2章 第四十三話 愛の深さ (隊長妻子の話)
本日二話目ですが、隊長さんの奥さんの話です。
直接ストーリーには関係無いと思いますが、後々で関係するかもしれません。
今後もよろしくお願いします。
私は死んだけど、操は守った。娘も私が殺した。
あの男達に、何かされて生きるくらいなら、死んだ方がマシだった。娘も理解してくれていると思いたい。
「あなたごめんなさい」
それが最後の言葉だった。
私は白い部屋に居た。
此処が天の国かしら、娘を殺したのに来て良かったのかしら?
隣には、殺してしまった娘も居た。
神様は、本当に慈愛深いのですね。
私は思わず、膝を着き、感謝の祈りを捧げた。
隣で真似をしてる娘。
死しても、この愛娘といられる事に感謝しかなかった。
「あなた、こちらであなたが来る事を二人でお待ちしております」
「かんちゃちてます、かみさま」
娘はカミカミで少し笑ってしまった。
「汝ら、運が良いの」
突然声が響いてきたが、姿は見れない。
「姿などない、声すらも無いのだが、特別だ。
汝ら、元の世界に戻ると良い。これも異例的な事だが、仕方ない」
「どうして生き返れるのですか?あなた様は神様で、その御力ではないのですか?」
私は思わず言葉にしてしまった。
生き返れると言われれば、素直に嬉しい。
だが生き返ってもあの男どもの元では意味がない。
「それも特例中の特例だ。詳しく話しても意味がない、汝らにここでの記憶は残らない」
「でも聞かせてください、どうしてなのか?」
「きかちぃてください。カミサマ」
記憶が残らない事だと言われても聞きたかった。
娘と懇願する。
「聞かせるのはいいが、この状態を作り出している者の命が危なくなるが良いか?」
誰かが助けてくれている、今この時を。それが自分の命に関わると、知ってかは分からないけど、直ぐに生き返ることの方が大事だ。
命、いいえ私達の人生そのものを、救ってくれている、恩人の命を我儘で削るわけにはいかない。
「ありがとうございます。その言葉で十分です」
私はもう一度膝を着き、感謝の意を示した。
「では、また何時らの短く、長き旅の末に会おうぞ」
私たちは、徐々に意識が遠のいて行くが、ただ暖かさは消えなかった。
「おかっちゃん、目覚ましたぞ」
「本当けー、二年も寝とたんぞ」
私はどこかの家に居るみたいだ。確か、豚みたいな貴族に攫われて、馬車の中で死んだはず。
死んでなかった?それとも生き返った?
分からないけど、今確かに生きている。
娘は!意識が戻りつつある頭で、娘は?生きてるの。それとも。
「娘っ子かいな、そんだら脇に寝とるよ、すまんだが、狭い家でなー、余裕ないけー、我慢してなー」
体が動かない、話では2年間も寝ていたのだ、動かなくても仕方ない。でも娘は、今一目でも、
必死に首を回し、隣を見る。
娘だ。可愛い、可愛い私たちの愛娘。自然と涙が溢れる。
「ママー」
寝言なのか、口から声が漏れた。
さらに涙が溢れた。
神様。ありがとうございます。
この子を、私を、私達をお助けいただきありがとうございます。
私は何度も何度も心の中で感謝の意を紡いだ。
それからは、お世話になっていた。中年の夫婦にお礼を言ったが、なんでも、私達は、森の中で倒れていたらしい。人も来ない、魔物も居ない、薬草すら無い、小さく、町から離れた森。
夫婦はここで薪や炭作りを生業にしていると事で、街にはあまり行かず、逆に街に連れて行けなくて申し訳ないと逆に謝ってきた。
そんな事はない。どこの誰だか分からない見知らぬ親子。それもいつ目覚めるか分からないのに、お世話してくれたのだ。本当に感謝しかない。
娘も程なくして目が覚めて、改めて二人でお礼を述べた。
「何遍もいいだがな、それより少し食いなんしゃい、テーしたもんじゃないけんど、くいんしゃい」
寝起きでは体が動かなかったが、今は何故か自然と動くようになっていた。
優しい味の粥だった。具も無く、ただの水と麦だけのだったが、美味しかった。
体に力が戻ってくる感じがした。粥のおかげだ。
そうなると直ぐにでも戻りたい、帰りたい、会いに行きたい、愛する人の声が聞きたい。
自分勝手なものだが、気持ちに嘘はつけない。
そんな気持ちを察してくれたのか、夫婦は、
「少し休みんしゃい、近くの村しゃいくけー、のってきー」
私はこの優しさに涙がまた出そうになる。
必ずこのご恩は返しに来ます。今度は3人で。
私は決意し、娘の手を握りしめて、二年ぶりの外へと踏み出した。
数日後、私達は王都に着いた。はやる気持ちを抑えて、自宅へと向かうが、家は無かった。
「何で?何処に行ってしまったの、あなた」
娘も茫然としていた。
「奥さん!無事でしたか」
後ろから聞き覚えのある声がして振り向けば、夫の同僚の騎士だった。偶に家に呼ぶほど仲が良く、娘も懐いていた。
「お前になんか娘はやらん」
って必ず言うのが、定番だった。
私は簡単に今までの話をすると、同僚の方は、私達が行方不明になった後の事を教えてくれた。
あの人は、私達の為に騎士を辞めて、あの街に住んでるの?私達の為に。
こんなも愛されている事に、改めてあの人を好きになってしまった。何度好きにさせれば良いのでしょうか。
愛してます。あなた。
同僚の方は、夫の住んでる家も知っていたの地図を貰い、
「これで急いで会いに行ってやって欲しい」
と、地図とともに、金貨を渡された。
有り難かった、ここに来るまでに有り金を使い切ってしまったから。
「今度夫と返しに来ます」
と言い受け取ると、
「それならあいつに伝えて欲しい、今度は俺の子供も観に来いってね、結婚式にも来ないんだ。偶には顔見せに来てくださいよ」
思わず「ごめんなさい」と夫の代わりに謝ってしまった。
「早く行ったほうがいい、今からなら国境の街に行く高速馬車が間に合う」
それを聞いて慌てて娘の手を引き馬車乗り場に急いだ。娘は、「バイバイ、おじちゃん」と手を振っていたが、ショックを受ける同僚さん、まだお兄さんと呼んであげてね。
馬車にはなんとか間に合い、ここから7日、あの夫婦の家から行ったほうが早かったわね。
会ったらなんて伝えようかしら、たくさんあるけどやっぱり「ただいま」かな。
でも家で待っていて「お帰りなさい」かしら。
そんな事を考えていたら、7日なんて直ぐね。
でも早く会いたい。
国境の街の一つ手前の街
懐かしいとは思わないけど、懐かしさはある変な気分。
地図に従って、街並みを確認しながら歩く。
二年前と言っても私達にとっては数日前、賑わいは比べ物にならなかった。何やらお祭りのような雰囲気もあった。
屋台のは“クソ豚元領主拘束記念”なんて書いてあった。
あの貴族捕まったのね。良かったわ。出来れば私も一発殴りたかったわ。
夫の住む家に着いた。鍵は空いていた。
不用心だな、そして変わってない。
鍵を閉めるのを忘れる癖がある。何度言っても治らなかった。嬉しくも、危ないなと思い、ドアを開ける。
何もなかった。ただベットが一つだけの殺風景な部屋。
でも一つ小さな箱がデットの脇にあった。
そっと蓋を開けてみる。
私達の物だ。私が愛用していた櫛、鏡。娘の好きなぬいぐるみ。他にもたくさんの思い出のある品が詰まっていた。
「くまさんだ、狭いとこに居たね。お外出してあげる」
少し古ぼけてしまっているが、綺麗な状態であった。
あの人が、何度も何度も手入れしている証拠だ。
私のものも。
“ガチャ”
ドアの開く音だ。
やっと会えます。貴方にとっては二年ぶりですね。
私達にとっては数日。でも思いは変わりません。数日でも1日でも変わりません。
「ただいま」
覇気のない声です。初めて聞きましたよ。そんな声。
でも、もう聞きたくないです。いつも聞かせてくれた貴方らしい声で呼んでください。
私の名前を呼んでください。
そして「愛してます」と言わせてください。
もう2度離れたりしないから、お願い、愛する旦那様。
補足です。
隊長の奥さんは攫われた馬車の中で自害してます。
娘さんも殺しています。この時、娘さんの血と奥さんの血を娘さんの服で掃除してます。この貴族は外道です。
その後屋敷のは入れずに、森に捨てに行きます。
人が来ないで有名な森です。
見つかっても、自殺に見れます。
ではまた次回です。
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