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夢の中の友達

作者: 彩




ちひろは人と関わる苦手だった。

だって家ではパパもママもお仕事でお手伝いさんは話しかけても真面目であまり話をしないから

人との話し方や接し方がわからなかったのだ


青い空が綺麗でそのお絵描きしたいのに

みんなは天気がいいからって外で遊びたいっていうし、


誰にも見つからないように幼稚園の倉庫にかくれんぼをすれぼ

そんなとこにいくのはずるいと怒られる


花壇のお花をお世話をする先生が楽しそうでお手伝いをやろうとすれば

友達いない子となのだと哀れな目を向けられる


だからちひろはいつも1人だった。


そんなある夏の日

先生が今夜はたくさんの流れ星が流れてくると教えてくれた


流れ星にお願い事するとお願いが叶うんだよという他の子たちの話を聞いて


ちひろは流れ星にあるお願いしようと思った。


夜遅くに目覚まし時計をセットしてこっそりと起きて部屋の窓をあける。

夜空にはまだ流れ星は見えない

だからなんとなく窓の下に広がるお庭を見てみた


1人で過ごすことが多いお庭

四季折々の花が咲くのでちひろはお庭が大好きだ

今の時期も名前も知らない花が庭先で咲いている


カラカラッ…

その時1階の窓が開く音がした。

…誰だろう?


少し経つと庭先に誰か出てきた

黒い長い髪の女性

あれは…


その時

空がいきなり明るくなった。

びっくりして空を見上げる。


そこには数えきれない程の流れ星が夜空を覆っていた。

その美しさにちひろは少しの間見惚れていたが

1番の目的を思い出し、慌てて両手を組んだ


お願いごとがある


どうか

友達ができますように



*****



「1人でなにをしているの?」

ちひろがお絵描きしていると1人の子供が話しかけてきた。

黒髪にショートカット、短パンを履いていて

男の子なのか女の子なのかちひろにはわからなかった

「お絵描きしてるの」

「どうして?みんなはお外で遊んでるよ?外で遊ぶの嫌い?」

そういってその子は窓の外で遊ぶ他の子たちを指差した

「えっ?嫌いじゃないよ?」

「じゃあなんで1人でお絵描きしてるの?」

茶色の優しそうな瞳のその子はちひろの目をじっと見ていった。

「…だって昨日みた流れ星が綺麗だったからたくさん絵を描きたくて」

「そうなの?でも他のみんなはちひろが外で遊ぶの嫌いだと思ってるよ?」

「えっ?」


『ちひろちゃんは、外で遊ぶの好きじゃないからみんなと遊ばないだよ』

『前に遊ぼうって誘ったら嫌がられたんだ』


どこからか他の子の声が聞こえてきた

「違うよ!ちひろは…」


目を開けるとそこはいつものちひろの寝ている部屋

さっきまで夢を見ていたことに気がついた。



それからちひろはよく夢を見るようになった。

黒髪ショートカットその子と過ごす夢


その子の名前はりあだと教えてくれた。

りあはちひろに話しかけては色々なことを話してくれるし、一緒に過ごしてくれた。


ちひろはすぐにりあが好きになった。


りあと過ごす場所は保育園が多いが、時々近くの公園だったり、家の中でだったりと様々だった。

りあは茶色の優しげな瞳を和らげていつもちひろの隣にいてくれる。


だけどそれは夢の中だけ

夢の中だけの友達


「りあが夢だけじゃなくて本当にちひろの友達になってくれたらいいのになぁ…」

「….ちひろならたくさん友達できるよ」

「できないよ…ちひろいつも1人だから」

夢の外ではちひろの周りには誰もいない

それが悲しくて泣きたくなった。

「…ちひろ聞いて?」

「なぁに?」

りあは少し考えこむとじっとちひろを見つめた

「今度から人と話す時は顔をみて、自分の気持ちを正直に伝えるといいよ」

そしてりあは優しく微笑んだ



*****



「1人でなにしてるの?」

ある日の保育園で1人の女の子がちひろに話しかけてきた

「絵を描いてるの………!」

そういった時ちひろはハッと顔をあげ女の子を見た

このやりとりを前にりあとしたことを思い出したのだ

だけど顔をあげた先にいるのはりあではなかった。

少しがっかりした。


だけど昨日りあに言われたことを思い出した。

人と話す時は顔を見て自分の気持ちをに正直に….


ちひろは言葉を繋げる

「でっ、…でもちひろはみんなで外で遊ぶのも好きだよ!」

それを聞いた女の子は一瞬驚いたようにちひろをみたがすぐに笑顔になった。

「じゃあ、お絵描き終わったら一緒に外であそぼ!」

「うっうん!」



「聞いてよりあ!」

ちひろはりあに今日のことを話した

お絵描きが終わった後みんなとたくさん遊んだこと、どんなことがあったかを夢中で話す

りあはいつもの優しい茶色瞳でうんうんとちひろの話を聞いてくれていた。


「明日もね!一緒に遊ぶ約束したんだよ!これも全部りあのおかげだよ」

「そんなことないよ、ちひろが頑張ったからだよ」

そしてりあは優しくちひろの頭を撫でてくれた。

暖かくて優しい手だった。


それからりあはいろいろなことを教えてくれた。


「お花が好きなら先生に話すといいよ、きっといろんなこと教えてくれるよ」


「かくれんぼね!それならお外の遊び場だけだよ?保育園の中入ったら探すよ大変だから」


そっかそうすればよかったんだ。

ちひろはいろいろなことに気がつきたくさん考えて、少しずつ友達を増やしていった。


毎日が楽しくて仕方がなかった。



*****



季節は巡る

暖かなマフラーや手袋が必要になる程冷え込む季節


その頃になるとちひろは毎日見ていたりあと過ごす夢が少なくなっていることに気がついた。


「…ねぇ、りあ」

「なに?」

「なんかね、最近ね、りあの夢を見るのが少なくなったの…」


「…そっか…じゃあ、そろそろなんだね」

するとりあは少し嬉しそうに笑った。


「えっ…?」

予想していなかった表情に驚く


ちひろは悲しくて話したのにりあはどこか嬉しそうで

「……りあはちひろと会えなくなってもいいの…?」

気がついたらそう呟いていた。

「……そんなことはないよ、ずっと…ちひろが生まれた時からずっと大好きなんだから」

するとりあは少し驚いたあと優しく微笑みちひろの頭をゆっくりと撫でた

「どういうこと?」

「いつか、知る機会がらあるかもね」



いつものように目覚まし時計の音で目が覚める

夢の中でのりあの話を思い出しながら部屋で1人保育園へ行く服に着替えた。

そして1階のリビングへ向かう


「あれ?」

階段を降りた時リビングの方で香ばしい焼き立てのパンの香りがしたのだ

そして

「ママ?」

「おはよう、ちひろ」

リビングでエプロン姿のママがいてさらに驚いた。

「ママ、お仕事は…?」

「やっと仕事が、ひと段落したのこれからはちひろの送り迎えは私がするし、朝も一緒にご飯を食べれるわよ」

その言葉通りママはその日から毎日ちひろといてくれた。

朝はもちろん、保育園が終わった後も


ちひろは嬉しかった。

あったかいごはん、

おしゃべりしながら向かう保育園、

手を繋ぎながら歩くこと、

1人で過ごしてたお庭も今ではママと一緒に過ごした。

ママはいつも優しくしてくれるが、たまに怒るととても怖い

だけどそんな毎日が楽しくて嬉しかった。



*****



ある日1週間ぶりにちひろは夢の中でりあに出会った。

嬉しくてりあに今までのことを話す


「ねぇ、ちひろ」

「なぁに?」

その途中でいつもはちひろが話し終わるまで話をしないりあが話し出した。


「多分だけど、ちひろは明日からこの夢を見なくなると思うんだ」

そう静かにりあはいった

「……なんで…?」

夢を見なくなるということはりあと会えなくなるということだ

「…ちひろはもう1人じゃないでしょ?たくさん友達できて、ママも一緒にいてくれるお星様のお願いが叶ったのだから」

「でも…」

りあとお別れは嫌だ

りあはちひろにとって1番大好きなお友達なのだ

「大丈夫だよ、ちひろ私はいつまでもちひろを見守ってるから…」

泣き出すちひろにりあは微笑んで優しく頭を撫でてくれた


それが最後だった。




************



あれから10年が経った。

あの頃の夢は今でもはっきり覚えている

もう会うことがないけど大切な思い出としてちひろの中に残っていた。


「ちひろ、ちょっとこれ片付けてくれる?」

「いいよ」 


今日は年に一回の大掃除の日

ママに言われて倉庫の片付けを手伝っていた。

いるものいらないものを分けていると

タンスの奥から一冊のアルバムが現れた。


とても分厚くて古いアルバムだった

埃まみれで長い間開かれていないアルバム

「ママにいるかどうか確認しなくちゃ」

ちひろはなにが写っているのか確認するためアルバムのページをめくった。


小さな赤ちゃんの写真からはじまっていた

そして数ページめくると


「…りあ…?」

黒髪ショートカットヘアに短パン姿のりあが笑顔でピースをしている写真があった。


「…」

ページをめくる

小学生のりあ、中学生のりあ、高校生のりあ、大人のりあ、徐々に成長していく

そして最後のページをめくってちひろは泣いた。


「そっか…そうだったんだ…」

どこかでそんな気がしていた。

だってあの優しい茶色の瞳は…


「ちひろこれも……ちひろ?」

呼びにきたママが泣いてるちひろを見て驚いている。

いつも優しげな茶色の瞳が丸くなっていた。


最後のページ

アルバムの中のりあはショートだった髪が長くなっていた。

だけど変わらない優しい瞳で

生まれたばかりの赤ちゃんを抱いて嬉しそうに笑っている。


そして写真と共に一言書かれていた


『最愛の娘ちひろと共に リリア』






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― 新着の感想 ―
[一言] 最後まで読んで、きゅんとなりました。 りあちゃん!
2024/02/02 17:44 退会済み
管理
[良い点] 夢オチではない夢の話で、夢を通して成長していく様子が、物語全体を暖かくしてくれています。母親ってのも納得で、そこからSF(近未来の睡眠学習技術)をも感じさせてくれました。
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