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間章・とある王子様の会話(近衛視点)

 うう…今回とても短いです。というのも、書いていた3分の2くらいが、パソコンがフリーズして消えてしまいました…。データが…データが飛びました…。23時55分に載せようとしていた天罰でしょうか…?


 本っ気でへこんでますが、なるべく早く書き直すことにして、覚えてた部分&保存可能だった部分だけ載せます。


 うーへこむっ。


 …ってあれ?そんなに短くはなかった…?

「振られてましたね、殿下」

「――――気配を消して盗み聞き?大した腕前だね」

 不意に響いた声に、びくりとなった私とは対照的に、レスト様はつまらなげに目を細めて、何時の間にか扉に背を預けて立っていたレイ・カークランド殿を見た。

 ……レイ・カークランド殿、一応私現職の近衛なんですが。更に言えば近衛隊隊長なんですが。何で気配悟らせずに入ってきてるんですかにこにこ笑ってるんですかひらひら手を振ってるんですか。…自信が…ほのかな消え入りそうな近衛としての自信がもはや風前の灯火に…。

「やだなー、気付かれてました?」

「まさか。僕には君やコレみたいな異常動体視力はないよ。か弱い王子様に妙なものを求めないでくれる?」

「あはは。流石、鋭いですね」

 レスト様、その「コレ」って私のことですかもしかしてっ…!?異常動体視力も異常能力もカークランド殿だけですよ!?私腕がちょっとたつだけの一般人ですから。一緒にされたくないです何となくっ!

「そもそも、君が王家からの召集なんかで本当に席を外すとは思っていなかったからね」

「かっわいいでしょう?俺の妹。過保護にもなりますよねー」

「…………」

 すっと、レスト様の目線がカークランド殿から外れて、沈黙が落ちる。

 ………スィリス・カークランド嬢。レイ・カークランド殿の4つ年少の異母妹殿。はじめて入室してきた彼女を見たとき、私は正直………感動した。

ライトグレイの髪を、瞳と同じ、淡いライトグリーンのリボンで束ね、真っ白なブラウスを着た清楚なお嬢さん。むしろステキに慇懃無礼なレイ・カークランド殿とは違い、丁寧で穏やかな言葉と所作。控え目で聡明そうな受け答え。

 レイ・カークランド殿と同じ家に暮らしていてどうして、こんなにもまともなお嬢さんがありうるのかと思った。むしろこんな真っ当なお嬢さんがレイ・カークランド殿の妹だなんて何かの間違いじゃないかと思った。

 同時に、レスト様に追い詰められるスィリス嬢が心の底から気の毒になった。こんなに可愛らしくて控え目なお嬢さんをいびるなんて、一体何処の悪の親玉かとも思った。けれど、

「……彼女は思ったよりもずっと聡明だったよ。…甘いところも隙もありまくりだけれどね」

 そう、確かに彼女は隙だらけで、そこを(もう一片の容赦なく)ついたレスト様の思惑通りにことが運んだのも事実。けれど、スィリス嬢はそれに抗えなくても、気が付いた。それに、


『内大臣ルザバ・カル・アルナビと、トガル・エル・アルナビです』

『―――財に関する、購買力を裏づけとして持った欲望のことです』

『企業・家計と社会全体・国家の両面から、生産された直後から消費に至るまでの流れである“流通”の関係と実態、及び国・地方自治体の商業・流通政策を考え、特に社会全体と国家への関心が強い流通論に対し、マーケティング論は、消費者に対して売れるものをいかに提供するかといった創意工夫を考え、特に、個別企業又は組織が直面する要素やその対策と戦略に強い関心を持つことです』


 レスト様の突然の質問に、何の淀みもなく答えた声音。貴族学院の学徒…もしかしたら教員でさえ、突然では容易に答えられない内容だった(現に私は全く解らなかった)。なのに、戸惑うでもなく、答えられる自分を誇るでもなく、まるで当たり前のように答えたそれが。

(寒気が、した)

 可憐で清楚でしとやかな、可愛らしい、けれどごく普通の少女。その彼女が、突然、…怪物じみて見えた。

 そして、深く納得もした。その寒気は、私のとって馴染みある感覚だったからだ。他でもない我が主と、…レイ・カークランド殿から。レスト様が王侯に対するとき、レイ・カークランド殿が事を「処理」するときの感覚と、それは同じだったのだ。

「でしょうね。あの子はこと、“暗記する”ということに関しては天賦の才をもっていますから」

「ツェトラウス古語を完璧に扱うから、恐らくとは思ったんだけどね。…暗記全般?」

「ええ。“面白い”と感じたことなら何でも。そしてあの子は、この世にあるほとんど全ての学問を面白いと感じられる」

 それは、この世にあるほとんどすべての学問を暗記できる、という意味だった。そう、正に天賦の才。――――この方は、鬼才たるレイ・カークランド殿の妹なのだ、と、納得せずにはいられない「異常」な才の発露だった。

「僕も君も、ツェトラウス古語は余程意味不明な文章書かれない限り“書ける”し“読める”。文法…つまりは書面上だけなら、努力次第でどうとでもなるからね。けど、発音は無理だ。実際にそれを話す人間のものを聞くことでしか上達は出来ない」

「ええ。そしてこの国には現在、流暢なツェトラウス古語を話せる人間は存在しない」

「?君の妹…スィリス・カークランドにあの完璧な古語を教えた人間がいるはずだろう?アベル・カークランドが発音まで完璧だとは知らなかったが」

「ああ、いませんよ」

「は?」

「だからいませんよ。父が、腹が立つほど完璧なツェトラウス文法を網羅していたことは事実です。けーど、発音に関しては、俺よりからっきしでしたね」

「――――なら、彼女は…?」

「ですから、天性の才です。どこの国の言葉だろうと、どれほど切れ目も解らない発音だろうと、あの子はその文法さえ理解すれば、その語の発音も聞き取りも、完璧にやってのける。…何となく自然に、と言う感覚だけで。ですから、あの子のツェトラウス古語は半独学、半教師つきですよ。独学の意味するところが、発音部です」

(な…!?)

 端からぼーっと聞いていたのに、思わず心の中で叫んでしまった。独学で発音まで網羅!?もうそれ既に人間業とは遠くなってないですか!?

「…結構ありえないよね、それも」

「ありえなくても事実ですよ、残念ながら。…それで、あの子を呼び出したってことは、ロワナ側から何か動きがあったんですよね?」

「訪問と会談の申し入れがあった。それも、ロワナ第一王子直々の」

「へーえ?…それはそれは」

「大方予想はついていたんだろ?」

「ええまぁ。―――そのことともう一つのことで、お礼を言おうと思って来たんですよ、殿下」

「は?」

「発音できる人間がほぼ…どころかまるでいないってこと、言わないでいてくれたんですね」

 そう、レスト様がスィリス嬢に語ったツェトラウス古語の定義には、嘘があった。

 王家は、積極的にツェトラウス古語を隠し、ツェトラウス古語を知ることも、教えることも禁止している。ついでに言えば、それを伝えることが許されているのも、王家の…それも男児だけだと聞いていた。

 勿論、王族だけでなく、ツェトラウス古語を扱う人間も存在する。王族に古語を教える教師となる人間は必要不可欠だから、ツェトラウス古語を研究、修練する、専門の学家がいてそれぞれの国にあり、この国だと、イエーガー家の一族がこれにあたっていた。けれど彼らは先々代国王と衝突したことで契約を解かれ、王家の庇護を失った彼らは数を減らした。現王陛下の時に契約自体は復活したけれど、ツェトラウス古語を自在に操った世代の人間達は亡くなったあとで、幼少の…発音を満足に出来ない世代の者達だけが残っていたのだという。そしてその状態は、今現在も続いている。

 アベル・カークランド殿には諸事情があってそれが言及されていなかったとは聞いているので、嘘はつかれていないのだけれど、意味合いはまるで変わる。ツェトラウス古語の意味することは、スィリス嬢が信じ、レスト様が語って見せたよりずっと、ツェトラウス古語を知ること、…会話できることの意味は重いということ。

 …文字通り、国家機密並みに。

「もう一つ。今お聞きしたとおり、ロワナが会談を申しいれて来たことも言わないでくれた」

「…………」

「圧力をかけてきていて、早急に会談を設けなくてはならないのがロワナ国…ツェトラウス古語発祥地だと報せたら、“外交補佐官”の件も“命じ”なければならなくなる。だから、隠してくれたんですよね?」

 その言葉に、私は思わず息を呑んでいた。

 確かに、この国に圧力をかけてきた国があることと、それがロワナ王国であること。そしてその国が「王族間の会談」、つまりは「王族間の取引」を求めている現状。王族間の取引は文面に口頭が加わるため、ツェトラウス古語を話せる人間が早急に必要だという現状。それを言ってしまえば、レイ・カークランド殿の言うとおり、スィリス嬢は王家にしたがうしかなかった。なのに、レスト様はそれをしなかったのだ。

 ただ、「会いに来る」という、ごく簡単な「下命」をしただけで。その、意味は、

「…今のままじゃ外交補佐官は勤まらないからだよ。彼女、確かに知識量は多いけど、ただ暗記しているだけだろう?受け答えを応用できなきゃ取引の場には連れて行けない」

「それも本当でしょうけどね。それでも殿下は、引っつかまえて“応答の応用”を詰め込むんじゃなくて、あの子の手を離してくれた」

「――――――その可能性を考慮してたのに、良く彼女に引っ付いて来なかったね?」

「あの子は俺を信じて、手を離してくれました。だから俺も、あの子の道は阻まない。確かに、強制されそうになったら止めようとは思ってましたけど…、あなたは強制しないでくれた」

 ありがとうございました、と。穏やかな、ひどく、穏やかな色で落とされた声に、レスト様は掌に顔をつけて大きく息を吐いた。

「頭を、下げたんだよ、彼女は」

 そして、ぽつりとこぼされた言葉は、本当に小さな声で。

「僕は彼女を利用した。程度の問題じゃなく、騙して利用したんだ。それなのに、君を強制させていないと言ったときに。それに、断るときにまでね」



 そう、スィリス嬢はレスト様の「提案」を、きっぱりと断った。

『申し訳ありませんが、お断りいたします。外交補佐官などという大任が、私に務まるとは思えません』

『ツェトラウス古語が話せ、それ程の知識もあるのに?』

『話せるだけ、知識があるだけです。気概も、経験も、何より応用力が、絶対的に足りません。お受けしてはかえってご迷惑になります』

『そう』

『けれど、感謝します、皇太…レスト様。私に断る権利を与えてくださったことを』

 凛とした光を宿していたスィリス嬢の目が、ふわりと、なごんだ。それは恐らくはじめての、心の底からの笑顔。

『兄を認めてくださって、私自身を見てくださって、ありがとうございました、殿下。兄がお仕えしている方が貴方のような方で、本当に良かった』

 そこまで言って、スィリス嬢は椅子から立ち上がって床に膝を付き、両手を胸元で重ねて、それはそれは優美に、深く頭を下げた。

 真っ直ぐな目をして、心からの尊敬を、レスト様に向けて。

『下命を、精一杯努めます。王家からの命令だからではなく、私の意志で』

 レスト様のために。そう続けられた言葉と、一幅の絵のような光景を、私もまた見ていたの。



「馬鹿じゃないか、って、思ったよ」

「あの子は馬鹿じゃないですよ。利用されていることも騙されていることもわかって、それでもあなたを認めて、尊敬したんでしょう」

 穏やかなカークランド殿の否定に、レスト様は小さく苦笑した。そう、わかっていらっしゃるから、レスト様は戸惑っていらっしゃるのだと思う。スィリス嬢の態度が、捧げられた敬意が、真実だと。

 そう、だからこそ、私はあの方に敬意を持ったのだ。

 ずば抜けた知識量でもなく、卓越した語学力でもなく、ただ、敬愛する主君にホントウの言葉を向けて、誰よりも澄んだ若草色の目で、知らないはずのことを見て微笑んでいたあの方に。



 うふふあははなぜか近衛さん視点。王子視点も兄様視点も書きにくいんですよ。頭いい人キライです。作者は頭が悪いので、頭いい人の気持ちなんぞわかりません。…なら出すなって話ですよねなにやってんでしょうね。


 前書きでも書きましたがデータが飛びました。ワードにして6枚分ほど。…保存しとこうね私。と、思いました、教訓にします。


 で、次はロワナ側のオージサマがどんな人かの、兄さんたちの会話になります。上手くいったらロワナの王子様が来ちゃうかもです。


 書かれても困ると思いますが、マルス・カドクエル・アビガイル王子と言います。褐色の肌の美青年です。中身はともかく。まぁいいです。どうせ灰かぶりにはまともな美形はいないので、何時ものことです。THE美形インフレ!

 

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