気色悪い生き物の面倒みるなんて!!」

「私がみるから」

「無理よ!あなたあたくしに似て不器用な上もの凄く大ざっぱで、その上朝は活動出来ないでしょう!?棺桶ベッドから出てこないくせに!エサは誰がやるのよあたくしやらなくてよ!?」

 お母様、不器用な自覚あったんですね。

けれど、お母様の言葉に、クローディア姉さまの肩がしょんぼりと落ちるのを見て、私はうっとひきつった。

「シンデレラちゃん?」

 人の趣味はそれぞれだ。美声年が好きなお母様のような方もいれば、美青年なんてダメ!今はブオトコこそがジャスティス!というタイプの女性も、世界広しのどこかにはいるだろう。となれば、コウモリを愛玩物として飼っている人もきっといる。なら、クローディア姉さまがコウモリの1匹や2匹や以下略5匹かったところで、別段なんの問題もない。…だろう。多分、きっと、恐らく。

 ……正直に言うと、賢く物静かなクローディア姉さまは、はじめて会ったときから私の自慢の、たった一人の姉さまなのだ。(もう片方の「お姉さま」については、全力でお姉さまとは認めたくない。現に今男装だし。)そのクローディア姉さまがあんな風に肩を落としているなんて、物凄く私には耐え難い。何より、慎ましやかなクローディア姉さまが、こんなに強く主張しているのだ。きっとこのコウモリたちのことを、とても大切な友人だと思っているに違いない。それを見もせず追い出そうなどと、いくらなんでも失礼だ。まずは歩み寄りの姿勢を示そう。

 そう思って、戸棚からミルクをなめている、小さなほうのコウモリたちを観察してみた。…あれ?

(意外と可愛い…)

見慣れない羽はたしかに違和感を感じるけれど、一生懸命にミルクをなめる姿は小さな栗鼠のようで予想外に可愛らしい。よく考えてみれば、手のひらに包めるほどの小さなもふもふの生き物なのだ。進んで嫌う理由がない。

 そう思って見てみると、大きめなコウモリたちも結構可愛いのではないだろうか。

 奇妙な羽根や、天井から逆さまにぶらさがる姿はともかく、こちらを見つめる目は、小さな子たちよりずっと大粒で、うるうるしていた。

(まぁいいか…)

「お母様、朝は私がエサやりします」

「はぁっ!?」

 言った途端に、お母様の首がぐりんっとこっちに向いて密かに退く。お兄様はあらら、と楽しそうに呟き、クローディア姉さまの涼しげな一重の目は、驚いたようにぱっと見開かれた。

「なんですって?」

「ですから私がやりますエサやり。朝置きにくるだけですし。クローディア姉さまは夜なら起きてらっしゃいますから、そちらは問題ありませんよね?」

「いやあたくしが問題にしてるのはアレの気色悪さなのだけどね…?とゆーか、ナンでお前がやるのよ?」

「いえよくみたら意外と可愛かったので。ほら」

「そんなワケないでしょう!?ってぎゃぁあああああ!!素手で掴むなこっちに向けるな近付けるんじゃないわよ馬鹿娘ぇえええええ!」

「あ、すみません。ハンカチハンカチ。ね、ほら」

「一番気にすべきは素手云々じゃなくて最後よ最後!!」

「え?」

「わざとっ?わざとなのぉぉお!?」

「おかー様。シンデレラちゃん心底本気だから。ディアもシンデレラちゃんも、やるっていったら必ずやるよ。飼わせてあげたら?…おかー様の声帯がつぶれる前に」

「うっぎゃぁああああああああ!!!だからやなのよこの娘はもぉぉぉおおおおお!!!」

「って聞いてないか」

 

 そのあと何故か叫び続けたお母様は、お兄様の説得を聞いて、コウモリを飼ってもいいといってくれた。ものすごくぐったりしていたのは何故だったのか。

 そのあとも結局、どうしてエサやりをするのかと、クローディア姉さまは聞かなかった。変わりに私の手をぎゅっとにぎって、ありがとう、と言ってくれた。それは、クローディア姉さまが私に笑ってくれた、最初のときだった。




「ブヘェックショーイッ!チキショーメ!!あ゛―」

 私の“美しい思い出”を断ち切ったのは、お母様のまたしても豪快なくしゃみだった。今度はついでのように濁音がついた声が付いてくる。…まだくしゃみしていたのですね、お母様。

「本気で風邪かもしれないね」

 きゅぅ?、と不思議そうに首をかしげるロプルに笑って、静かに彼を戸棚の上に返した。思い出の中で、クローディア姉さまがそうしたように。

 お姉さまはまだベッドの中にいて、父様は部屋で仕事をしている。「お姉さま」は外出していて、きっとお昼には戻ってくる。そしてお母様は、なんだかんだと騒がしい。風邪ではないかもしれないけれど、一応生姜シロップを持っていってあげよう。

「また明日ね」

 私はクローディア姉さまの友人達に手を振って、何時もどおりの“昼のお仕事”に戻るために、屋根裏の階段を駆け下りた。


 はい。すみませんこんな話で。


 …家族は一様紹介したかったんですごめんなさい。需要はまず100%ないですよね。すみません、コウモリコウモリ言ってて。


 そしてお兄様がどうやっても男装&男口調で出てこようとするんですけどどうすれば…。

  苛められてる気がします。当初の予定だと、もっとずっと女装の人だったのに…。この人、作中で一番作者の言うことを聞きません。皆あんまり聞いてくれませんがお兄様がダントツです。女言葉で話してくださいお願いしますから。


 次は父様登場話です。あらかじめ言っておくと、お兄様が腹真っ黒になる予定です。…お兄様は好き嫌いがはっきりしてる人のようです。


 評価をしてくださったかた、お気に入りをしてくださった方、感想を下さった方、ありがとうございました!…ジャンピング土下座でもすべきでしょうか(←真顔)

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